フトゥーロキアリザ

知らなかったんだ。狙われていたって。まぁかんけーねーのが私、九十九未来ってもんだ。私自身、狙われることは多い。狙われるって、大体が「命を」だけどな。

正直、これには慣れている。自分にも理由があるわけで、まぁ、因果応報とでも言いいますか。しかし、「命の危機に慣れている」ってゆーのも自分で言ってて何か考えさせられることがあるよな。

東京の仇を長崎で打つとでも言いますか、今回は、「イタリアでの仇を、日本で」だけどな。アイツらはしつこい。私が言っちゃダメなところあるだろーけどな。

つーわけで過去の私は実に愚かである。

「あーあ。」

平和ボケってゆーのもいいものだな。そんなんしないのが、普通の人である。命の反対側に立っていたあの日がまるで昔話で、実体験だとも思えなくなっているし、夢だったのかななんても思う。

私は、イタリアで戦ってたんだ。まー、その話は、別の機会に話そう。

そんな私にいきなり平和が現れるわけもない。来たとしてもすぐに去って行ってしまう。『若いときに苦労しておけば将来は安泰』なんていうが、そんなことはない。若い時苦労した人は、大人になっても苦労するものだ。だから私だって、このように苦労し続けないといけない。

だからこそ、私は死のうなんて考えていたんだろう。『生きていたって意味がない。』そこらのガキが言ってるのとは話が違う。今まで平和の為、なんて、言うと違うのか。自分の考える正義を貫くためだ。戦ってきた。

あとの苦労は、恨みだよ。イタチごっこなんだ。源平合戦だってそんなもんだろ?片っぽがやられて腹が立てばやり返す。そんなの、止める大人がいないだけで、子供の喧嘩とかわりゃしない。(イタチごっこって発祥は子供の遊びなんだっけ)そんなものに終止符を打てたらなって考えていた。

それが自殺だった。正直、美学なんてものは、後からついてくるものだ。ちゃんとした訳があって、それは人を納得させられるのもである。だから、生きる美学なんて私の中から無くなっていたんだ。

「いい景色だ。」

日本。死ぬにはもってこいの場所だ。私に残された家族は居ない。みんな、ここ日本で死んでいった。日本には、独自の死の世界がある。(ルーツが中国かなんなのかは知らねーけどな)それぞれの国に、それぞれの死後の世界があると考えたら、同じ地獄に行けんじゃねーかなぁ。そんな私は、バカか。私がこんなことを言う訳だから、それなりのきっかけがあるわけで。

「川って、海に繋がってんだよなぁ。」

川での水難事故のうち、行方不明の人は、年間で200人を超える。

「死体は、バレたくねーな。」

勇者みたいな死に方もいいなと思っていた私だったが、この時は猫のように、ひっそりと死にたいと思っていた。

「『死が突然襲うのでないかぎり、猫は誇り高い野生動物の死にふさわしい場所、すなわち人間のぼろ布やクッションの上ではなく、ひとりきりの静かな場所へ這って行き、冷たい地面に鼻づらを押し付けて死ぬ。』か。」

そんな墓場となる川を橋の上から見下ろす私に驚く出来事があった。まぁ、確かに私一個人の見解になるのだが。

「おいっ!」

女の子が流れてきた。それは世間一般には驚くことになるのだろうか。私は、自分のことなんにかそっちのけで、川に飛び込んでいった。夜だっただからなのだろう、水は冷たかった。そんなことは言い訳にならない、と自分に暗示をかけるように、女の子を抱きしめ、岸へと向かった。

「おーい。聞こえてるか?聞こえてるなら返事してくれ。」

返事がない。死んでるのか?体が冷たい。これは水のせいか?死んでると体が冷たくなるのは知っている。脈は?

「うーん。」

わからん。お互いに濡れて感覚が鈍ってしまっている。

とにかく、保護してやろうと私は自分の部屋に帰った。部屋ってゆーのは、ホテルの部屋のことだ。しかし、こーゆーのは正確には誘拐になってしまうらしく、本来は警察にでも駆け込むべきだ。それに気付いたのは戻ってからだった。この時私は

「私って根っからの犯罪者なんだなって。」

落胆した。

「クション。」

こんな私でも風邪は引くんだな。私は風呂に入ろうとした。そりゃ、濡れたしな。体は冷えてんだろうよ。しかし、街ゆくひとは、車に乗ってるといえど雨でもないのに、体がずぶ濡れになってる人を見て何も思わなかったのだろうか。明らかに不審だろうよ。

