付き合いましょう 8話 微増【中3 冬】

 年齢性別問わずに甘味が好きな者からすればコンビニは誘惑の宝庫であり檸檬はグッと堪えて塩気だけを求めました。飲料に関しては運動のために事前に用意していたので「それら」についての無駄遣いだけはしない。こうして身体に痩せる合図を送り出した矢先に「なんだ。気のせいか」と身体は錯覚していたことを知る愚策をダイエット中の二人はついついしていまい、集合場所の近くの公園のベンチに集まりました。


「先輩は肉まんでしたよね」


「おい、貴様はいったい肉になるモトをいくつ買った? 一つくらいなら買い増しているとは思ったけど、その大袋はなにかしら?」


「あんまんとカレーまんと、チーズカルビまんとジューシー肉まんだけです。別腹で許される〜 でもピザまんは売り切れてました。ピエン・・・」


別腹の定義まで争い始めたらせっかくの熱々な中華まんに焼き芋が冬に負けてしまう。そんな檸檬が満足気に抱えていた包みはイチゴのリクエストも合わされば合計五つのホクホクの中華まんが集結していた。その豪華メンバー勢揃は外装の時点で大所帯アピールをしていたのでイチゴはツッコまざるおえないのでした。そのイチゴは焼き芋を購入していて別行動であり、それが失敗であったと悔やんでいました。しかし食べ物を粗末にするわけにもいかずに、食べる選択以外にない。そのためイチゴは次からは檸檬の買い出しには気を配ろうと心に誓ったのでした。


「何をもって許されると思った・・・一つのコンビニのラインナップを、ほぼ制覇しただろうソレ!? チーズどころかジューシーという罪悪感の塊まで買いやがって・・・ピザまん以外も売り切れていれば・・・」


イチゴは常々中学生ながらにコンビニで働くスタッフの仕事量と給与の釣り合わなさを嘆いては、店員に敬意だけでも贈りたいと感じていた。利用者からすれば目的は明確でありテキパキと流れるように利用して立ち去るだけでしたが、ふとイチゴが利用している最中にコンビニスタッフの仕事が多すぎ問題に気が付き。精算関連でも業務が多岐に渡る上に、一部の業務を委託できるフランチャイズではない本店などの店舗もあるにはあるが、品出しからピッキングに棚卸しから飲食関連の調理にセッティングに、発注義務に掃除に、電話対応から売り上げ釣り銭管理にと様々。それは中学生のイチゴが短時間の利用をしていた間にも「スタッフは様々な仕事をして多忙だな」と思わせてくれるに充分な情報量を与えていた。その上で「アルバイト募集」という張り紙を見れば「給与の安さ」にまた驚かされてしまい。イチゴは徐々にハイテクを取り入れて業務が一部軽減されてもいるコンビニ業務でしたが、スタッフの労力と比較すると慣れても給与の安さだけは納得しないまま働くことになるのだろうなと想像しながら、自分はこの先も「利用者」だけの立場でいようと自己分析をしながら、先に「甘味」か「塩味」をどちらとするのか論争もして檸檬がジャンケンに勝利して中華まんから食すことになりました。


「オープン! うわあ、湯気からもう美味しい♡」


「湯気がすごいな・・・中華まんのストックが一気に消えたコンビニの店員さんの労力も考えてあげなさい」


「入れて放置するだけなのに大袈裟です。でも先輩は最後には冷たくできずに根っこの優しさが出てしまって、檸檬一人きりにしてごめんよ。オモチャだけだと寂しかったよな。ワタシが悪かった。今からワタシのでいっぱいに可愛がってあげるからな、と朝まで寝かしてくれないのですね。なにこれしあわしぇ♡」


大量購入者のための大袋に積み込まれた「別腹」らしい中華まんからは冬の寒空に向けて狼煙を放っていた。その光景に檸檬だけでなくイチゴまで唾液をゴクリと飲んでしまうくらいに絶景で、早く食べたい気持ちを抑えながら二人は戯れをしている。


「オマエの中のワタシは常に生やしてばかりいるな。いっそのこと大人のオモチャを常に装着するか?」


「そんなことしたらスカートから常時でこんにちわです。通報待ったなしですね」


「こうして檸檬は放置されてゆく。補導されてもワタシの名だけは黙秘する道連れしない系女子であることを願います」


「放課後まで見つからずに屋上まで来れました。先輩のでダイスキダイスキしたかったので、ずっと我慢していたの♡ 準備はとうにできていますので召し上がってください♡ はい、肉まん。熱いのでフゥフゥして冷ましてあげましょうか?」


