つくもの「み」

丸井 ハル

フトゥーロアングイラ

九十九未来つーのはどいつの口からも出てくる。なんでだろーな。

私?そうさ、私が、九十九未来だ。自分でこんな事言うのも、何つーか、照れるよな。いや、事実よ?

今はさ、なんて事ないところで、なんて事ない中学生の教師の先生をしてるけどよぉ、昔は裏の方の世界ではさ、ピューピューいわせてたわけよ。

あ、信じてねぇな。まぁ何だっていーけどさ。

「九ぅ十九さん!」

「ちっ、」

こいつは楽車恵。私の学校の生徒なんだけどな、

「お前私の担当するクラスの生徒じゃねーだろよ。」

「何だって良いじゃないですか。」

やけに懐いてるんだ。迷惑じゃねーよ?そら、暇だもん。だからこそなんだ。断る理由が見当たらんねーんだ。嫌なとこについてくるぜ。

「それよりさっき舌打ちしましたね。」

バレてんのかよ。

「悪かったな。で、何のようだ?」

「用が無ければ、話しかけてはいけないんですか?」

「それは同級生とか彼氏とか仲良い奴とかの会話だろ?先生とする会話じゃねぇ。」

「良いじゃないですか。」

「いや職員室でそれはまずいだろ。」

話したいだけで先生に職員室まで会いに来るって、どうなんだ。嬉しいけどさ、なんか生徒の大事な青春を奪っているようで、なんか気が引ける。

「なんか最近、職員室に入るとき他の先生が『いらっしゃい』って言ってくるんですよね。」

「常連かよ。」

私ですら、「お疲れ様です」とか言ってもらえないけどねな。

「まぁまぁ、今日はちゃんと話を持ってきたんですよ?」

それは今日だけじゃなくて、毎回がいいのだが。

「内容はなんだい?」

「海水浴行きません?」

今までの会話を聞いていてもう気づいている方もいるかもしれないが、こいつ私を舐めているんだ。舐めていると言うより、肝が座っていると言うのが私も傷つく事はない。

にしてもこれは舐めているというより最早、友達としてみられているな。

「君にはもっと一緒に行くべき人がいるんじゃあないのかね?」

「いません。」

即答だった。と言うかクラスメートとうまく言ってないで他のクラスの先生と仲良くなるってどーゆーバランスになってるん?攻略難易度としては、私の方が難しいんじゃねーのかなぁ。

「まぁ、仕事としていきましょう。プライベートとして行くのでは緊張してしまいますからね。」

なんでそんな上から目線なん?

「仕事だからって言って変らねーし。」

「事実何も変わらないかとおもいますが、気持ちは変わります。」

「ふーん。」

こんな対応だが納得してる節はある。

「で、海に何しに行くんだ?」

「え、」

まぁそうか、海行って海で遊ばないってのもな。そーいえばさっき海水浴っていってたかもな。

「そら、海行ってうなぎ見ないでどうするんですか?」

「え、うなぎ?」

「はい、うなぎです。ウナギ科 ウナギ属に属する魚類の総称であり、世界中の熱帯から温帯にかけて分布してます。ニホンウナギ、ヨーロッパウナギ、アメリカウナギなど世界で19種類、そのうち食用となるのは4種類です。それが確認されています。」

「いや、うなぎの説明をして欲しいんじゃないの。」

にしてもよく噛まずに、それも正確(?)に言えたものだ。

「ソースは?」

「Wiki情報です。」

「で、どうやって行くんだ?いっとくけど運転するといったらその時の気分でしないかもしれねーよ?」

「気分屋って言うのも中々迷惑な話ですね。」

思っても言うな。失礼だな。きっと私も昔は似た様なことをしてきたんだろう。そう思うとそれ相応というか。報いが来たんだな。

「じゃあ、私が運転します。」

「いや未成年でしょ。てゆーかできんの?」

「出来るかどうかじゃなくて、やる気があるかと思いますが。」

「運転する奴が言うなよ。」

これもう行く前提じゃん。どうしてくれるんだ。

「船とかどうします?」

ん?海水浴ってスキューバダイビングってこと?

