同棲には風呂イベントは付き物
風呂場と言うのは危険らしい。
特に今まで過ごしてない相手だと生活習慣が違う。
つまり、風呂に入る時間が同じな事もある。
ただ、少しズレていた。
いやね。まさかね。こうなるとは。
現在僕は体を拭いていた。なので、裸が見られている訳では無い。
しかし、こう言うのはすぐに閉めるのが普通だと、僕は思っていた。
白奈さんの場合は違った。凝視して来た。
「着替えの途中よね? どうぞ続けて。寧ろ続けて!」
「嫌だよ! てかなんでスマホ持ってんだよ!」
「お風呂で動画を見るためよ。最近やっている人多いでしょ」
「知らんがな仕舞え! 扉閉めろ!」
「⋯⋯あーあーなんか突っかかったみたいで閉まんないー」
僕が直々に手を伸ばして扉を閉めようとしたら、力属で防いで来る。
「ほらね?」
「ほらね? じゃないよ。なんつー力してんだよ」
「これでもスト⋯⋯じゃなかった。鍛えてますから」
あんまり力を加えている風でも無いのに、ビクともしない。
「分かった。ならばこうしましょう。私も脱ぐ。裸でツーショット! 良いね。裸の付き合いから起こる恋もあるかもだし!」
「そんなもんねぇ! あってたまるか!」
玄関の方からドアを開ける音がする。
両親が帰って来たようだ。
玄関から直線の廊下に風呂場はある。
「チィ」
流石に不味いと思ったのか、相手から引いてくれた。
教訓、白奈さんはマジでやばい。そして風呂に入る時は色々と考えものである。
いや、僕はそもそも扉を閉めていた。
風呂に誰も居ない場合は常に開けている状態だ。
だから、誰か入っていたら分かる。スライドドアだし、⋯⋯アイツまさか狙って!
朝食の時間、作ったのは僕である。
父が料理なんて出来ないので、ずっと僕が作っていた。
二人分増えても問題ない。
部屋でパソコンを弄っていると、中に白奈さんが入って来る。
「何しに来た部屋は一個向こうだろ」
「良いじゃん別に」
良くないだろ。プライバシーを守れよ。ただイライラするよ。
ベットに座ってスマホを弄っている。
既に夜、パジャマ姿でなかなかの薄着だ。
足を動かして太ももを強調している。
ま、別に関係ないや。
ヘッドホンを嵌めて音楽を流し、パソコンをカチカチと弄る。
途中電話が掛かって来たので、白奈さんを追い出す。
「悪いけど、これは本当に誰にも聞かれてはダメなの!」
「ちょっと待って、せめて少しは反応を示してよ!」
ドアを閉めて、電話をする。
それから数日後、入学式へと出向く。
父が様にならないスーツを着ている。
ただ、不思議な事に同じ高校の制服を白奈さんが着ていた。
「天音、知っていると思うが、二人は同じ高校だよ」
「よろしくね天音君。白奈の事」
「よろしくね。天音君!」
満面の笑顔の中に僕は悪魔の笑みを見て取れた。
背中にぞわりとした、そう、コンニャクが背中を滑って行く様な感覚だ。
身の危険を感じ、本能が危険信号をビンビンに出している。
入学式は眠くなる様に淡々と進められ、教室が発表された。
そして、なんと言う悪魔の力か、それとも神々の遊戯か、同じクラスだ。
僕から見たらただの獣の白奈さんと、一緒の高校で一緒のクラスで一緒の家に住んで、僕の人生、変わったな。
翌日の学校では白奈さんは人気者になっていた。
中学の頃の事を必死に思い出す。
一人で隅っこの席で本と永遠に睨めっこしている人が、今ではこれだ。
あ、僕も同じか。高校になっても変わらんが。
「西園寺さんの髪ちょーサラサラだね〜」
「裸ツルツル〜どの化粧水使ってるの?」
そんな会話が聞こえる。
白奈さんの対応はなんと言うか、棘があるモノだった。
「ありがとうございます」
そして、僕にも話し掛ける人が居た。
「ねね。お前って西園寺さんと同じ苗字だけど、もしかして⋯⋯」
なんて言う古典的かつ使い古された人物像だよ。
「期待に添えず済まないが、別に僕達は⋯⋯」
「一つ屋根の下に暮らす、兄妹ですよ」
静粛に包まれる教室。
僕は古びたロボットかと思う様なゆっくりとした動きで白奈さんに向き直る。
「な、何をご冗談を言っているのかな? 西園寺さんはお茶目だなぁ」
「あらあら。そんな他人行儀な。何時もみたいにシロちゃんって呼んで下さいよ〜」
何時、何処で、僕がそんな⋯⋯言ってたあああ!
けど一回だし!
中学の時のお遊びでニックネームを考えて言う。その一回だけだ。
不味い。兄妹だと言う事がバレたら色々と面倒だ。
「さぁ。何の事やら。僕と西園寺さんは初対面でしょ?」
「酷いなぁ。あそこまでした仲なのに」
色々と誤解を生むな。生まないでください本当に。
何がしたいのか全く分からないが、せめて穏便に行かせてくれよ。
何か、何か手は無いのか?
「お茶目なのは良いけど、やり過ぎると色々と勘違いするよ? 色んな人が」
「へぇ〜例えば?」
「例えば、例えば。何があるんでしょう」
何を言っても地雷にしか成らない気がする。
「別に良いじゃ無いですか。勘違いされようとも、私達の関係は変わらない」
真っ直ぐな視線を向けて、顔を赤らめて来る。
呆然と見ていたせいか、モジモジし始める。
「確かにクラスメイトだね」
「一向に認めないわね。お
「そっちもいい加減お茶目な行動は止めたらどうかね?」
「じゃあこれ」
「へ」
白奈さんが突き出したスマホには、再婚記念に撮った家族写真だった。
はい。言い訳不可能の証拠をどうもありがとう。
親が再び別れた、そんな言い訳も出来ない可能性がある。
だって、入学式に来ているんだもん。
畜生。畜生。さようなら、僕の高校生活。
だけど、諦めないから。
絶対に、諦めない。このドヤ顔寸前の白奈さんの顔をへし折って、
それが僕の生き様だから! だから、そのドヤ顔寸前の顔止めろ!
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