しかし、濡れててより事態が深刻そうなのは、この娘なんだよな。さーてどうしたものか。ちなみにここまで布団に包んで大きな楽器でも入っているようなバッグに入れて、運んできている。ここまでくると、もはや死体を運んでいても不思議じゃない。これは、縁起でもないし、私は死体遺棄じゃないにしろ、罪は犯してる。今更一つや二つ増えたところなんだけどさ。

服を脱がすべきなのか?いや、じゃないと風邪ひくし、命に関わることだ。だけど、幼気な少女の服を脱がすのも。なんか、思春期の男子みたいな悩みだな。ボディタッチってなんか気が引けるあれ。やっと、常識が芽生えた私はきっと今が思春期なのだろうな。ほんっといい大人が。

まぁ、人工呼吸してるの漫画で見たことあるし、いんじゃねーかなぁ。猥褻な行為じゃねーよな。いや、もう、脱がす。そこで顕になった一糸纏わぬその姿に私は、なんか、ちょっとだけ「ラッキー」なんて喜んでしまった。大人失格だよ。その幼い体型には、大人の女性とまた違った美しさがあったんだ。

「ごめんな。」

別にいやらしいことはしてないぞ?体の水分を拭き取って、毛布をかけてやった。それだけだ。私は、幸い女性だ。女なんだ。これを男がやってたなら、確かに問題があったかも新ねーけどな。私は女なんだ。批難しないでいただきたいね。

どうも脈はあるらしい。まぁ、人殺しではなくなったってゆーわけだが。これには内心かなりホッとしている。

その後、シャワーを浴びていた私だった。私は普段から湯船に使ったりしない。めんどいしな。月一程度かな。普段は、シャワーだけだ。変に逆張ってんだ。

「はぁー。気持ちいいなぁー。」

なんて私は、愚かなのだろう。自分が恐ろしいぐらいに憎く思えてくる。自分がもしこの立場だったら。ただでさえ落ち着いていないだろう。不安な気持ちでいっぱいだろう。そんなところに、裸で、それもそこそこ大きな声で、現れてきたら。

当然、悲鳴をあげる。

もはや、悲鳴を上げていただかないと、反省だってできないだろう。私の性格だ。そんなこともあるだろう。

怒られたら、反省して、もう二度としないように、再発防止に努める。それが多くの人だ。なんなら、私以外の人はみんなそうだろう。だが、話を聞いてて分かった人もいると思うが、私はそんなに利口にできていない。自分をこの世で二番目に好きな私だが、自分のことをこの時は嫌いになる。怒られても怒られてると思ないんだろうな。他人事にしてしまっているが。「怒っているんだぞ」って言われたとしても、さほど重要に思えない。重要だと頭でわかっていても、私自身は思っていないんだ。すぐに忘れてしまう。

まぁ、こんな醜態を晒すのもここまでにしよう。先ほども述べた通りあいつは、叫んだんだ。

「ひっ、ひ、ひ、ひぎゃあぁぁぁぁぁーあ」

そして、びびっている女の子に更なる追い討ちをかける。

毛布で、押し倒したんだ。それで無理矢理に黙らせる。私も後から思ってみればこれもかなりひどいことをしているなーなんて思う。まぁ、だからと言ってこれよりいい案上がるのかなんて言われれば思い付かねーわけだ。ましてやこの焦っている状況でな。なんかそー思うと私この時した行動って最適解だったなんて思てきた。でもこれって錯覚なんだよな。汚く言えば、『屁理屈』だな。

「いいか。叫ぶなよ。私は悪いやつじゃねーんだ。」

悪い奴は自分で悪いなんて言うだろーか。いきってる奴しか「俺ちょっと、悪だから」なんて言わないだろーな。

「コクコク。」

してることは完全に悪党だよ。

「よーし、いい子だ。」

この子も自分の置かれてる状況(?)に気付いているのか、黙っている。この人に殺されるかもしれないと。まぁ、裸だから、襲われるも別の意味かもな。男じゃなくてもこえー大人はいるんだぜ。自分で言っちゃたけど。