「いるの?」

「いいえ。あったら便利だなって。」

こいつのおすすめには乗っといた方がいい。なぜかって?されていないプランを選ぶと考えうる最悪な方へ向かってしまうからだ。こいつはなんらかの疫病神だと思ってもらった方がいい。

「じゃ、明日、街のショッピングモールに来てくださいね。」

「え、明日?」

「はい。」

どうかしましたかとでも言いたそうなくちぶりだ。

「どうせ暇でしょう。」

「どうせって。その言い方はないだろう。」

「あれぇ、珍しく予定でも入っていましたか?」

「悪かったな。珍しい明日じゃなくって。」

「ということは?はっきり言ってもらはないとわたしもわかりませんよ。」

わざわざ言わせてくるあたりがほんっといやらしい奴だ。

「どうせ、入ってませんよ。」

「じゃあ、決まりですね。しかし、いちいち怒ってたんじゃあ身が持ちませんよ。」

「それを怒らせた本人がいうんじゃあない。じゃないと、わたしの身が持たなくなるのが先か、君の身が無くなるのが先かになってしまうよ。」

「そのセリフはわたしがいう前に言ってくださいよ。もうわたしが死ぬのが決定じゃないですか。こりゃ、無理ゲーって奴ですよ。」

ほんっとビビらないこいつに腹が立つ。

「妙に現実味を帯びてしまうことに、恐怖を感じ得ませんねぇ。くわばら、くわばら。」

こいつほんと嫌な奴だな。沸騰する直前で逃げていきやがる。なんつーか、起こりきれねーってことだ。いや、あれでも怒ってねー方なんだぜ?怒ったらどーなんだろーな。ま、怒らせねー方がいいってことさ。その点、楽車も理解してる様だし。気をつけろよ。おめーら。

つーことで、次の日だ。

「お早う御座います。」

てゆーか、生徒とわたしがこんなことしていーのか?

「ダメでしょうね。」

「まじ?」

早速、楽車が乞食をしてきたものだから、スタバに入った時だった。

「マジです。えーと、ピーチフラペチーノのトール。」

「いや、金やるから自分で買ってこい。」

「えー、じゃあ、トールじゃなくってぇ。」

「大きさを変えなさいって言ってるんじゃない。」

てゆーかトールかよ。

「買ってきましたよー。」

「なんかパンとか買ってきてない?」

「はい。いらなかったですか?安心してください。わたしのものですから。」

「私の金だけどね。」

いっそ、『なら、わたしが食べます』って言ってくれた方が良かったんだけどね。

「そーいえばアウトなの?」

「はい、普通は先生が誘われたら断ります。」

「まじか、」

「海も行きません。」

なんでわたしが海まで行こうとしていること前提なんだ。

「なんか法律あったりするの?」

「いえ、ないかとは思いますが、学校の規則ではあるのではないでしょうか。」

「じゃあ、あっても免許停止くらいかな。」

「ですかね。」

「てゆーか君さ、」

「はい?」

「なんで今日、制服なの?」

「学校はないですよ?」

「うん、知ってる。今日は全国的に土曜日だ。なんなら我が校は夏休みなんてものに入っている。部活動でも制服は着ないだろう。もう一度聞く、なんで君は、プライベートで制服を着ているんだい?」

「・・・。さぁ。」

「もしかしてだけどさぁ、わたしのこと潰しにきてない?」

「ぎくっ。」

自分で言っちゃたよ。こいつ。

「潰しに来ているとはどういうことですか?」

「わたしに教員辞めさせようとしているってこと。」

「いえ、厳密にいえば違います。先生が先生をやめられてしまっては困るのは私です。」

そうだったこいつ、友達いないんだった。

「だから、辞める、辞めないのギリギリを遊んでいたのです。」

遊んでいたって言っちゃってんじゃん。

「それくらいしてなんぼですよ。」

「胸を張るな。誇らしくもなんともない。」

「ま、そんなのはどうでもいいとして。」

良くは、ないけどね。なんも解決してないもん。遊ばれてやるつもりもない。

「船の話はどうなりました?」

「あー、用意しておくよ。」

「お主も悪よのう。」

「いえいえ、お代官様ほどでは。って何がしてぇんだ。」

お命頂戴仕っちゃうよ。

「であえー。であえー。ですかね。」

阿保。

「私たち何しに来たんでしょうね。」

「ほんっとだよ。」

「ねねー、あれ九十九せんせーじゃなーい?」

まずい。生徒か。

「楽車。」

「待ってください。まだ食べ終わってませんから。」

「じゃあ、わたしとお前はここでばったり会って、少し会話をした。それでいいいな?」

「OKでーす。そーゆー設定ですね。じゃあ明日。場所はえーと、ばったり会う場所で。」

「え?」

そんなどころの話じゃない。とにかくこの場から離れないと。

しかし、いちいち皮肉っぽいこと言うの上手いよな、あいつ。

ばったりって、どこだよ。わたし知らねーよ?学校か?いや、わたし車出さねーかもしんないとは言ったけどさ。直接海行かないとダメ?

