付き合いましょう 2話【中3 冬】

(これだからリアルは難敵なんだよ。二次元の世界なら幸せなままでいられるのに・・・檸檬がぽっちゃりでなくなれば正ヒロインになるのは認めるけど、ワタシがそれを攻略するのは違うでしょう。うん、冗談に真面目に答えたら恥ずかしいだけだよ。きっと、ワタシの卒業が近いから寂しくて歯車をかけ違えたに違いない。小学校の時もワンワン泣いてくれたしね。まったく、姉離れができない可愛い妹だよ檸檬は♪)


 イチゴはリアルでも美少女ならどんとこいな百合好きでもありつつ、男性との交際も少女ながら夢みるような二刀流でありました。イチゴにも理想の人と付き合いたいという願望があり、妥協しすぎた交際はしたくないというプライドもある。しかし自分を選ぶ人が少ないことも理解できているので、慕ってきた人をすぐにポイと捨ててしまうような他人を傷つけるような拒絶の仕方はしない。つまり気の知れた檸檬であるからこそ、バッサリでサバサバと解決するのが幼馴染として付き合ってゆくには求められることのはず。幼馴染として大切な繋がりだからこそ中途半端な気持ちでは向き合えないのが優しさと受け止めてほしいとイチゴは理由をつけながら、実際は「本気ではないのでしょう?」と真実が知りたくてモヤモヤとしていました。


「いいから付き合ってくださいよ〜 交際歴ゼロを卒業させるだけでいいですから〜♡ こんなに可愛い妹がアピールしているのに靡かないなんてありえな〜い♡」


「でたな本音! ていうか、その相手がワタシでいいのか・・・檸檬なら普通に選べるでしょうに」


「何処を見て言ってます?」


(中学生で身体のお付き合いはしたくないです・・・先輩となら楽しいだけで過ごせるのに、手強いなぁ)


「ん? 顔と性格だけと?」


「そうでひゅか・・・」


「なんで動揺したのさ・・・」


(私だから騙されないけど、先輩は普段からしれっと目の前の女の子を口説いていますよ?)


イチゴは見た目が残念になってしまいましたが、見た目以外にもモテる要素があったので過去にはチヤホヤされる時期がありました。それを沢山もらえてきたのが檸檬であり、恋愛感情を抜きにしてでもイチゴは歯の浮くような台詞を檸檬に冗談抜きに真剣に投げかけてくれるので「実におしい」と檸檬が可哀想になるくらいに性格面でのイケメン力を発揮できる中学生でした。中にはエロゲの交流知識をそのまま応用してしまうこともありましたが、今回のように「自分の中の事実」に関してはイチゴはスラスラと自然体に言葉にしてしまえて、檸檬が恥じらってしまうような「檸檬が可愛いのはとうぜん」で自分よりもモテるのだから相手を選びなさいとする姉御肌を発揮して、悔しくも檸檬は「胸がキュン」と少しだけときめいてしまうのでした。


「先輩となら幼馴染という名称が変わっても楽しくできますし。なにかと後輩の私を気遣ってもくれますし、そんな私になら理性を失くしてエロ展開にもならなずに、興味があることだけ摘み食いして恋愛を知るきっかけにもなるのかなって」


「だからって幼馴染をやめる必要はないでしょうに・・・」


「そこまでガチではないですよ〜 ただ、遊びも真剣にとありますし、多少は演技でも本気になった方がリアルな体験ができて楽しめそうですよね?」


「まあ、そうなのかな・・・? いや、いいのかこんな青春で!?」


「青春を怠惰に過ごしてきた人に心配されることではありません。あっ、でも檸檬ちゃんが本気になったら先輩は我慢できずに追い剥ぎになる? 中学生に初めての分娩室を体験させるなんて、先輩も刺激的な青春を欲していたのですね。三人の未来のために檸檬ちゃんはママとして頑張らないと♡」