「恋人でもパス。熱いまま食べたい」


これも一時期から定番になってしまったエロトークで盛り上がる二人は檸檬が肉まんを半分に割り片方をイチゴに手渡してあげました。檸檬は恋人が火傷しないように親切で肉まんを半分にしたわけではなく、その残り半分を美味しそうに自分で食べ始めてしまう困った食いしん坊であった。


「うん、一口目から幸せになれる味だ」


「ずっと我慢していましたからね。一口ごとに飛んでしまう美味しさです。お腹の奥まで到達したら・・・もう私、幸せで死んじゃうかもしれません」


「罪深すぎだろう・・・どんだけワタシは檸檬を依存させているんだよ。そろそろエロトークは終わりにして、食事どきくらいまったりしようよ」


「あはは・・・調子に乗っちゃいました」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 ただの買い食いが我慢できない腹ぺこ中学生なのに未来のありえない妄想で盛り上がりを見せてしまった。これも裏表を隠さないでぶっちゃけられる親友だからこそできるエロ妄想でしたが限度がないと危うくて仕方ない。そこは歳上のイチゴが判断してあげなければいけないのでしょうが、そのお姉さんも一つしか歳は変わらないので大人にはまだ遠い。だからこそ檸檬の暴走を抑えるどころか悪ノリもしてしまう。しかし度重なる際どい発言にイチゴもおかしいぞと思いはじめる。何しろ盛り上がりはしましたが有意義な時間として進んでしたい会話内容でもないから。そうなると「また」心配ごとでもあるのかとイチゴは考えて、そこで今回は直球で檸檬に尋ねてみることにしました。


「ダイエットにストレスでも感じたの?」


「はひゅ?」


甘いものか塩辛いのどちらを先にする論争は芋が後になりましたが、檸檬はあんまんから芋に繋がらないように半分に割った肉まんをペロリと完食すると、次にあんまんも半分に割り「一口」でその半分を食べてしまいました。つまりもう半分も「一口」で食べられることは約束しており。イチゴはその光景を檸檬らしいと感服さえしてしまう。


「飲み込んでからでいいよ」


イチゴはあんまんを二口で完食しようとした女の子を見たのは初めてでありました。中学生になると檸檬の頬袋は強化されていたようで、イチゴの認識はどうやら甘かった様子。そんな檸檬は人生でそう何度も味わえないような食に出会えたならば一口を少量にして味わうことも選んだり、気まぐれに好物を味わって完食することがあるのですが、長い人生の間に何度か巡り合うことができそうな食ならば「基本的」に大口にてハイスピードで完食してしまう癖があり。その早食いの癖も満腹感を感じる前にどんどん食べてしまうダイエットには不向きな癖があるのでした。とはいえハムスターになっても許せてしまうのが檸檬の幸せオーラでもある。しかし食事制限をする中でいくつかの悪影響となる癖は改善すべきなのは明白であり、鬱陶しいと思われるくらいに周りが指摘していけば檸檬も見直すことはできるのやもしれない。


「心配させてしまいましたか? 先輩が心配するようなことは何一つありません。ただ、今まで先輩とはスケベなネタを取り扱ったことがなかったので、加減がわからなくなるだけです」


「のっけからフルスロットルなのに怖いもの知らずなの。檸檬の未来が心配になるよ・・・他の友人よりも少し上振れるくらいでいいと思いま〜す」


「先輩を相手どると全力でないと流されてしまいますからね。エロトークをスルーされたら泣きたくなりません?」


檸檬はなんともない理由にて暴走していたのでイチゴが心配することはありませんでした。たしかに中途半端に下品な会話をするならば初めからするなということにもなり。渾身の下ネタトークと思っていたら流されたら恥ずかしいだけ。それならばいっそ共倒れ覚悟でツッコまざるおえない120%の過剰なエロトークをしてみようとする檸檬の選択は「許してくれるイチゴ」に対しての解答としては正解の一つとなっていました。それでもボケにボケを重ねて長々と話していてはダメなジャンルの会話はあるわけで、そうした匙加減を檸檬はわかっていなかったようでイチゴの指摘で「適度」に改善してくれたら女学生でのスケベトークも二人の定番漫才になるのやもしれない。