『海行くってゆーのに海来ないでどーするんですか?』

私の中の楽車は、めっちゃ言いそうなんだよなー。

『私たちがばったり会うと言ったら学校でしょう。』

あー、これも言いそー。でもこの二つに共通していることといえば、どっちも、暴論であることなんだよな。

とゆーことで私は海に行くことにした。

「デ、デ、デ、デデ、デデデ、デンデン」(オレンジミントより)

案の定、楽車は別の所にいた。それは昨日のショッピングモールだった。

「なんで現地集合なんです?こういうのって道のりの電車の中が楽しかったりするんじゃないんですか?」

お前みたいな奴がそんなこと気にするのか?

「昨日、ばったり会ったのはどこですか?」

「いや、あのショッピングモールだけどさ、設定だろ?それにショッピングモールに集合して、海行くって聞いたことねーよ。」

「まあ、会えたからなんでもいーじゃないですか。」

言いたいことはまだあったんだけどさ。ここから進まないってゆーのも鬱なことだし。しかしこいつに括られてしまうのにも腹が立つ。

なんでコイツ、私の電話番号知ってたの?こわっ。これに関しては教えた記憶は無いし、教えちゃいけない規則があることだって、知ってる。まあ、知らなくていいこともあんじゃね?つーことで、本人には聞かないで黙っておくことにした。電話番号変えておこうかなー。

