【萌え罰】先輩、利用していたつもりでしたが本気になってもいいですか?【女子校生百合】
ももきちすもも
碓氷イチゴ
碓氷イチゴという名の中学三年の女生徒は将棋部の部長をしていた。別段彼女は将棋が強かったわけではないし、興味があったわけでもない。ただ駒の動かし方を知っていたのと、部活動が入部義務であったので、なるべく帰宅部に近いような活動日数だけでも教師が甘く見逃してくれる部活にと考えた結果、「将棋部」へとたどり着いた。
将棋部は中学生の青春を何処か冷めた感情で遠目に眺めているイチゴにとって都合がいい場所でもあり、怠惰を満喫する意味では憩いの時間にもなっていました。イチゴが一年時に廃部寸前であった将棋部を見つけるとロンリーガールを拗らせた自分にはうってつけだと入部をすぐさま決めてしまい、結果として将棋部はイチゴの入部で存続危機の状態を綱渡り状態で継続できることになる。
幽霊部員が多い将棋部で真面目なのかはさておき、実際に活動記録があるのはごく少数でその意味ではイチゴは「部員」と呼べる活動だけはして教師からいらぬ忠告をされないように「週に一回」の活動だけはするようにしている。それを誰からも五十歩百で不真面目だと活動日数を増やすように指摘されないまま、部活動に対しては「やる気」が見出せない女子校生がイチゴでありました。
イチゴは少ない活動でも教師に口煩く「青春を謳歌しろ」と言われないことを良しとして、これ幸いと入部を決意して面倒なので週一回の月曜日限定の部活動を繰り返していた。勧誘活動も親善試合も大会出場記録もないまま月日が流れて、二学年に進級した時には幽霊部員を除けばとうとう先輩も同期もいなくなり、晴れて部長に自動任命される。しかし、どういうわけか将棋の駒の動かし方すら知らない初心者の女子下級生が一人だけ「部長目当て」に入部をしてくれて、その物好きな後輩を副部長に任命して二人での「週一回」というゆるい活動実績でまた一年を過ごしていたのでした。
どうして月曜日を活動日に指定したのかといえば、休み明けで学業が始まる憂鬱なその日に面倒ごとを全て集約してしまおうという理由だけである。兎に角、イチゴは堕落した考え方の持ち主でもあり、趣味に集中するあまり運動が嫌いとなり運動部に入る選択どころか、全ての行動に「教師」や「家族」に不真面目と叱られない程度に努力することだけに労力を割く省エネ中学生となっていました。さらに活動的な文化部も自由が奪われるからと拒絶すれば、必然的に休みが多くても咎められない部活を選択していただけ。そうしてイチゴは趣味のゲーム内で覚えることになった将棋に、どうせならイチから学ぶ作業も少なくなるとエコな考え方をとことん追求して将棋部が理想的な環境であったのでした。
○美少女が残念な少女になった理由
そんな惰性で過ごしていそうなイチゴは、まったくその通りのダラけた学生生活を送っている。イチゴも中学生以前からやる気が見出せない少女であったわけではなく、むしろ小学生時代はモテ女子街道まっしぐらのイケメン美少女で、小学生らしい活発な学生で異性だけでなく同性からも慕われてしまうモテ要素たっぷりなごく普通な学生生活をしていました。しかし、ある日を境に達観な考え方をするようになってしまい、普段の楽しかった日常が「刺激が乏しい」と思うようになると、途端に退屈になり冷めた感情で過ごしてゆくことになる。一度心変わりをしてしまうと、どうしても普通な女子校生としてやる気を出して青春を全力で楽しめなくなり、結果イチゴは益々空想ばかりの世界にのめり込むリアルを適度に捨てた廃人となりかけていました。
そのきっかけが趣味の発見。イチゴには歳の離れた兄がいて、その兄の目を盗み強奪したエロゲをプレイする事がイチゴの世界観を大きく変えてしまい価値観が反転してしまったのでした。目の前の現実を楽しく過ごせるように努力するよりも、刺激が溢れる空想の世界の方があちらから楽しさなどを提供してくれるのでイチゴは一気に二次元の世界の虜になってしまい。ただ残念なのがきっかけが中学生ではアウトである18禁のジャンルに手を染めて、それを欲してしまうくらいに熱中してしまったことでした。