 そうして後輩の不安が一つ解消してくれた所で、改めてイチゴは時間差によるツッコミをして嘆くことにしました。


「たしかに・・・ていうかワタシの肉まんが半分なのは何故!? 貴様の食い意地はそこまでなのか! このいやしいメスブタが!」


「豚はひどいです・・・中華まんもシェアするつもりなんです。先輩はあと何を半分食べたいですか?」


「うーん、カレーまんかな・・・全部シェアではないの?」


「等価交換です。焼き芋半分には中華まん一個で充分です。というわけでこの残しておいたあんまんは食べてしまいましょう♪」


「ワタシは檸檬の体重が心配になるよ・・・」


「んふっ♡ うまうま♡」


「奪う隙すら与えず、また一口デスカ・・・」


イチゴも全部を半分で分けるのならば納得はできましたが、悲しいことに半分ずつの中華まんを食べて足されたのは一個分でしか胃袋は満たされない。できることなら一口でもいいから全部を食したかったのですが、満足気に中華まんを頬張る檸檬を見ていると許してしまえるのが幸せをお裾分けできてしまう檸檬の魅力でもありました。これで檸檬が男性ならば料理を作ってあげれば美味しそうに食べてくれるので自分まで嬉しくなりそうだと、檸檬も女性にしておくのは惜しいとさえイチゴは思ってしまう。しかし女性であるからこそ「いっぱい食べる少女」としての愛くるしくて見守っていたいジャンルを確立してもいるので、それはそれでありだとイチゴは檸檬の暴食をこの日は見て見ぬフリをしてあげることにしました。


「先輩に志が低いと言ってごめんなさい。私も同じ穴のムジナでした。その代わり先輩の上に跨がりハッスルしてダイエットに励みますので、どうか見捨てないでください」


「この娘、完堕ちしているよ。芋食いながらエロトークをするとかどこの中学生だよ」


「冬は雪が積もり。夏は最高気温の一位を争うような東北地方に住む普通の女学生です」


「普通ってなに・・・?」


檸檬の言葉選びでイチゴはムジナを使ってくれたことに「おや?」と感じていた。同類という意味で使用したのだろうと意味は伝わっていたので流してあげましたが、一見して違うようなものなのかが引っかかり。一見して同類にしか見えない自分たちだろうとツッコむべきか迷うも、イチゴは博識ぶるつもりはなかったので檸檬の勢いを折るのも野暮だと聞き流していました。そんな檸檬はしっかりと残さず中華まんを平らげてしまい次に焼き芋に手を伸ばしていました。焼き芋はきっちりと半分にできていなかったようで、檸檬が後輩だから大きい方を譲ってほしいと上目遣いでお願いしましたが、これ以上の体重増加は許せないとイチゴは強引に大きい方にかぶりついてしまい。涙目で詰め寄った檸檬に小さい焼き芋を手渡したのですが、芋を食べ出したら怒りもなくなりこれまた天使は美味しそうに食べてくれました。そうして心も身体も暖まったこともあり再びのエロトークを始めてしまうのでした。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「放課後に幼馴染と公園のベンチで仲良く中華まんを食べながら談笑する。アオハルですね♡」


「内容の一部に異議ありですけどね! 放課後だけに闇しかないよ!? これでいいのかワタシたちの中学生最後の青春は・・・」


 中学生最後の青春はエロトークで盛り上がっていましたなんて誰にも語れない黒歴史でしかない。どうせ黒歴史が確定してしまうのならば「好奇心を満たしまくってしまえ」となれないのが二人の体型と「絶対に守る必要がある友情という絆」でもあり、過激な妄想を語り合ってはいるが実際にはその手前も手前のことすらしていない。


「思い出作りですか? ごめんなさい。流石に処女だけはもう少し待ってください」


「待ったところでナニもないし・・・この迷宮から抜け出せねえ・・・その内マジでオモチャで貫通工事をしてやろうか」


何を好き好んでぽっちゃりな親友の初モノを頂かないとならないのか。それこそ暴れ馬を大人しくさせるために痛い目にあわせてしまうのもアリかと考えながら、イチゴはどこまで遊びに付き合ってあげたものかと悩んでいました。


「先輩は可愛い後輩と何かしておきたいことがあるのですか? やり残したことがあるのなら協力しますよと、献身的な後輩をアピールします」


「あざといあざとい。でも買い食いしたから腕立て15回くらいはしておくかな」


「素直に檸檬が可愛いと言ってください♡」


(先輩がいつも素直になってくれたら私も、もっと可愛くできるのにな。あれ? 先輩に本気になっても意味がないのに・・・?)