「船はどこですか?」

「これだよ。」

「おー白い船体でかっこいー。流石ですね。九十九さん。」

「そら新品だからな。」

「ちょっとよくつながらないですね。」

本人も言ってから気づいたことなの。

「しかし、船舶免許はお持ちで?」

「あぁ、急遽取ってきたよ。もともと、2級は持ってたんだけど、1級じゃ無いと行けないとこもあるってことだから、2時間、講習を受けてきたよ。」

「九十九さんとなれば、偽造することくらいできたんじゃあ、無いんですか?」

「人をなんだと思ってるんだ。」

「もしかして教員免許も偽物なのでは?生徒とプライベートトであってたみたいですし。」

「それは単純に忘れてたの。」

まぁ、ちょっとだけならズルした節はあるけどさ。

「生きて私は帰って来れるのでしょうか。」

「お前が変なこと口走らなかったらな。」

というわけで船に乗り込んだ。

「で、どこに行くんだ?お前がいうということは、碌でも無いとこにでも行くんだろうけどさ。」

「じゃあ、まず、セント・ヘレナ島にでもいきましょう。」

馬鹿だこいつ。最早、やっぱりとでも言えてしまう。

「セント・ヘレナ島って南太平洋に浮かぶ島のことだろ?」

「はい。」

「いやね、そんな地理が詳しいわけじゃ無いんだけどさ、流石に知ってるよ。」

「はい。だと思って、わかるだろうなっていう島をあげてます。」

「南太平洋って日本の裏側だぜ。」

「勿論、存じ上げております。」

今回ばかりは、存じ上げられたら困ることだな。まぁ、知らずにそこにいきたいって言われても私が困るんだがね。

「いきません?」

ここで行かなかったらこれまでというか、ここ数日の努力が水の泡ってことだ。

「いや、もう行くよ。」

こうなったらもうヤケクソだ。どうせ死因なんてこの2人からなら生まれまい。どうせ死んだってもはや気付く人間だっていないんだろう。こんなこと自分でいってて悲しいよ。

「その島に何があるっていうんだ?」

「なんのために海に来たのか覚えてますか?」

え、なんかいってたかも。あれだよな。あれ。ここまで、喉までならでてきているんだよ。

「ぶぶー。タイムオーバーでーす。」

なんか、腹立つな。

「正解はぁ、うなぎ観測です。」

なんか聞いた様な気がする。所詮そんな程度だ。

「天体観測みたいなノリで言わないでほしい。」

「この場合、『空の次は、海でしょ。』ですかね。」

「てゆーか、うなぎって、日本の河川とかの淡水にいなかったっけ。」

「いますね。」

なら当然の疑問だ。

「なんんで日本はダメだったんだ?」

「天体観測で例えてみましょう。南十字星ってご存知ですか?」

「あぁ。小学校の校章のモチーフがそれだったよ。」

「そうなんですね。だったら面白い話ですね。南十字星って日本じゃ見れないんですよ。」

「あー、なんか聞いたことあるような。」

「ですかね。理由はご存知ですか?」

「南半球からしか見れないからだとか?」

「ですね。そこまでわかれば十分でしょうね。」

「要するに、そこではうなぎの南十字に値するものがあるということなんだね。」

「褒めてあげられるものですね。」

なんでそんな上から目線なの。コイツは。

そんなこんなで行こうとしたのだ。その、セント・ヘレナ島に。だが、そんなに簡単に着くところではなかったのだ。ほんっと私じゃなければ行けなかったし、他の人と行かなくてよかったのかもしれない。いや、私だってこんな所にいきなり行くってゆーのは楽しいことじゃねーよ?仕方なかったんだって。

「私は今どこにいるかわかんねーんだよ。」

「全くですか?」

「まぁ、半々ってとこかな。」

「先生はうなぎの子供ってご存知ですか?」

「子供って幼生のことかい?」

「そうですね。幼生と言っても妖精では無いですよ。」

「はいはい。なんか居たよな。」

「九十九さんって結構そんなあやふやなこと言いますよね。」

「まじ?」

「なんか居た。って結構ズルく無いですか?」

「ごめん。」

他人から言われて気づくものがあるらしい。

「正解はレプトセファルスです。うなぎの子供として今回挙げましたが、他にもハモ、あなごの幼生もレプトセファルスを指します。まぁ、大体がうなぎですけどね。」

「それって食えるの?」

我ながら、恥ずかしい質問をしてしまったものだ。はっきり言おう。私は今、食に飢えている。ステーキとか食いたいなぁ。

「はい。食べれます。高知県などでのれそれと呼ばれており、食用にされます。主にですね、生きたまま土佐酢、三杯酢などにくぐらせて、踊り食いにされることが多いですね。大阪ではですね、どの消費地でものれそれと呼ばれることが多いですが、岡山県では「ベラタ」と呼ばれています。」

「やけに詳しいな。」

「各地の郷土料理見たいのに興味があるんです。」

「ふーん。」

「で、レプトセファルスの話の戻るんですが、成長後にはレプトケファルス期の約18倍、アナゴは約30倍の大きさになります。」

「でっか。」

「そこらへんは、自然の神秘とでも言っておきますかね。」

「で、レプトセファルスの話を長々と聞かせられたんだけど、結局なんなの?」

「そんなせかせかしないで下さい。」

そりゃ、するよ。ここまでよく私も怒らずにいれたものだ。

「ここまで九十九さんに航海させたのは、」

あ、コイツ私にさせたという意識はあるんだ。

「ある都市伝説を追ってのことなんですね。」

私そういうの疎いからなー。わかんねんだろーなー。

「1928年から1930年にかけてデンマークの調査船ダナ号による海洋調査が行われたんです。」

「昔だなー」

きっと都市伝説って言ったって昔のなんだろーなぁ。

「1930年1月31日のことでした。そのダナ号によってセント・ヘレナ島付近で1.8 mもある非常に大きなレプトセファルスが捕獲されて、大きな反響を呼んだんです。ご存知ですか?」

「いいや。」

「それはよかった。それまで知られていたウナギ類のレプトセファルスは先ほど申し上げたとおり、成長後には数十倍の大きさになることから、この巨大なレプトケファルスが成体になった場合には体長が数十mにもなると予想されます。」

「えっぐ。」

意外にも教員らしく無い言葉を使ってしまった。

「大体、大きさは5 cm前後ですからね。そこからもわかる通りかなりの大きさです。」

「じゃ、そのレプトセファルスをここ、南太平洋で捕まえようってことかい?なら、さっさと捕まえて、行こうや。」

「いえ、この話には続きがあります。『伝説のシーサーペント』いわゆる大海蛇ですね。『の正体がこれで判明した。』と有名になったんです。」

海が、何か叫んでいる。

「この海には、伝説上の生き物がいるんです。」

海が荒れている。もしかして、奴が、シーサーペントがいるのか?

「あなたはこの船でそんな奴と戦えますか?」

不思議なものには、人一倍慣れている私だが大きなうなぎ、というものには、一切の既視感を感じることができずに、ただ、海を眺めていた。

「目撃例は中世以降多数存在します。中世から近代にかけて作成された世界地図の海洋を示す部分にはシーサーペントの絵が記されていることが多いですね。」

コイツはなんでこんなに驚かない?私だったらこんな奴毎日でも会わない限り、驚きを隠せずには、いられないだろう。

「イギリス、コーンウォールでは、モーガウルという名前でたびたび目撃されています。多数の目撃証言とはっきりしない写真が存在しており、目撃証言によると、頭に角が生えた首の長い生物で、首の後ろには毛が生えていたといいます。大きさは6m~12m。」

このうなぎツノが生えているのか?

