仲直り同盟

 私は白奈、現在自分は中学の頃に惚れた人の義妹になっている。

 テンプレ的なイベントを事く如く回避されている現状。

 意味が分からない。年頃の男子って同い年の裸を見たら数秒硬直するんじゃないの! どことは言わないけど、反応を示すんじゃないの?

 ラノベ知識なんも役にも立たないんだけど。


 そう、そう言うイベントを試した事がある。

 見せた瞬間に布で遮られ、逃げ出した。

 本当によく回避する。寧ろ最近では立場が逆に成る様に⋯⋯いや、まだある筈だ。


「やっぱり風呂の中に侵入して待機する方が良いかな〜」


 私が今後の計画を練っていると、ドアがノックされる。

 天音君は絶対に私の部屋をノックしない。お母さんなら喋りながらノックする。

 そう考えると、義父か。


「はい」


 ドアを開けながら返事する。


「少し、良いか?」


「ん? はい」


 リビングへと行き、お義父さんがウーロン茶を飲みながら話して来る。


「再婚の話の時もそうだが、俺は、天音に嫌われている」


「はい」


「確かに、昔は毒親⋯⋯そんな言葉じゃ収まらないクズだった。だが、それも反省している。それを天音に分かって欲しい。その為に、協力して、くれないか?」


「⋯⋯」


 私は即答出来なかった。

 確かに、親子仲良くした方が良いのは分かる。

 何をされたかは詳しくは知らない。

 でも、天音君の墓場のあの顔を思い出すと、どうしても簡単にはイエスとは言えない。

 あの憤怒の目を収めるのは簡単では無い。


「やはり、ダメか?」


「ダメ、と言うよりも。私に出来る事が少ないんです」


 私の言葉は天音君に今はまだ届かない。悲しい程に。今も昔も。

 お義父さんはそんな人じゃないよ。お義父さんは良い人だよ⋯⋯そんな簡素な言葉を並べだところで、なんの説得力も無いし、「君に何が分かる?」で終わる。

 私には、私はこの親子の問題に口を出してはいけない気がするんだ。


「お義父さんが何をしたか、詳しくは知りません。ですが、天音君の怒りは、私の物差しでは測れないのです。ですので、その」


「いや、良いんだ。数日間、君達はかなり仲が良いと思ってね。利用しようとしてすまない」


「手伝います!」


 私は義妹、そして他から見ても『仲が良い』のだ。そんな義妹ちゃんが義兄の問題解決に参加してはダメな理由があるだろうか?

 いや無い! あってはなら無い!


「お義父さんと天音君の問題は妹である私の問題です!」


「そ、そうか?」


「はい! 『仲の良い妹』である私、白奈が頑張ります! 全身全霊を持って、仲直りを完遂させます! 『仲の良い妹』が!」


 ここに仲直り同盟が立ち上がった。


「あ、うん。ありがとう」


 私は部屋に戻り、ベットに腰を下ろして寝転ぶ。


「仲直りって、何をすれば良いの!」


 と、言う訳で翌日の学校で美咲に相談してみました。


「私の知り合いがね、知り合いが、『知り合いが』『知り合いが!』」


「うん。分かった分かった」


「親子喧嘩をしまして、かなり深刻なんです。かなり深い因縁なんです」


「はいはいそれで」


「どうやったら仲直りをさせられるんでしょう」


「へ〜(なんで私に相談するのかなこの人)」


 パクパクと弁当を食べながら美咲の話を聞く。


「ん〜まずは無難に家族で出掛ける⋯⋯とか?」


「ダメですよ〜そう言う安直なのは絶対に失敗します」


「何かやった感があるね」


「そうなんですよねぇ。風呂上がりにばったり遭遇⋯⋯湯気が少し出ただけですぐに閉められて、互いの姿が見れる事は無かったんです。その逆は全力で防がれました」


「あ、うん。そっか(そっかー)」


 安直なのはダメ⋯⋯一体どうすれば。


「もういっそ『仲直りしてください!』で良いんじゃない? (ま、流石にダメか)」


「良いですねそれ。採用です。今晩試します!」


 ガッツポーズを決める私。


「ごめんごめん。適当にあしらった私が悪かったから、それは止めよ? ね? ね?」


「そうですか? 良い案だと思ったんですか」


「正気を疑うよ」


 友達の良い案に賛成したら、その友達に正気を疑われました。

 なんでぇ?


 ◆


「天音君! 見てよこのパフェ! 可愛くない!」


「ジャンボ」


 大きなパフェだなぁ、としか感想が出ない。

 見ているだけで胃がもたれる。


「食べれんの?」


「超余裕」


「⋯⋯正気を疑うよ」


「酷くない! 食べれる人が居るから販売しているんだよ!」


「冗談冗談。感想聞かせてね」


「え?」


「え?」


 何言ってんだこの人って目で見られるが、寧ろその顔に何? と問いたい。

 僕はそんな優希君の目を見ながら次の会話をどうするか考える。

 会話に詰まるなぁ。これがぼっちの性か。


「一緒に行こ!」


「絶対嫌」


「良いじゃん良いじゃん!」


「駄々を捏ねるな子供か!」


「絶対に美味しいよ!」


「要らん」


 手を離して教室に戻ろうと思ったが、涙目の優希君。

 僕は友達を作る様な性格でも何でも無い。

 別に気にする必要は無いのだが⋯⋯。


「前にストーキングを手伝ったよね」


「待てそれには大きな誤解が含まれている。

 だからそんな語弊のある言い方はするんじゃない」


「何も違わないじゃん! 女の子の後ろを付け回して、ストーカーじゃん!」


「あーあー黙れぇ! 分かった! 分かったから! 分かりましたから! 行こう! 今度の土曜!」


「ありがとう天音君!」


 優希君の笑顔を見ながら、自分は何を頼もうかと考える。


 部活は今日もやるので見学しに行く。

 数人にまた居るじゃん、そんな目で見られた。

 そして、また杉浦先輩が皆の案内をする。

 どうして何時も杉浦先輩なのだろうか?

 しかも、めっちゃ上手いのに。寧ろもっと練習時間あげて、他の人にやらせれば良いのに。

 ま、僕が考える事じゃないか。


「君は毎回来るね」


「家に帰りたくない理由があるんです」


「そっか。まぁ、人それぞれだよね理由はさ」


 杉浦先輩が練習の順番では無く、僕の横に正座して言葉を漏らす。

 真剣に他の人の射を見ている。

 そして、少し違う人には指摘しに行き、正している。


「ん?」


 だが、そんな杉浦先輩の事を良くない目で見ている人達が居た。

 あの目は⋯⋯嫉妬に近い様な、そんな目だ。

 何事も無ければ良いな。


 僕は経験者だし、体験にも何回も出てるので、矢を取りに行くのを毎回やる事にした。

 部員でも無い人に弓は的の前で引いてはいけない。

 皆真剣にやっていると思われたが、中にはそうでは無い人も居る。

 そう言う人にも杉浦先輩は率先して注意していた。


「⋯⋯」


 ああやって目立った行動をすれば、当然敵も出て来る。

 男性女性問わず、ね。

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