そして私は服を着た。やっとだな。

「私の名前は、九十九未来ってんだ。少なくともあんた一個人に対しては悪い奴じゃねー。名前とか教えてくれるかな?」

「ルシール・マルティネス。それが私の一応の名前。」

これでも私、昔にヨーロッパに住んでたもんだからさ、名前に多少詳しかったりするんだけどさ。

「ヨーロッパ人だったりする?スペイン語圏の名前だ。それか中南米とか?」

「スペイン語圏ではないけど、ヨーロッパのフランスだって聞いてる。」

ヨーロッパのフランスねぇ。

「君はなんで川でなんかにいたんだ?てゆーか記憶ある?」

「おねーちゃんが拾ってくれたの?」

「あぁ。」

いつもだったら、

「質問を質問で返すな!」

とか言ってキレてたんだろうな。私の中でもそういって今もなお暴れているよ。

しかし、この子に対しては怒りはない。確かに今ここでこの子にきれたなんか言ったらもう、二度と安全な人なんか思ってもらえないと覚悟しておいた方がいいだろう。

そんなんじゃなくって、なんてゆーんだろーなぁ、怒る気が失せるっていうか、優しくしてあげたくなるのだ。

え、もしかしてこれが母性!?

「川に流れる前の記憶とかは?」

「さあ、」

「おうちはわかるかな。」

「さあ、」

まるで、『犬のおまわりさん』だな。そんなことできるなら初めっから警察署なんていかなくてもよかったじゃん。私って有能!

完全に犯罪者の思考じゃん。これじゃあ、誰も私のことなんか匿ってくれりゃしないだろーな。

「神頭機関。」

聞いたことのある名前だ。

「それがどうした。」

「僕のいた場所。」

えーと、神頭機関。どう言う奴らだっけな。あー、自然派のバカどもだ。

説明するな。科学っていうのにも種類があって、自然派と最終派が大きな二つだ。

科学ってゆーのは、自然から学んだものだろ?それをそのまま形として吸い込んで新しいものを生み出そうってゆーのが『自然派』。最終派ってゆーのは、自然に反して存在しているものがある。霊的なものだったり、暗黒物質(ダークマター)っていうのもあいつらの大好物だ。なんか超常的なものに可能性を見出している奴らだ。

そして、神頭機関ってゆーのは、非人道的な数多くの人体実験を繰り返してる、非人道的な人間の巣窟だ。

この世界の闇に近いところだろーな。

そしてこの娘の流れてきた川、その上流には、『優雨瓶局』、なんてゆーところがある。そこから流れてきた。なんの意味が?

「そこにお前は帰りたいか?」

「やだ。」

なんらかの理由があって帰りたくはないらしい。ここで返すのが、大人。ここで喧嘩を売りに行くのが、私、九十九未来だ。

流れてきた理由は、逃げて来たで大まかにあってるだろう。

私の元には不幸が訪れる。それは、いつものことだ。

「ガシャーーン!!」

窓ガラスが割れた。なんでだ。いや、もう慣れてる。そうだよなぁ、よくわかっているぜ。こうやってはじまってくねーと私もやる気が出ねーつーんだよ。喧嘩を売られたってゆーのは、腹が立つけどよぉ、舐められたまんまにしておくってのにも私は腹がたつね。

私はドアを蹴破ると、ルシールを抱いて、ホテルの廊下に出た。きっと次は、爆弾か、ガスかだろう。予想は当たったよ。ガスだった。おそらくもう、場所は知られている。ホテルから出るのが最優先だ。しかしここは、地上7階だ。私は飛び降りてもいいんだが、ルシールも間もなく死んでしまう。せいぜい、2階と行ったところか。

「九十九さんっ、」

そう言って服を握りしめるルシールに私は、

「大丈夫だ。死ぬことはないよと言った。」

目線を下に向けると顔を赤くしたルシールだ。何照れてんだか。

「服、着たい。」

「あー。」

なんで私ってこう、いい時に締まんねーかなぁ。なんかもう、台無しだよ。ったく。

「フランスってゆーなら、アルザスじゃね?」

日月星辰。私の忌まわしき神秘の力。『想えば「身」を結ぶ』。それが合言葉だ。そこにないものもそこにある。想像すれば創造する。なんでもこの手のひらに。

「ここからの事はぁ、私とお前の秘め事だ。忘れんな。」

調子は悪くねぇ。ただ、今は相手が悪い。

「ちっ。」

階段を降りようとしたところに、銃を持ってる戦闘員と思われる奴らと遭遇した。

戦って殺すか?簡単だ。きっと、発砲すらさせずに殺せると思う。だけど、私はそんなことしない。この娘の前で人を殺したなら、私はこの娘に不幸を植え付けてしまうことになる。それは、彼女を不幸にしてしまうことに儘ならない。殺さずに逃げる。出来るのか?私。出来るかどうかじゃない。しなくちゃいけねーんだ。これは、私のためじゃない。彼女のためなんだ。