「ワタシを誰彼かまわず襲う性獣みたいに言うなバカチン」


「愛人を作らないのはとうぜんですね」


「貴様を選ぶ未来があると思うなよ!? 幼馴染の立場を利用してスケベ心を満たすとか、それは破局への前触れだぞ・・・」


この際後輩が百合の道に踏み出してくれても驚きはするが止めはしない。しかしどうして自分が選ばれるのか理解に苦しみ、都合がいいのは理解ができますが真剣な恋愛を未来に目指すならば「碓氷イチゴ」は悪影響も与えかねないので天使の囁きが「頼むから別の人を選びなさい」とイチゴに忠告していた。さらに檸檬は普通にノンケでイケメン好きだとも知っていました。仮に過去のイチゴのまま美少女中学生になっていればこの場の解答は「キミはセンスがいいね」と高笑いして、やはり幼馴染のままでいようとイチゴは答えたのだろう。それこそイチゴは檸檬の愛らしさならば「ぽっちゃり」も相殺して受け入れてくれる「仮初でない彼氏」が得られるとも考えていて、しかし実際に妹に恋人ができたら自分が寂しくて嫉妬してしまうのかなとも考えている。なによりエロゲをしているからこそ異性に向けられている卑しい感情には敏感で、檸檬の発育がいい身体が早くも蹂躙されたら「姉の自分が出遅れてしまう」という危機感を抱いてもいました。そうなると互いを利用し合うのも一つの手ではありましたが、ここは幼馴染の突拍子もない思いつきを正しい恋愛の手引きをしてあげる方が歳上としての務めだろうと、イチゴは自分よりも選べるはずの檸檬に「健全な交際をできる奥手な男子生徒」を是非に勧めたく考えました。


「またまた、エロゲをしこたま買い占める中学生のくせに今更紳士ぶらないでください。夜な夜な幼馴染のヒロインで妄想して下半身をカチカチにさせて白濁した液体をピュッピュしてますよね?」


「心に男性器が巣食っていますが、理性はあるからね!? それにしてもぽっちゃり女子同士がゆりゆりするとかないわぁ。全然尊くない。最近の檸檬はオトナの言葉を覚えて使いたがる困った女の子になってくれたよ・・・」


「それって私と先輩が痩せていたら萌えるということですよね? 先輩は自分でも興奮できるんですね。キモチがワルイデス」


「その若干引いた目はやめてください。マジでヘコみます」


冗談を切り出したり貶してみたり、後輩のしたいことが理解できない。ある意味後輩から茶化されて切り返すのは普段のイチゴの日常でもありましたが、ぽっちゃりやアダルトな趣味を話題に取り上げられてしまうのはコンプレックスを冷やかされているようにも感じてしまい楽しい時間とは言い難いものとなっていました。さらに檸檬は体型に関して冷やかされたことで塞ぎ込んだ過去があるだけに、イチゴがそろそろ冗談も過ぎるぞと忠告すればピタリとやめてくれるお利口さんでもあるはずでしたが、今日はいつになくイチゴを弄んでくれるので「普段の檸檬ではない」とイチゴも確信できました。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 イチゴは家族の一員を支えるように幼馴染を気遣うことが多く、それが理由で檸檬はイチゴを特別に慕い二人は親友として交流が続いていた。それがイチゴの卒業後を機におかしくなってしまう。確かに高校生ともなれば時間の束縛は増して檸檬とは疎遠になってしまう時間が増してしまうのでしょうが、それをきっかけに完全に断絶してしまうのだろうかと嘆いて檸檬の不安を煽ったこともない。それでも出会いがあれば別れもあるわけですし、檸檬が失いたくないと思っていても相手が同じ気持ちをずっと抱いてくれるとは限らないとして不安になる気持ちもイチゴは理解できました。そうした檸檬の隠された不安をイチゴはこれまでの経験から察してくれて、必要だと思う解答を今度は導き出そうと思考を巡らせながら檸檬の「遊び」に満足するまで付き合ってあげる妹思いの姉を演じてくれました。


「そもそも百合カップルを選んだ理由は他にあるよね。隠さずに言いなさい」


「さすが先輩です。私の隅々まで理解してくださっています♡」


「悪い意味でもね・・・」


イチゴとしては後輩のあざとい仕草を頭にくる時もあり、これが容姿を伴わないあざとさなら可愛くも思わず手をあげていたのかもしれない。しかし檸檬はお世辞抜きに可愛いヤツだとイチゴは認めている。自分にはないぽっちゃりながらも可愛くあり続ける檸檬の容姿に嫉妬もして、それでもイチゴはエロゲで肥えた目をもち檸檬を恋愛対象にはしてこなかった。それはきっと檸檬が痩せて美少女になったとしても考えは変わらず明るくて愉快な。それでいて寂しがり屋の泣き虫なかまってちゃんの小悪魔でもある愛してやまない妹。それがイチゴの高校生になっても「失いたくない」と思っている繋がりで、檸檬に伝える必要がある優しさでもありました。


(その小悪魔じみた可愛い仕草を男どもに向ければモテるのに。男性恐怖症にまではなっていなかったはずなのに、どうしてワタシにべったりなんだろう?)