それが兄にバレてからは開き直り、歳上としての責任感が緩い兄に強請りお小遣いを献上してまで好みのジャンルのエロゲを仕入れてコレクションは増してゆく。そうしていつしかイチゴは自分にはないジャンルである「可愛さ」に憧れを感じるようになりました。
○趣味の発見からの過去の栄光
小学生時代は兄とも一緒に遊び男女関係なしに男児が好んでするような遊びにも参加してイチゴは中立的な嗜好を持つに至る。その頃のイチゴは中性的な顔立ちと性格も男の子みたいな側面があることが注目されてカッコいいとばかりチヤホヤされていた。そこに可愛い妹と思っている幼馴染が側にいたからか、可愛いものに対する関心は常日頃持っていたのでしたが自分が可愛くなることに対してはあまり興味を示さずに、幼馴染を可愛がることだけに興味は集中していた。しかし爆発的に好奇心が傾いたのがエロゲをプレイしてしまったことになり、可愛く綺麗な女性に強く憧れると共に、邪な想いも抱いて心は男性の気分へとさらに近づいてしまうのでした。
男性向けのゲームをプレイしていれば主人公視点を見ることになるわけで、どうしたってイチゴは女性を愛する方に感情移入をしていた。まさか中学生から愛される方に感情移入もできずに、いつしか麗しい女性に向けて想いを発散する行為が習慣となるくらいエロゲに汚染されてしまい、一人えっちの妄想相手は同性という百合感情を抱いてしまう残念な中学生となってしまいました。
さらに美少女が美少女でなくなる残念な変化はエロゲを嗜む性格面だけに終わらず、趣味にまでなったエロゲの影響で二次元の創作の世界を手当たり次第に触れ出してしまい、イチゴは運動が嫌いになるくらいのインドア派に変更してしまった。部活動も週に一回の将棋部で放課後になると外に幼馴染を連れて遊んでくれることもなくなり、部屋に篭っては好きな炭酸飲料やアイスにスナック菓子にと、日に日に肥えてゆくのを止められずに、ついには堕落した結果の完成形となる身体を中学生にして手に入れてしまいました。
それに危機感を覚えた両親も娘の食事制限だけは実行するも、残念ながら実りある成果は出ないまま月日が流れてゆきました。しかしこれまで増加一方であった体重も増減が止まり、それだけは一定の効果が見込めるも減らすまでには至らず、イチゴは自称ぽっちゃり系女子に定着していました。そんなわけで美少女のイチゴを知っている者からすれば、残念すぎるふとましい中学生は三年生の三学期でも顕在でした。
○イチゴの容姿とモテる可能性
イチゴの恋愛経験はゼロで、男女交際もなく中学生を卒業しようとしていた。過去にモテた時期があるということはイチゴには他よりも優れた素材があるということで、エロゲを趣味にする前からも異性愛には人並みに興味はありました。チヤホヤされていたから特定の人などいらぬと慢心していたわけでもなく、イチゴが交際歴ゼロのまま過ごしていた理由は単純に小学生時代は恋愛をするに値しない「大事な幼馴染に意地悪をした悪餓鬼」ばかりで学内の恋愛ごとに興味を示さなかっただけであり、中学生時代は二次元による妄想の始まりで三次元離れしてしまったからでもある。おまけに中学生時代でぽっちゃりに変化したイチゴには周りが興味を示さなくなり、益々イチゴはロンリーガールズとなっていました。
イチゴは運動自体が嫌いなだけで運動が不得意というわけではない。そのためイチゴは成績を良くするためにも授業にはしっかりと取り組み、さらに家庭での勉学もして成績は優秀でもありました。結果がついてくるための努力はできる上に、努力に見合うだけの結果を残せるだけの才能まである。つまりイチゴに怠惰の精神がなければ、エロゲと出会わなければ、モテ女子のままで人並みに男性とめぐり合い結ばれた学生恋愛ができていたかもしれない潜在的な素晴らしい素材をかつては持っていたのでした。しかし性根は腐っているのでその努力の矛先は小遣いアップを画策してのことであり。必要最低限の努力でエロゲ購入資金の妨げになる親の視線を回避するだけの優等生を演じて、どうしてそれが体型維持にも発揮されないのかと親には心配されながら、ふとましいながらも女子力を磨くことには労力も浪費も必要としない二次元の世界に浸り、結果中学生からはモテない女子校生を継続していました。とはいえイチゴにも運命の人との出会いが三次元であれば、また変化があるのかもしれなく。美少女に返り咲く要素は充分にあるともいえました。