「いける。」

もう、頭の中に体の動きが見えたんだ。勝つビジョンがね。

相手は3人。こいつらを気絶に追いやる。階段の特性を使ってやる。成る程、前に1人に、後ろに1人、賢い陣形だ。神頭機関ってのは、武力にも力を入れてんだな。

まずは、発砲前に片付ける。

手はこいつ抱えてて使えねーからな、足だ。人には気絶に追いこむ箇所がいくつかある。まずは、顎。落ちることでスピードをつけ、空中で相手の顎に右足を入れる。これで、今、気を失ったはずだ。しかし、これでは、後ろに発砲が来てしまう、だから、腹を蹴り、踊り場に2人を落とす。この時、姿勢を崩してはいけない。こんなものでは流石には転ばない。しかし、絶対隙は生まれる。次はこめかみだ。相手の脳が頭蓋骨の内側に激しく打ち付けられて、気絶まで追い込める。右足のつま先で、2人目のこめかみに一撃を打ち込む。これで、いけたはずだ。しかし、ここからが問題だ。発砲準備が2人目は完全にできてしまっている。だから蹴った直後。振り抜いた足で、地面を蹴り、間合いを詰める。体は右向きだ。右からの攻撃は遅くなる。しかし、左足は、下にあり遠くなってしまう。敵から一番近いのは左手になる。これでもまだ問題がある。それは、リーチがない。これでは、敵に当たるのも遅くなり、打たれる可能性が上がる。リーチを伸ばす。そう。私にはこの忌々しい「日月星辰」がある。次の弱点は喉だ。そこを手に創り出した木刀で突く。

これで、難を過ぎた。しかし、まだ下にも、似た奴らがいるだろうな。

「大丈夫?」

「あぁ、おかげでな。」

「?」

お前のおかげで私も一歩、成長できた気がするよ。だからこそ、私はルシールのことを守らなくちゃいけない。死なせることがあっちゃいけねんだ。

「ドタ、ドタッ。」

チッ、こんなことしてる間にも、もう次が来てるっていうのかよ。相手してやってもいーんだけどさ。こいつが居る以上最低限の戦闘で安全を守らなきゃいけない。

となりゃ、逃げる。ただ逃げるんじゃねーよ。背なんか向けることがあっちゃいけねー。胸、張って突っ切っていく。これが、私、九十九未来の美学に則った、『逃げ方』ってもんだ。

じゃあ、この場合どうするかって話なんだけどさ、手すりを伝って逃げる。

かつて、『最後のミロのヴィーナス』なんて言われた。もうこれ以上美しいミロのヴィーナスに似た人間は生まれないだろうということで呼ばれた名前だ。そんな肉体美から繰り出される戦闘なんて言ったら、『神々の運命』(ラグナロク)での美しさを台無しにしてしまうくらいに美しいだろうよ。そんなのを死ぬ前に見れるんだから名誉なことだこった。

我が肉体の躍動をしかとみるがいい。見惚れろ。傷つけることに恥を知ろ。そこに跪くがいい。これが世界に喧嘩を売った人間の実力だぁぁぁぁっ。

「ドッ、ドッーン」

「あ。」

階段を踏み外したではなくって、階段を踏み抜いてしまった。

「おねーちゃん。」

「大丈夫だ。死なせはしない。」

これもただ、落ちる私の戦い方じゃあ、いけない。2人とも無事でないといけない。

飛び降りた場合は脚力の方が腕力より勝るから、足を下にして少し曲げ加減にしておき、着地した時に少し踏ん張る。悪くても相当高い所ではないし足、足首、膝、股関節、腰椎等の粉砕骨折で下半身不随程度だろうな。これで十分私の方に力を流し、ルシールの無事を守れた。

しかしここで、自分体に逃げるための支障が出たなんて言ってしまえば、直すのに、ほんの数秒だが、ラグが生まれる。ほんの数秒だが、これがるルシールの安全に害をなすものになるかもしれない。ミスリードに繋がりかねない。だからここは欲張る。そのために、衝撃を逃さなければならない。着地直後に蹴りで前転や後転する。私は今回、前転をした。そして一気に一階に下った。ロビーは煙に覆われていた。前髪えねーつったらありゃしねー。でもカンケーねぇ。いつも前が見えねぇ闇の中を突っ走ってきたんだ。落とし穴があったって死にゃしねーよ。

