氷川檸檬

 氷川檸檬はお調子者で明るい性格をしている。その元を辿れば檸檬の母親が子供に合わせて笑いを提供してくれるような明るくて茶目っ気がある人であり、その明るい家庭にしようとする母親からの愛情を受けて育った娘の檸檬も明るく振る舞えば家族みなが笑って過ごせるのが楽しくて、そうした子供の誰しもが抱くような「団欒を求めた行動をして結果が理想的になれば幸せになれる」注目をあびたいかまってちゃんの元気な少女でありました。


 さらに容姿と雰囲気はゆるふわ系の低身長で発育も良好な可愛らしい女生徒であると自覚しており、幼馴染のイチゴにも「照れ隠しも忘れた」と「可愛さ」だけならば完全敗北を認めさせるくらいに愛らしい容姿をしていました。明るくて愛らしい容姿に添えるのが、昔から笑顔になることが習慣で育つ事で得られた「他者」まで笑い出したくなるような笑顔を伝染させてしまうアピール力を持った魔法のスマイル。それだけでも異性からモテそうなのに、これまで一度も「自分の見たて」では異性からモテずに中学生活二年目に突入しているのが檸檬の心残りでもありました。


 そのモテずにいる理由は檸檬が小学生時代に近所付き合いから仲良くなった、一学年先輩となるイチゴと同じく「自称ぽっちゃり系」を、なんと小学生時代から獲得していたからでした。檸檬は運動離れをして基礎体力などが著しく低下したイチゴとは違い、昔から体重に負けない運動神経がある女の子でした。肥えるのが早かったことも影響しているのか体重が増した身体に適応しており、運動ができることで周りからの劣等感を受け取らないようにしていた。「ぽっちゃりがコンプレックス」とならないようにする努力のおかげで、多少は冷ややかな視線も回避して檸檬は運動できる系のぽっちゃりとしての地位を確立していました。




○肥満体質になる経緯

 肥満になるには様々な要因があり、体質も大きく関係して檸檬は子供の頃の太りやすくもなる体質と、そもそも食べたら食べた量がそのまま肉になってしまいやすい体質の太ましくなりやすい星に生まれた女の子でした。しかし食べた量が多くても運動さえしていれば相殺されるはずで、檸檬は運動が嫌いではなくむしろ前向きな考え方を実行に移せる女の子で、そうまで肥える要素はないはずでした。ただし、別の要因がなくても「たった一つ」の要因が檸檬をぽっちゃりに創り上げてしまうに至る。それが小さな身体に不釣り合いなまでの食に対する暴力的な欲求でした。


 檸檬は食べることが何よりも至福の時間であるために自身はその名を恥じてはいますが「暴食」という渾名が定着するくらいに大食漢でした。しかしその名を返上してまで食べる欲求は捨てられずに、半ば茶化されることもやむなしと諦めて暴食をやめようとはしませんでした。


 強靭な胃袋を初めから檸檬は持っていたわけではなく、長年の鍛錬にてそれは完成していた。事の発端はずっと幼い頃に両親が好き嫌いせずに何でもペロリと美味しそうに平らげてくれる娘を褒めたことが嬉しくて、両親にもっと褒めてもらいたいとご飯を沢山食べるようになったのがきっかけである。苦手な食べ物がないことは良きことに違いない。さらに幸せそうに食事ができるのも団欒を演出するには理想的で料理もまた美味しく感じるアクセントになる。そうして両親からそれを褒められてしまうと、子供心に火がつき「もっと褒めて欲しいから沢山食べる」と思うのもごく自然な流れになり、檸檬は親が止めてくれるまでひたすら「美味しく食べられる限界」まで食べてしまう女の子になり、どんどん胃袋が鍛えられて、ひいてはギリギリまで食べなくては満足できないような暴飲暴食に疎くなる危ない身体を手にしてしまったのでした。


 両親も日に日に肥えだした檸檬に始めこそ食べ盛りな成長中ならば「このくらいならば」と油断していて、しかし制限なく体重が増していた娘を心配しだした頃からは食事制限や運動を心掛けるように呼びかている。檸檬はその頃からグラトニーという渾名と動けるぽっちゃりを両立することになるのでした。しかしそれでもまだ体重が増してしまい両親を悩ませていたのが、檸檬の「隠れた優しさ」が完全なる肥満体質を得てしまうまでに体重が増してしまう「決め手」となりました。