今でこそ残念なぽっちゃり中学生ですが、かつてはイチゴも小学生時代には今よりも痩せていた時期があり男女問わずに人気を集めていた。それは性格面だけでなく容姿も抜きん出たイケメンで美少女だと言わしめるだけの整ったパーツを得て生まれていました。これは両親譲りの遺伝で女性ながら中性的な顔立ちをしており、そのためにミーハーな女学生からもイチゴは慕われていました。ただしその頃のイチゴは同性愛に興味はなく、幼稚な男子生徒なんて付き合いたくもないと恋愛に興味はあれど自分の手の届く範囲では欲する出会いはないと恋愛はきっぱり捨てて、気の合う友人と楽しく過ごすことだけに集中していた。
つまりエロゲをして恋愛に興味を抱きながら恋愛対象となる幅まで広がってくれた今は、その対象も大人に近づきイチゴの条件に見合う人も増えたはずで、そうなるとイチゴが恋愛を本気でしたくなるくらいの出会いをしてしまったら。あとはイチゴ自身がかつての栄光を取り戻すくらいにダイエットをして美少女に返り咲きさえすればモテ女子となるのでしょうが、現実は自室に籠り出会いを捨てて画面を見つめながら炭酸飲料を飲み干し、自室に一人だからと口から下品な音を出してしまう残念な中学生のままでいました。
○現在のイチゴと親友かつ盟友の幼馴染
イチゴには氷川檸檬という一つ歳下の幼馴染がいて妹のように可愛がっていました。檸檬は家が近所ということもあり、歳上のイチゴがお姉さんとして近所の同じ学校に通う女の子の面倒を見てあげなさいと親から頼まれるカタチで檸檬とは繋がり、初めは登下校を一緒にするような関係から始まりました。しかしイチゴは自分には居なかった妹ができたようで檸檬をすぐに特別な存在に指定してしまい、檸檬が守ってあげたくなる可愛い妹と認識してからは自宅に招いて遊んでみたり、自分達の兄弟を交えながら東北地方の自然を舞台に遊んでみたりと大好きな友達付き合いになるのも早くありました。
そのイチゴの大好きは本当の家族のように檸檬を大事にしてくれて、檸檬もまた優しいお姉ちゃんのようにイチゴを慕ってくれてイチゴの後ばかりをヨチヨチと着いていくお姉ちゃん大好きな妹となり、そこからはずっと友情を続けて幼馴染の親友となっていました。それはイチゴの見た目が大きく変わっても友情は途切れずに、一時期はエロゲばかりして疎遠になって寂しくて泣いてしまうくらいに檸檬はイチゴとの時間が大切で、趣味の発掘が落ち着いてからは檸檬はまた自宅に招かれることに安心してイチゴを慕い、ロンリーガールズとなっていたイチゴの中学時代での貴重な繋がりを維持している「特別な存在」でありました。
兎に角、檸檬はとある理由からイチゴが大好きになり、慕う姉と離れないためにイチゴを理解しようとして、隠れてヘンテコな趣味を始めたイチゴの変化にも順応に対応してしまい檸檬からも自分が「特別」であり続けようとする意思表示をずっとしてきました。そうした献身的な好意があったからこそ、イチゴは孤独にも感じた中学時代を退屈だけで過ごすことはなく、檸檬をより強く「特別」として認識して「ずっと楽しく友情を育みたい」大親友として檸檬を欲するくらいに二人の絆は固く結ばれていました。
碓氷イチゴは自堕落な生活を主義とするくらいのダラけた生活を愛する女子中学生である。その結果ダイエットが必須となるくらいの体重を得てしまい、とうぜんのように異性からモテずにいました。危機感もあれば趣味のエロゲで口説く女性を見ていると自分の姿に虚しくなることもあり、ダイエットを決意しかけては三日坊主になることが繰り返されていました。そんな中学生活もあと僅かになった頃。物好きに将棋部にも入部して追いかけてきてくれた後輩となる氷川檸檬という幼馴染から、突拍子もない提案を受けてしまうことになりました。
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