「うおぉぉぉぉぉー。」

次の瞬間案の定前が見えないせいで、玄関に行けずに隣のショーウィンドウにぶつかって、割ってしまった。

「面白いね。」

この娘が笑ったんだ。けっこー嬉しかったよ。だってずっと、不安そうな顔を浮かべていたんだもん。それにやっと私のことを認めてくれったっていうか、信用してくれた気がして、これにもやっぱり私は嬉しかったんだ。こんなもので喜ぶなんて私は、大変丸くなってしまったのだろうな。

「これから、車に乗って逃げる。」

私は目の前に「ロードスター」を創った。それも真っ赤な。

「かっこいー。」

「おー、趣味合うな。」

私はこの色でこの車種が好きだ。

「でもこれじゃ目立っちゃうよ?」

「カンケーねぇ。むしろそっちの方がカッケーだろ?」

「うん!」

「そうと決まれば、敵は来てる。逃げるぞ?」

「おー。」

乗り気になってくれたみたいだ。

街中でやっぱりこの車に乗るってゆーのは気持ちがいいねー。周りの車を見下してるみたいでさー。

「後ろ黒い車が来てるよ。」

「オッケー。銃は確認出来るか?」

「うーん。」

バックミラーを見る限りあるみたいだな。それもこちらを向いている。

「何台ある?」

「とりあえず、5台位。」

音を聞く限り、6台といったところかな。まぁ、なんだっていい。

「あんま顔出すなよ。」

そうゆーと私は、頭を持って席に後ろから頭が見えない程度まで、座らせた。ここで死んだなんていったら、九十九未来、一生の恥だ。

「スピード上げてくぞ?」

幸い車通りは少なかった。そこで私は、黄色信号を無視して行ったんだ。みんなも急いでる時一度はしたことあるんじゃないか?まぁ、黄色は急いで渡れだしな。知らんけどな。

「きいろ信号を渡っちゃだめなんだよ。」

「おいおい、優等生ですか?このやろー。」

「だって黄色は、『止まれ』なんでしょ?」

それって赤と意味同じなんじゃねーかなぁ。

「じゃあ、赤は?」

「進んではいけない。」

同じじゃね?

「大人の私が黄色信号の正しい意味を教えてやる。」

「うん。なに?」

ちゃんと私の話を聞く姿勢ができているなんて立派じゃねーか。

「時間短くね?だ。」

「気にしてんのそこ?」

「そうそう。なんでセンターいるのに、私、こんなに活躍出来る時間が少ないのって言いたいんだ。」

「センターだから無理に活躍しなくてもいるだけでいいんじゃない?」

「主役は大根役者がいい。みたいな理論だな。」

「それはちょっとよくわかんない。」

「教えてやる。主役が演技が上手いとそいつだけが目立って他の人がいることを忘れてしまうんだ。それじゃダメだろ?」

「うん。そうだね。脇役が可哀想だね。僕だったら、オンエア見てる時、泣いちゃうよ。」

「そっか。」

確かに泣きたくはなるかもしんないな。

「だからみんながみんな程よくライトを浴びれるように、主人公演じる俳優さんってゆーのは、ある程度下手で、脇役の演技上手いなーってなるんだ。」

「でもそれって、台本ってゆうか、シナリオの時点で、あんまり目立たないようにすればいいんじゃない?」

「まぁ、確かにな。でもそれじゃ、思ったとーりの物語を描くなくなってしまうだろ?それは面白いドラマじゃなくなっちまう。」

「でも、思ったとおりのことができないのは、俳優もじゃないの?」

「まぁ、ストーリー性が必要な節あるし。でも、俳優が伸び伸びできないってゆーのも問題だよな。」

「ね。」

こんな会話をしながらも私ってゆーのは運転できてしまう。それも、銃で攻撃してくる敵からだ。自分ながらにしてかなり、これは誇らしいことであり、自慢できるな、なんておもってしまう。あわよくば飲み会の席のネタにできるな。おい、飲み会に私がいくことだってあるかもしれねーよ?確かにさぁ、今まで、そんなにいったことがあるわけでもねーよ?でもさ、無いなんて、決めつけられるってゆーのは腹が立つぜ。まぁ、少ないとは思う。酔ったらなにしだすかわかんねーし、私だって、私がもう1人いいたらきっと呼ぶとこは無いね。

