第9話 ミグ

「おいおい、どこへ行くんだい?」

ハヤトは息を切らしながら走っていた。セトカンブリアは余裕そうな表情でハヤトを追いかけていた。

「鋏角類と仲良くしていればこんなことにはならなかったのに」

とうとう行き止まりまで来てしまった。

「やばい」

「まあ確かにやばいが、まあ人生の最後くらい、面白いものでも見せてあげよう」

ハヤトは薄暗い部屋に連れていかれた。

「これから無双して、気持ちよくなろうじゃないか」

セトカンブリアはハヤトを紐で縛り付けた。

「これからスパイダーを動かす」

セトカンブリアは蜘蛛の巣のような操作盤を出すと、スイッチを入れた。

騒音とともにスパイダーは地上に降り立った。






「なんだあれ」

避難所にいた人たちは、突然現れた巨大な蜘蛛に驚いていた。

「蟹か⁉︎」

「蜘蛛にも見えるけどなぁ」

セトカンブリアはマイクに向かって喋った。

「人間ども諸君。君らにはスパイダーの威力を見せてあげよう」

スパイダーの口から、火の玉が飛び出て、着弾すると、核兵器にも劣らない大爆発を起こした。人々は呆然と見ていた。

今度はスパイダーの口から巨大なガトリング砲が出てきて、地上に向かって連射した。

「無双だぁ」

「おいやめろ!」

ハヤトの叫ぶ声もセトカンブリアにはもう聞こえない。

「なんだあれは」

「撃ってきた!」

「えちょ、逃げなきゃダメじゃね⁉︎」

地上では人々が逃げ惑っている。

「逃がさねぇよ」

スパイダーの足からノズルが出てきて、毒ガスを噴射した。

「死ねぇぇ」

2人は街が毒ガスで充満し、人々がバタバタと倒れていく様子をモニターで見ていた。

「殺虫剤を撒く楽しさがわかったよ。見ろ、蟹や人が死んでいく!裏切られてどんな気持ち?」

「おいやめろよこんなこと。バカバカしいぞ!」

「は?」

セトカンブリアは振り向いた。

「少しはしつけしなければならないな」

ハヤトの足元にスコーピオンが出てきた。

「そのガキを刺せ」

スコーピオンは毒針をハヤトの足に刺した。

「ぐっ」

「これで懲りたか」

「まだまだ…懲りてない!」

「このクソガキが」

スコーピオンはハヤトの体を伝って登ってきた。

「今度は頭だ。やめてほしいか?ならば逆らうんじゃねぇ」

「…いや、逆らう」

「なんだt…ん?あいつ…」

セトカンブリアはモニターを見た。

「あいつ…ミグじゃねぇか」

「ミグって…誰?」

「スパイ。確かキョウって偽名を使っていたな」

「キョウ⁉︎あいつ、本当の名前はミグって言うの?」

「そうだ。ってかあいつ、人間じゃねえし」

「え?」

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