○暴食を我慢できなかった理由

 檸檬には姉弟仲の良い弟がいました。弟は姉と歳が離れていることもあり、姉からは可愛い弟だとよく面倒を見てもらうことで、弟もそんな愛してくれる姉を慕いながら家族ながらとても仲良しな姉弟である。そうした弟は幼少時は身体が弱く病に伏せる体質であり、姉とは違い好き嫌いが多くて「両親は健康な身体を作るために少しでも栄養を考えた食事」だとして嫌いな食べ物でも「元気のため」だからと「頑張る」ことを「強要しない程度」に希望していました。そんな親心は幼き少年には全ては伝わらないので、料理を泣きながらも食べている姿が「幸せそうに食べている」檸檬には可哀想に写っていました。檸檬の世界では笑顔しかない食卓しかありえなく、苦痛を感じながら食事をしている弟を見ていると檸檬がしてきたことが反対の意味で、弟から負の感情が伝染してきて食事が美味しく食べられなくなりそうでした。すると檸檬は子供の悪知恵が働き、両親の目をこっそり忍んで弟に出された嫌いな料理を食べてあげるお節介な姉としての優しさをしてしまったのでした。


 自分に出された「腹八分」に制限した大盛りの料理に、弟の料理までつまみ食いしては両親の見積は崩壊してしまうのもやむなし。さらに優しい姉を慕う弟は好物であるお菓子などの間食を、優しくしてくれる大好きな姉にお礼だからと「半分こ」にして分けて、自分の好物が大好きな人と分け合えることが幸せだと子供ながらに行き着いていました。そうして暴食が繰り返してゆくと檸檬は見事に肥えてしまい。両親はしっかりと檸檬が運動もしていたことを知っていただけに不思議に感じつつ、食事制限を引き続き無理なく制限を増やしながら管理し始めていたのでした。




○イチゴとの関係

 暴食が日常となっていた檸檬は我慢することがストレスにもなり、その結果両親の食事管理も意味のない買い食いをしてもいて間食がやめられずにいました。その買い食いの楽しさも教えてくれたのが「イチゴ」でありました。


 子供に限らず一人で新しい試みをしようとすれば不安で足踏みをしてしまいますが、二人三人と同じ行動をしてくれる人がいて、さらにそれが気の合う仲間なら恐るものがなくなり檸檬はお小遣いを買い食いへと浪費しやすい女の子になってしまいました。しかし幼少時の百円が高価であると感じるように、檸檬も一般家庭としてのお小遣いしか得ていなく毎日をイチゴと買い食いできてしまうくらいには財布に余裕がない普通な財政事情でした。その反面イチゴは裕福な家庭に生まれていたので、檸檬が羨ましがる程にお小遣いが多いお姉ちゃんである。しかし多いとはいっても一般的な子供の世界での感覚からは離れていない。駄菓子屋に向かう回数が増えて、その時に買える量や質が増した程度。ただそれが子供の世界では憧れるのだ。


 イチゴは自分だけ特別を自慢する女の子ではなかったようで、それこそ「幸せをお裾分けして共有」することができる優しい姉でありました。しかし誰彼構わず優しくしていたわけではなく、「特別」に慕う妹の檸檬を甘やかして「こっそり」と檸檬にだけ自らのお小遣いで購入した菓子やアイスなどを二人分用意して、檸檬の嬉しそうな表情を観察しながら自分も大好物を食べる時間が至福の時間となっていました。


 そうした多方面からの胃袋へのアタックが運動だけでは体重が減らなくなる原因にもなっている。これを改善しないことには檸檬は変われないのでしたが、変わってまで食事を制限したい理由が見当たらずに肥えてばかりいました。なぜならば檸檬は小学生時代までは恋愛よりも「食」一筋であり、唯一繋がりを失いたくないのが「大好きなイチゴ」との関係でしたが、そのイチゴもぽっちゃりな檸檬を受け入れていたばかりか肥やしてしまうくらいに可愛がってくれているので、檸檬は過度なまでのダイエットに興味を示していませんでした。


 しかし、転機が訪れたのも小学生時代でした。太っていることを自覚していて、それを改善できない意志の弱さが原因だからと茶化されて恥ずかしい渾名を命名されてしまうのも受け止めていた檸檬でしたが、そんな意地悪にもなる状況をおもしろ可笑しく笑い飛ばせるくらいにはメンタルは強くもない。嫌だと感じながらも流すことで耐えられるからと聞き流していた檸檬でしたが、ある時大好きな人の前で「男みたいなオンナと、ぽちゃ娘が付き合っているぞ」とクラスメイトの悪餓鬼から茶化されたことが耐えられないくらいに悲しくなり。自分の体型を茶化されたことよりも「イチゴの隣にいるのが不釣り合い」のようなニュアンスを含んだ心無い言葉が檸檬が「太っているのは悪」なのかと考えてしまうきっかけを生み出していました。


