妹参上
白奈が家に帰り、リビングへと入った。
「華ちゃん、何時に成ったらお兄ちゃん来るんだろうね〜⋯⋯どちら様?」
リビングには平然とソファーに座り、クマの人形とおしゃべりをしている小柄な人物が居た。
蒼髪の隙間から覗く同じ様に深い蒼色の瞳が白奈を凝視していた。
「いや、こっちのセリフですよ。侵入者!」
カバンを投げ付けると、女の子は素早く跳躍して避け、そのまま階段を登る。
叫び、それを追い掛ける。
階段を高速にトテトテと駆け上がり、白奈も階段を登る。
もうすぐで二階に行けると言う所で女の子が跳び、一階に着地する。
「へ?」
「べー」
舌を出して安い挑発をする。
「ムカつくわね。女の子だから手加減してたけど、もう怒ったからね」
女の子の様な運動能力は無いので、普通に階段を降りて追い付く。
壁際に追い込んだが、女の子の顔に焦りは無かった。
深く力を溜めて、高く跳び白奈の上空を舞う。
「甘い!」
ポッケからワイヤーを取り出し、女の子の足に引っ掛ける。
「ふぎゃあ!」
女の子は床へと落下し、クマの人形を下敷きに衝撃を和らげ着地する。
ワイヤーを足から外そうとしたが、それよりも早く白奈がマウントポジションを取る。
「もう逃げられないわよ!」
頭を鷲掴みにして、床に押し付ける。
「あんたこそ誰よ! ここはお兄ちゃんとクズの家でしょ! あんたのような若い女なんて知らない! まさか、身なりJKの癖にクズに堕ちたと言うのか。あぁ、お兄ちゃん、またアレに戻るのですね」
「何を言っているんですか。ここはお母さんとお義父さんと天音君と住んでいるんですよ」
「嘘を言え! どこにその証拠がある! この不法侵入者め!」
「あんたが言うな!」
「あぁ、お兄ちゃん、私はどうすれば」
「それはこっちのセリフよ。そもそも天音君は私の義兄で、妹は居ない筈!」
「何だと! お兄ちゃんの妹は私含めあと一人居る。だが、あんたは違う! ⋯⋯義兄? もしかして親の再婚か」
「え、ええ」
「そう言う事か。ふむ。何か誤解があるようだね。取り敢えず重くて上手く息が吸えん。離れて頂きたい。あとワイヤー」
「あーうん。分かった」
白奈がワイヤーを外し、女の子は足の具合を確かめる。
ドアが開き、「ただいま」と言う天音の声が聞こえた。
その瞬間女の子が走る。
◆
「お兄ちゃん〜」
「わ! どうしたんだ空?」
「変な女に追い掛けられて、ワイヤーで捕まって押し倒されてのしかかられて頭を鷲掴みにされて動けなくされた〜」
「おーそれは怖かったな。よしよし」
頭を撫でる。
現在中三だろうか? 空は僕の腹の中で蹲る。
「ちょっと! 私ですらして貰ってない抱き締めとなでなでって意味が分かりませんよ! 何でその女の子と!」
「あー。そのー。複雑だけど、空は僕と血が半分繋がった妹なんだ」
「は、はぁあ!」
それからリビングで、僕の膝の上に座る空の対面に白奈さんが居る。
白奈さんの顔には青筋が浮かんでおり、指で机をコツコツ叩いている。
「別に、空ちゃんの存在は良いんだけど⋯⋯何でそんなに心を許して、しかも膝の上に座っているのよ! 納得出来ません!」
「妹ですから」
「空だし」
「嫌です! そんな心が通じあった兄妹仲なんて嫌です! 天音君は私のモノなんですぅ!」
「何時から君のモノになったんだよ」
空はまだ母さんが生きていた時に、僕を出産してすぐの辺りくらいに不倫し、その中の一人を妊娠させ、産まれたのだ。
空と僕が知り合ったのは、空が天才だからだ。
自ら調べあげ、僕に直接会って、そして母さんとも面識がある。
ま、その時の母さんは病院に居たのだが。
元々僕も空も父に対して復讐を考えていた。
僕と空なら出来ると思った。
だが、母さんが全力で拒否した。僕は復讐を諦め、約束を守る事にした。
空はその後も調べて、そしてもう一人の半分血の繋がった妹と弟を発見した。
皆の養育費も要らないと言った人以外には渡している。
それが約束の一つなのだ。
そんなこんなで、僕と空はとても仲が良い。
多分、今の僕が一番信頼信用しているのは空だろう。
今も膝に座りながら僕にベッタリとくっ付いている。
「てか、そろそろ離れなさい!」
「これは妹特権、そもそもあんたは何様だ。何者だ? いくら義妹だろうと一滴も血の繋がりの無い妹よりも繋がりのある私はこうしても大丈夫。そして戸籍上私達は別の家族であり親族でも何でもないので結婚も可」
「そんなの許しません!」
「机を叩くなよ」
「なんで私にツッコミを入れて空ちゃんにはツッコミを入れないんですか! 理不尽です!」
「仕方ないだろ。印象が違うんだ。そもそも初対面の相手に、しかも中学生相手にワイヤー等鷲掴み等する相手よりも贔屓するのは当たり前じゃないか?」
「だ、だって。不法侵入だと思ったし」
「だからってこんな小さな女の子相手にそりゃ無いぞ」
「うぅ」
「私小さくないし」
そして、晩御飯の準備をする。白奈さんも手伝い二人で行う。
「むー私も手伝う!」
「空は待ってて良いぞ。身長低いし、火や包丁は危ないしな。その気持ちだけでとても嬉しいよ」
頭を撫でると、引っ込みながらも顔を赤らめ、こくりと頷く。
素直でとても良い子だ。
タタタタタタタタタ、高速で玉ねぎを切る白奈さんを二人して目を点にして見る。
涙をダラダラと垂らして、目を赤くしながらもひたすらに切っている。
「玉ねぎ使わない⋯⋯ハンバーグにするか」
「⋯⋯」
「あの子怖い」
「分かる」
無言でただ玉ねぎを粉々に切る白奈さんはとにかく、怖かった。
晩御飯を三人で食べる。
「と言うか、何で家に入れたのよ」
「それは僕が予備の鍵を作って渡していたんだよ。他の人達にも渡している。皆一種の家族みたいなモノだしね」
「うん。と言うか、私達の存在を知らされてない白奈さんは全く信頼されてない」
「待って、それは私の事を教えられてない空ちゃんも同じだよね? 家の事は言ったのに私達の事は言わなかったってそう言う事だよね」
「いや。どうせすぐ離婚するから良いかなって」
「なんで私はフォローされずに空ちゃんはフォーするのよ」
「そこに愛があるからよ」
「何この敗北感」
そして、今日は僕の部屋で過ごしてから明日帰るらしい。
「私の部屋に布団引くから私の部屋ね」
「いや。お兄ちゃんと寝るなんて今までに何回もあるし別にいい」
そっぽを向く空。そして僕に抱き着く。
「いやダメー!」
「引っ張るな痛い」
「お兄ちゃんが痛がってる。止めて」
「だったらさっさと離れなさい!」
空は父の姿を見ない様にして、お義母さんは父と昔の話をしている。
これで仲が悪く成ろうが僕に関係は無い。
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