「やっぱりウザイな・・・」


この日のイチゴの採点は高かったようで、可愛らしい自分がアピールできたと檸檬も満足していました。たとえ遊びであっても高く評価をしてくれるのは女性であれば嬉しくもあり。さらに照れくさくて「ここぞという時以外」は本心がうまく隠れるように語ろうとしてくるイチゴが、珍しく檸檬の最後の追い討ちにたじろいだ反応をしたのが印象的であり。「檸檬は可愛いよ」とシレッと真顔で語るイチゴは性格面ではカッコいいなと感じていた檸檬は、こそばゆそうにしているイチゴも可愛くて年相応にも感じて母性本能がくすぐられていました。こうして檸檬は自分の魅力が改めてイチゴに認めてもらったことで、嬉しくなって頬が緩んでしまうとエロトークはこれまでにして二人は微笑みながら健全な内容で談笑することに切り替えて、焼き芋を完食しきり腹は充分に満たされました。

――

――

――


 充分すぎるくらい腹ごしらえをしてしまった二人は放課後デートのコースを変更して、もう少し長く歩き続けることにしました。こうした野外での運動も雪が降り積もってしまえばできなくなるので、二人は雪が本格的に降り出したら運動も屋内がメインとなってしまう前にこうして野外散歩を「運動」抜きの面でも「談笑できる場所はどこでもいいと」楽しみにしていた。


 かくして腹が満たされるとダイエット失敗の不安が増したのか心なしか足取りも軽快であり、なんとか損失を取り戻そうと頑張っていました。そうしている内に話題は先程の会話に戻り、イチゴが中学生最後の冬の間にしておきたいことに話が向かってくれました。


「特にしたいこともないけどな。今でも充分に楽しいよ」


「それは可愛い後輩と一緒に居られるだけで幸せだから、他は何も望まないということですね。先輩はどんだけ私を愛しているのですか? ゾッコンじゃないですか」


「まあね、実際に檸檬以外と連む気にもならないし。檸檬と二人だけでも中学生活は退屈せずに楽しかったよ。これまで一緒に居てくれてありがとう」


「うぐっ・・・先輩のそういう真面目になるところはズルいです・・・」


「ん?」


(普段は照れくさくて本音を隠すくせに、ここ一番では真剣になってくれる・・・先輩はイケメンですよ。痩せたら釣り合わないとか、また考えちゃうのかなぁ。でも、先輩は親友として気にせず隣にいろと言ってくれるので、私の方が実はゾッコンなんですよ♡)


「別れ話みたいに言わないでください。高校に進学しても沢山迷惑をかけますからね!」


「迷惑なんて思ってないと言っているでしょう。好きだから一緒にいたいんだよ」


イチゴは選択を間違えないようにする冷静な性格でもあるので、茶化したり本音を隠して意図が伝わらなくなることも避けて、本心からの直球を檸檬に投げてくれることがありました。それが檸檬からしたらイチゴを特別だと思う理由なのですが、今は萌え罰という取り決めの最中なのでイチゴの自然体での本気の口説き文句を聞いてしまうと、檸檬は自己評価で「最高得点」を連発するしかないのでした。


「もう、先輩のばか。私にどんだけ運動をさせたいんですか! フルマラソンをさせるおつもりですか?」


「ええ・・・普通にしていただけなのに。ダイエットになるから別に問題もなくない?」


「うわーん、このままだと返済が追いつかなくなり、先輩に身体を売ることになるぅ。処女どころかお尻まで開発されるぅ」


「ばっか、大声でワタシを犯罪者にするな」


「中学生同士の健全な付き合いなら合法です」


「アブノーマルなことを言っていたよね!? 尻ネタも何処で仕入れたの? マジでコレクション置き場に鍵が必要になるぞ・・・」


実際に手を出す気持ちもなければ問題にはならないはず。しかし一度間違いが起こると好奇心に負けてズブズブと深入りしてしまいそう。イチゴは分別だけはしっかりとしながら後輩を牽制しようと誓いました。そんなこともあり萌え罰と散歩デートで、ようやく体重の僅かな減少が確認され出した二人でしたが、買い食いもあり減少は微差の範囲に収まる。つまり悲しいことに中学生時代には体重の減少はそう起こらないままイチゴは進学することになるのが「今日」の誘惑に負けた一例で「反省」できるのかが鍵を握っていました。

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