 イチゴからしたら檸檬は家族以上に大切な人になっていた。その守る対象を泣かした悪餓鬼は悪でしかなく。その一件以来イチゴも檸檬も幼稚な同級生などには興味を示さなくなって恋愛よりも、大好きな理解がある仲間内にだけ交流をしていたために恋愛からは遠ざかっていたのでした。そしてイチゴは檸檬を泣かせたクラスメイトを撃退した上で、気持ちが塞ぎかけた妹を不器用ながら励ましていたので、檸檬は明るい性格を失わずに今まで以上にイチゴを慕うようになりました。


 檸檬にとったらイチゴは大好きな姉で、その頼り甲斐がある背中に惚れ込み信頼と敬愛までして、その一件以来から檸檬はイチゴを幼馴染としてだけでなく敬う歳上の人としても接するようになるくらいに、イチゴとの繋がりは特別なものに変わっていました。もはやその慕う気持ちは「依存」にまで届いてしまい、イチゴに遅れること一年で同じ中学校に入学すると、先輩が所属していた将棋部に入部してしまい、運動する機会を一つ減らしてしまったのでした。




○檸檬の生活習慣やプロフィール

 檸檬は運動は好きでもあるので飼い犬を連れ出しては散歩をして運動を繰り返している。とはいえ年齢を重ねるごとに大自然で無邪気に走り回るような遊びをイチゴとしなくなっていたばかりか、そのイチゴもインドア派となってしまったことで檸檬までイチゴに合わせようとするあまり、結果として学内の体育や犬の散歩くらいしか運動はしておらずに、両親に心配されて定期的に「外で運動がてら遊んできなさい」と言われて不満げなイチゴを誘っては外で遊び。親には内緒でイチゴと買い食いをしているのが幸せな日常となっていた。それでも運動自体を嫌っているわけではないので、きっかけさえあれば檸檬も積極的にはなれますが、檸檬の世界はイチゴと一緒に回るように形成されてしまった後なので、その依存体質によって檸檬は自分のダイエットよりもイチゴと楽しく過ごせることばかり優先して、周りから嫌な思いをされてしまっても「勇気」をイチゴから過去にもらったので耐えられるからと優先順位が残念ともなっている。


 そうしたイチゴ至上主義を上手く利用していけば檸檬も痩せる手立てが見いだせそうでしたが、イチゴが妹を甘やかす性格でもあってか「出会ったタイミングがぽっちゃりなら、そのままの檸檬でいい」として痩せた檸檬を「見てみたい」といった檸檬がダイエットを頑張れる魔法の言葉を発してもくれない。さらに檸檬も一時期は冷やかしを受けて痩せることを検討しましたが、そこでイチゴが「そのままの檸檬が大好きだよ」と投げかけられてしまえば「いっぱい食べるキミが好き」を実演していくだけだとした。こうした親に嫌いな食べ物がなくて褒められて嬉しかった記憶のように、イチゴにも遠慮をする必要がないとして自然体な自分であり続けてしまう。その結果として増えていた体重は「家庭内」の食事制限でストップするも、減少傾向に向かうまでの運動はできず。いつしか小腹を満たす機会もできて、それを今になっても継続していたので「ぽっちゃり維持」に現状は停滞していました。


 イチゴとは中学生に進学してからはぽっちゃり仲間となる。カッコいいお姉ちゃんを檸檬は好いていましたが、同時にイチゴまで仲間になってくれたことで「似たもの同士」ならば「相応しくない」と周りから不釣り合いに関した視線を向けられなくなったことに対しては安堵してもいました。しかし仲間意識が芽生えたからこそイチゴと比較したくなるのが自分の肥満度レベルであり、檸檬は身長だけは発育不充分で身長順に並ぶと毎年のように先頭争いを繰り広げる低身長でした。こうした理由も「チビなのに視界を遮るな」と悪餓鬼から茶化される餌食にされていたのでしょうが、さらにイチゴと比較すると年齢差以上に長身なイチゴに迫る体重をしていたので単純に比較すれば檸檬は危険な体重でもありました。


 肥えても健康でいられるには個人差や生活習慣によって限界点が上下しますが、檸檬もこのままではいけないのかなとは常々感じていた。そこにきて家族からついに身を案じて強くダイエットを希望されてしまえば、全集中で取り組むことを決意するしかなく。さらに覚悟を後押ししたのが中学生になってから「さらに増した恋バナと、実際に男女交際を始めたという実話」が、檸檬が忘れていた恋に関する好奇心を呼び起こしてくれて、自分も痩せたら美少女になることは約束されているので「顔よし、性格よしのイケメン」を誘惑して恋愛を体験する青春もしてみようかと、恋に恋する乙女な感覚と呆れてしまうくらいの自信を携えて自称「ダイヤの原石もち」の檸檬はパートナーを巻き込んだダイエット計画を捻り出してしまう。かくして寂しがりやな檸檬は一人では心細いので、面白い計画を携えて慕う先輩へと這い寄るのでした。

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