「ねぇ、おねーちゃん。」

「ん?どうした。後ろの車が、空でも飛んだか?なら、こっちはモグラにでもなってやるか?」

「いや、そんな大掛かりのことじゃなくてさ、この車どこに向かってるの?」

そんなことなんて失礼なやつ。私が精一杯考えて、導き出した、『もぐらになって地下を進む』。確かに考えた時間なんて、「なら、」で、考えたくらいだけどな。必要なのは、密度だろ?ん?密度もない。確かにな、一つ考えたことがたまたまビシッとジグソーパズルのパーツみたいにハマったわけであって。まぁ、自他共に認める、「そんなこと」なんだな。

「神頭機関だけど?」

「おねーちゃん、僕は帰りたくないよ?」

あぁ、もちろん知っているとも。

「許可取りに行くんだ。うちで暮らさせる許可をな?」

「なんでたってそんなことを?」

もうこんなこと懲り懲りなんだ。ないはないでそれはそれで寂しんだけどさ。

「じゃねーと誘拐犯になりかねないっつーの。」

もう犯罪者なんて懲り懲りだぜ?飽きたっつーの。

「おねーちゃん、死なない?」

「私が死なない限り、私とお前、守るって決めた以上死なない。私死なねーし。」

これは約束じゃない。あの日からの決意じゃない。これは、事実だ。法則みたいなもんで、決まっちまってるんだ。

「お前が心配するのは、お前が何者なのかを知る覚悟があるかどうかだ。」

こいつの正体のことは知らない。しかし、神頭機関のすることなど知れている。あーゆーくだらないことをする暇な奴もいるってことだ。そんなことしてねーでさぁ、永久機関とかつくってくんね?最終派とか明らかに好きそうなことじゃん。

その施設は川沿いにあるもので当たりは果樹園となっている。

「なーんかクセェな。」

草の匂いってゆーんだろうか。鼻の奥にまで届くようなもので、正直、私はあんまり好きなところではない。

果樹園の近くにする理由ってなんだろうな。まぁ、大きく失敗してもあまり責められることが無いってことだろうな。住宅街にあんまそういう施設を置かないってそんな理由なんだろうな。今まで幾つもそんな施設に行ってきているし、なんなら潜入までしている。

「出迎えもなさそうだな。」

まったく、追いかけてきていた車もいなくなっちゃったし、もう正面から突撃しちゃってもいいよね。

「おい、ここの所長を出せ。」

「お名前をお聞かせください。」

「九十九未来と、ルシール・マルティネスだ。」

「は、はい。」

なんかビビってるようだな。まぁ、名前聞いてビビってるようだな。襲ってきてもらえれば都合がいいんだけど。

そうやって私たちはふつーに入口を通された。

「初めまして。この研究所の所長の兼坂 利休です。」

「九十九未来だ。私はこの子を保護しに来たんだ。警察とかめんどいし、とっととこの子のことについて教えてもらおうか。」

「いいでしょう。」

案外素直だな。まぁこーゆーやつに限ってなんかあるんだけどな。そんな私の予想も的中していた。

「新しい元素の作り方って知ってますか?」

「人工的なやつか?」

ほら言っただろ?こういう新しいことが好きなんだって。

「はい。」

「そりゃ、なんか元素ぶつけるやつだろ?でもそれ以降は知らねーよ。」

「じゃあ、説明いたしますね。先程の説明で正しいんですが、原子核は1兆分の1センチと、とても小さいため、いくら狙ってもめったに衝突は起こらないんです。原子核を衝突させるためには、融合が起こるようなちょうどよい速度で、できるだけたくさんの原子核を標的に当てる必要があるんです。」

へぇ〜、知らなかった。

「母数をあげるってことか。」

「そうです。しかし、問題はまだあります。それでも時間がかかるんです。1秒間に2兆5000億個を衝突させても新しい元素ができる確率は100兆分の1なのですよ。」

不幸自慢か。同情でも買うつもりか。私はそんなのも捨ててきてるぜ?

「その末、私たちは新しい元素を見つけ出しました。しかし、それの寿命は、わずか1000分の2秒。そんな事実がありながらもいいニュースがあったんです。それは、空気に触れると沸騰し、水に触れると爆発を起こし、さらに人間に吸引されるとその人間を死に至らしめるという性質を持っていました。また、それは分解されると猛毒のフッ化水素酸になる物質でした。」

それっていいニュースなのか?

