イチゴと檸檬の幼少時【小学生高学年】
小学生になると横のつながりが強固になり、同級生と遊ぶのが増えて年齢が上下する繋がりが少しずつ希薄になってくるのが学校の不思議なコミュニティでした。低学年だとそれも顕著で年上の学年と接するのは世話係としての社会性協調生などの勉強で接してくれる機会以外にはなかなか身体が大きく価値観も違う上級生とは積極的に交わろうとは考えつかないことで、これが上級生同士になるとクラブ活動や委員会活動などが始まり縦の繋がりが始まり出すことで、上下関係を含めた学びが始まるのでした。
そうした中でも檸檬はイチゴという上級生になる繋がりをずっと低学年の内から続けていて、初めこそ初対面だからと年齢も関係なく緊張していましたが、高学年同士になった今は年齢差も感じない大親友となって遠慮なく接している間柄でした。それでもそれはイチゴと檸檬が幼馴染になれたから特別なだけであって、檸檬とてイチゴ以外の上級生には人懐っこく接してはいけない緊張感はあるのでした。
「レモンちゃん、ちゅー学生になったら上級生はセンパイと呼ばないといけないんだって!」
「せんぱい?」
「先輩だよ! 知らないの?」
「言葉の意味は知っているけど・・・中学校にそんなルールはあったかな?」
「上下関係が厳しいみたい! 怖い先輩がいたらどうしよう」
「そうだね〜」
檸檬が仲良しなクラスメイトと話していると耳慣れない中学校のルールが登場してくれて、檸檬はイマイチしっくりきていませんが話に合わせることにしました。それもこれもイチゴを呼ぶ時は「イチゴちゃん」と昔から檸檬は言い続けてきたので、中学校に進学したら「イチゴ先輩」と呼び方を変えなくてはならないのかと疑問しかない。それこそイチゴは型にはまることを嫌い「自分たちの理想」を求めてくれる人なので、周りがイチゴ先輩と呼ばないと変だと忠告されても「ワタシが許したから外野は黙りなさい」と宣言してくれる人なので、檸檬はイチゴに「先輩呼び」を強要されない限りは呼称を変更するつもりはないのでした。
「レモンちゃんは幼馴染のパイセンがいるよね! 優しくてカッコよくていいな!」
「ぱっ・・・ぱいせん・・・? うん、イチゴちゃんは大親友だよ」
(先輩か・・・ちょっと青春ぽくていい響き?)
考えてみればイチゴは自分を「檸檬」と呼び捨てにして年上アピールをしてくれて、それに関しては姉御肌なイチゴに満足していたので檸檬はそのまま呼び捨てを受け入れていました。そうしてこの度、クラスメイトと中学生に対する憧憬などを話し合っていた中で「呼称変化」に対する話題に触れて、檸檬は一つイチゴに対しての気持ちの変化があったので改めて呼び名を継続してゆくか考えることにしました。
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イチゴが自分が思っている以上に自分との繋がりを特別にしてくれていた。それを檸檬は知ってからというもの、さらにイチゴが大好きになり。それと同時にイチゴの優しさという包容力に敬愛の気持ちも抱くことになりました。すると檸檬はイチゴに心配されないように良い意味で頑張り、学んだ知識から他人に同調していくスキルを磨いてゆき。波風立たせないような丁寧な言葉遣いをなるべく心がけて、過去のイチゴの喧嘩のようにはならないような平和解決の糸口になる物腰が柔らかで悪意を呼び込まない事前対策のための技術を身につけ出していました。
そうして年上の人に対する接し方を学んできた檸檬はイチゴだけは例外でしたが、そのイチゴに対しても特別な中でも敬う気持ちを伝えるように、一つの提案をするに至りました。
「イチゴちゃん」
「ん?」
「イチゴちゃんを先輩と呼んでもいいかな?」
「およ? いきなりどした?」
「うーん、私ももう少ししたら中学生のお姉さんになるし、心変わりみたいな?」
「ふむ・・・ナハハ! ついに檸檬もワタシを敬いたくなりましたか。いいでしょう。好きに呼んでくれたまえ」
「やっぱり、ベリ娘にしようかな・・・」
「その渾名だけはやめろん!」
きっかけは同級生との会話で、檸檬は今日から敬愛も込めてイチゴを「先輩」と呼ぶことにしました。しかしこの先輩呼びは上級生を呼びやすくしたものではなく、渾名と似たような意味合いで「イチゴにだけ特別に贈る」檸檬の大切な気持ちでありました。そこで檸檬は実際に中学生になったら上級生のみなを「先輩」呼びにしなくてはならないのか知りませんが、イチゴ以外は「先輩」呼びの前に名前も加えることでイチゴとの差別化を計り。イチゴだけが特別な存在であることを遠回しに伝えることにしました。つまり、小学生の現在はまだあまりその差別化の意図はイチゴには伝わっていなく、イチゴと檸檬が中学生になってから「おや、おかしいぞ」とイチゴが気づくまでは単純に檸檬が年上に対してのリスペクトをしていただけと誤解してしまい。やっぱり「檸檬は可愛い妹だ」と判明するのはもう少し先のことになるのでした。
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