「コイツ、そもモーガウルなんじゃ無いのか?」

「そうですか?まぁ、もっと見てください。」

もう、これは信じる、信じないなんか言ってられない気がした。

「1734年にはハンス・エジトによって記録されたシーサーペントもあり、巨大なイカではないかとも言われています。」

「なんか足?みたいなのが、」

「次は、チェッシーです。アメリカのチェサピーク湾で頻繁に目撃されている巨大な生物です。多数の目撃証言とビデオが存在しています。目撃証言によると体長3m程度の生物で背中にコブがあり、ギザギザのある小さな突起が付いていて、頭はサッカーボールのようであると言います。ビデオに写っている生物は左右に身をくねらせて泳ぐ12mくらいの生物であるらしいです。」

コイツも話を聞いたら、頭がサッカーボールみたいに見えてきた。何が、どうなっているんだこの海は。どの話が本当なんだ?

「どの話の本当ですよ。」

「え。」

「そして、嘘でしょう。」

何がどうなってやがるんだ。

「結局は人がみるものの結果が本当、本物ということかい?」

「でぇすね。」

「結構ありきたりだな。」

「謎解きは理屈を楽しむだけのものじゃありませんよ?理屈なんて言ってしまえば法則、身近なものなら、万有引力の法則なんてものがあります。他にあげるなら、慣性の法則ですかね。そして、私たちはこれらを大まかながらに理解してます。」

「そしてこれは、」

「そう、人の感情、この場合は、感性に近いものなのでしょう。だから理屈がわかったにしろ、形は一つにまとまることはなく、それぞれの形、個性という結末でこの現にいます。」

まぁ、面白いでしょって言いたいのだろう。

「で、コイツはそれとは関係なくないか?」

「ありますよ。それあなたが作ったんですよ。」

「は?いや作ってねーよ。」

「確かに、あなたのなんでしたっけ、あー、日月星辰ではありませんね。」

「これが思えばそこにある。か。」

「そうです。」

そうやって謎が解けると、そこには海があった。うなぎというか、異形の存在は消えていたのであった。

「じゃあさ、そのレプトセファルスは嘘だったの?」

「いいえ。本当にあった話ですよ。この話には続きがあるんですよ。」

「え、」

「九十九さん聞く耳持たないんで。」

いやコイツ絶対話すつもりなかっただろ。

「事態が進展したのは最初の発見からおよそ30年後のことです。1960年代半ばになって、偶然にも変態途中の巨大レプトケファルスが採取されたのです。そしてその身体の特徴は、この幼生がソコギス亜目魚類の仔魚である可能性を強く示唆していたらしいです。これは、なんともない深海魚ですね。あらためて詳細な調査と研究が行われた結果、ウナギ類はレプトケファルス幼体からの変態後に大きく成長する一方で、ソコギス類はレプトケファルス期において成体サイズまでの成長を行い、変態後はほとんど成長しない。と、いうことがわかりました。」

「どーゆーことかよくわかんねーけど、シーサーペントは再び伝説上の存在となった。つーことでいーなんだな。」

「まぁ、いいでしょう。理解してくれる様な人を探します。」

「いるのか?話してくれるやつ。」

「はえー、いつからそんな人になったんですか?サイテーですよ。ぼっちって言ったって、話しかけたら無視されるわけじゃ無いんです。」

うん。ひどいこと言ったな。

「ほんっと、教員免許ちゃんととったんですか?」

「すみません。」

というわけで行きと同じように帰ったのだが、こんな簡単にまとめたくないなぁ。時間どれくらいかかったんだと思ってんだ。だからといって、話すことは特にないな。あ、あった。でっけーレプトセファルスいたんだった。それ食ったよ。味は、うーんと、ビミョー。まぁ、ちゃんとした奴なら美味いんだろうな。今度、食ってみてーなー。あいつキョーミあるみたいだし誘ってみるか。

「九十九さん。あれ日本ですか?」

「あー、じゃね?」

「今、何時ですか?」

「4時。」

「何曜ですか?」

「あ、月曜。」

というわけで、帰るまでが遠足。学校に着くまでが、海水浴。(してねーけどな)船、ほんとあってよかったよ。なしだったらどーしてたろうな。

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