「しかし、これすでに発見されてたのもなんですね。1993年、ドイツに発見されているんです。しかし、物質の研究が進むうちに、現場の兵士達の間では次のような会話が交わされ始めました。

「うわっ、この物質の研究はもう中止すべきだ。この物質はあまりにも危険すぎる!」

そう、この化学物質は、そのあまりの威力に、あのナチスでさえもしり込みをしたという代物です。だからこそ、私たちはこの物質の正しい結果を知りたくなったんです。」

「試したくなったと。」

確かに、研究者にとって好奇心とは次の一歩に踏み出すために必要なことである。

「そうです。そして、すぐに消えてしまうため、長引かせる為、命を与え、長生きさせるようにさせたんです。」

もしかして、

「苦労しました。その埋めこめられた命とは、その目の前の女の子。ルシール・マルティネスなのですから。」

なんてゆー奴らなんだ。人間で爆弾を作りやがったのだ。こんなの、命を甘く見ているとしか思えない。

「そして、逃げられたと。」

「何か勘違いしておりませんか?」

ん?勘違い?もうこれ以上何を勘違いしてるってゆーんだ?どうせ、「これが正義なんだとかいい出すんだ。」

「そうでしたね。数多もの研究所を易々と攻略してしまわれる貴方様には存じ上げられないのですね。」

こいつ何が言いてんだ?

「人1人容易に逃げ出せるほど簡単な作りはしていないんですよ。それも、中身は違えど、そこらの幼女と変わらない存在を。」

「わざと、川に流したと?」

「そうです。」

「記憶はわざと消したのか?」

「はい。拾われても帰ってこないように。しかし、なぜでしょうね。ここだとわかってしまったのは。」

知らねーな。

「例の九十九様のミラクルパワーとでも言いますかね。」

そのくちぶりだと、

「私を殺そうとしていない?」

「そうですね。たまたまこの街にいた九十九様、の元にこの子が訪れたわけですね。」

てっきり、わざと流したなんて聞いたものだから、私を殺そうとしている奴らかと思っていた。そんなやつこの世界にごまんといるからな。

「でもこの子は今普通の人間だぜ?テロを企んでたって話だってけど、どうやって起爆しよとしてたんだ?」

「この爆弾のトリガーはこのこの死です。まぁ、原理としては、この子の特殊体質がこれをおさえこめれるんです。それが機能しなくなった瞬間。即ち、『死』です。」

なるほどだから殺そうとしたのか?

「ここであなたはこの子を殺して私たちも殺してくれたって構わないんですよ?どうせ貴方様はこんなことで死ぬことは無いんでしょうし。」

こいつ、私がこの子をこれせないって知って。

「この娘は私が救う。」

「それまで私たちはあなたもろとも殺そうとします。伝説とわたりやってやりますよ。」

「上等だ。解除したらてめーらもろとも殺してやる。」

きっとこいつらしかこの娘の解除方法しか知らない。ゆーだろ?研究者ってゆーのは、対処方法も同時に編み出すって。だからこいつらは殺せない。

この娘にもあまりショックすぎるだろう。そっから立ち直れないのは当然ことだ。しかしこの娘はできるらしい。

「おねーちゃん。僕はここで死んでもいいよ?おねーちゃんの手で死にたい。」

だけど、これは間違った立ち直りだ。

「何寝ぼけたこと言ってやがる。てめーの命はこいつらが感じてるより、ずっと重い。確かに命の重さなんて平等かも知れねーよ。だけどな、おめーもんは変わんねーんだよ。それに助けることができないなんて私言ったか?何もできない奴らと、私の発言の重さっつーのはちげぇ。」

「おねーちゃん。」

「それにお前が死んだら、私は、今度こそ、この世界を壊しちまうかもしんねーな。」

「何を言ってもらったって構いませんが、早く帰ってもらえませんか?つい、殺してしまいそうです。」

「いるよ。お前みたいな私の怖さを理解できてねーやつがよ。てめーは遺書でも書いて待ってろ。」

その帰りの車は寂しいものであった。なぜかって?そりゃ、帰る家がねーんだもん。こんな深夜にまだ空いてるホテルなんてあるのかよ。それにルシールは寝ちゃってるし、寂しいよ。

まぁ、死なんて今更こえーもんじゃねーよ。


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