イチゴに注目されたい。笑ってほしい。優しくしてほしい。愛情がほしい。そうした気持ちが隠せないで檸檬はあざとく今も甘えた声でぶりっ子をしてみてもイチゴは恋愛面では靡くことはない。とはいえ姉としては充分すぎるくらいに束縛されてもしまい「過保護」なまでにイチゴは檸檬を守り支えることがあり、甘やかすから檸檬は「さらに」イチゴにくっついて離れないようにするのを当人たちは俯瞰的には見ることが叶わず「ぽっちゃりで出会いがないから交際歴ゼロのまま」だと導き出すのでした。そんなわけでイチゴが檸檬を好きになった理由が単純であるように、檸檬も似たようなきっかけがあるのに「どうして男性には興味を強く抱かなかったのか」と過去のトラウマは乗り越えたはずなのに異性愛に辿り着けていないのは「やはりぽっちゃりが原因だろう」と行きつき。自分が餌付けに加担していたのを反省しながらも、甘やかすのはやめられないと棚に上げて、イチゴはダイエットをこれまで突きつけることはせずに「しっぺがえし」で自分も巻き込まれてしまわないように「痩せよう」という合言葉はタブーとしてきました。それはきっと檸檬の両親も似たような感情があり、あれだけ美味しそうに食事ができてしまうと静止させる方も苦しいとは理解できてしまう。ただし、今回ばかりは明日を変えていかなければと檸檬は立ち上がってくれました。




「実はですね・・・カップルになり、互いに綺麗になるべくプロデュースし合う。そうして綺麗な身体を手にして本当のモテ女子になろうと計画していまして」


「それって一人ではダイエットが辛いからワタシも巻き込もうとしているだけだよね?」


「恋人がいれば頑張れる作戦ですよ!」


「なんだそりゃ・・・」


 つまるところ両親の最後通告を受けた檸檬はダイエットだけは絶対条件なのでやり抜くつもりである。しかし一人では根気が続かないのでイチゴを巻き込んだ上で、檸檬らしく面白く着色してしまい百合カップルとなり楽しくダイエットをしていこうとする作戦でした。


「一人なら辛くても二人なら楽しくできますし、おまけに痩せられる。素晴らしいと思いませんか?」


「あほらし。そんな上手くいきますか」


イチゴはなんとも馬鹿らしい考え方に呆れてしまい付き合うつもりはありませんでした。しかし檸檬は本気でそれを提案してもいて、わざわざイチゴが触れてほしくないような秘密まで持ち出しているくらいなので、最後はそれを脅しのネタにする前振りかもしれなく、相当な覚悟をしているようでした。


「先輩、私をバカにしていません?」


「貴様には揚げ物を断ち、米や麺を控えて、甘味を断つ勇気があるというのか! アイラブミート精神はどうした!」


「運動しましょう。まずは歩いたりストレッチからですよ!」


「断る! 運動するくらいならアイスを一日断つ方がマシだ」


檸檬は食事を断つことが難しいために運動量と質を改善する事でダイエットを始めるつもりでいました。それぞれ適したダイエット方法があるのかもしれませんが、運動が疎かになっているイチゴには実に効果的な方法かつ健康的でもある。しかし檸檬がジャンクな食べ物で小腹を満たす回数が減らずに体重が減らせないように、イチゴも運動が大嫌いであるので二人の意見は食い違ってしまう。もし同じ行動でダイエットを楽しもうと計画しているのなら、どちらかの意見を尊重するか、新しい手段を見つけることにもなりますが、そもそもイチゴがそれを許可することが見込めない。だからこそ檸檬は強引にでも引き摺り下ろすつもりでいたのでした。


「先輩は運動しないで痩せられると思っているのですか? バカですか? 脳まで脂肪ですか? 一人エッチのし過ぎですよ?」


「そこまで馬鹿にするなよ・・・ていうかワタシがスケベなのは関係ないだろう!」


「ありますよ。先輩は秘め事は汗も流せるくらいの運動だからとクチュクチュばかりして外に出ないんです。中毒なんですね可哀そうに・・・」


「勝手に不憫な扱いにしてくれるな。なんだよ・・・エロゲくらい自由にさせろよ」


「中学生が自由にするのはおかしいです」


「ダー! 話がおかしくなってる!」


「そうでした。先輩が20キロ痩せる話でした」


「え? 20キロ痩せるの? むりむり」


こうして話が蛇足することも含めてイチゴとしたら後輩とのやり取りは楽しくもあり、エロゲのように色褪せた日常に刺激を与えてくれる存在として後輩の存在はとても大きく卒業後でも必要としている。そのためイチゴは自分が卒業してからも檸檬とは交流してゆくつもりであり、遊ぶにしても先輩として学業を手助けするにしても、気軽に放課後に会う約束をしてくれてもよい。しかし自分から誘うのは照れくさいので、できることなら檸檬からグイグイ来てくれた方が「やれやれ」と照れ隠しができるので助かる。ただし、この檸檬という後輩は一癖もある後輩でもあるだけに、刺激が強すぎることもあるのが困りもの。ただそれも加味しても残念な娘ほど可愛らしいと、イチゴも年下のかまって上手な親友として檸檬を慕っていました。それが檸檬の突拍子もない提案から「変化」を新たに生み出してしまうのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る