第10話 殺人虫
「人間じゃないってどういうこと?」
「あいつはウミグモなんだ」
「ウミグモ⁉︎」
「そうだ。あいつは我々鋏角類界屈指の凄腕スパイだからな。どうやら私の陰謀に7年前から気づいていたようでね。唯一の天敵といっても過言ではない」
「はあ」
「しかしこの城さえあれば、あんなやつ走ることよりも簡単に殺せる。見てろよ」
セトカンブリアはボタンを押した。
その頃地上では、ミグがハルとアキと一緒にスパイダーを隠れながら見ていた。
「もしかするとバレてるかもしれない」
スパイダーは口を開けるとミサイルを撃った。
「やばい伏せろ!」
ズドォォォォォカァァァァァン
ミグが隠れていた場所は一瞬で炎の海に。
「やばいやばいやばい。落ち着け」
ミグたちはまた物陰に隠れた。
「ハル、囮になってくれ。俺があの蜘蛛の中に入ったらすぐに逃げろ。それまでアキと頑張ってくれ」
ミグは服を脱いだ。すると、白く細い足が何本もあるウミグモになった。
ハルはもちろん驚いたが、ミグがスパイダーの足元へ向かうと、アキを頭の上に乗せて、高所に登って滑空した。
「おやおや、あのモモンガはミグの肩に乗ってたやつじゃないか」
「ハル⁉︎」
「名前を知っているということは、お前のペットだな?よし、お前にも見せてやるよ。あいつの死体を」
スパイダーは胴体の部分から巨大な箒を出すと豪快に箒を振り下ろしたが、当たらず。もう一度振り下ろしたが、当たらず。
「クソ!当たらねぇ。ちょろちょろと飛び回りやがって」
ハヤトはふと上を向いた。
「蟹自衛軍⁉︎」
「ははぁ、蟹から国を守るために作った組織か。早く逃げればいいものを。バカバカしい」
セトカンブリアはボタンを押すと、スパイダーの足から空飛ぶウミサソリが大量に出てきた。
ちょうどその時ミグが足元を登っていたところだった。
「なんか出てきた!…ウミサソリか⁉︎空飛んでるからウミサソリじゃなくね?」
ミグは、投下されるウミサソリに当たらないよう、登り続けた。
「ウミサソリならぬソラサソリ。向こうの機体よりも圧倒的に多いぞ」
ソラサソリは口から発射するレーザーで、蟹自衛軍の戦闘機を次々と撃ち落としていく。
「ハハッ、殺戮は娯楽を生むのだ。そう思わんかね。この弾幕を抜け、私を殺す術はない。シューティングゲームのプレイヤーの気分だ。私は一切被害を受けない」
突然窓ガラスにハルが激突した。
「さっきの害虫か」
ハルとアキの窓ガラスに、ワイパーが出てきて振り落とそうとした。
しかし、アキはバランス良くワイパーの上に乗っかったり、ハルは余裕そうにワイパーをかわしたりした。
「こしゃくな!電流でも喰らえ!」
セトカンブリアはボタンを押そうとしたその時。
「おりゃ!」
「うわぁ!」
セトカンブリアはハヤトに蹴飛ばされた。
「おい蜘蛛の巣を返せ」
「返すもんか。殺人虫が!」
「お前らは蟹を大量に殺して食べているらしいな、害虫を見つけたら速攻殺すだろ?違うか?」
ハヤトは無視して逃げていった。
「脱出してみるがいい!この城から!」
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