トキオ
トキオは入道雲の先の異世界からやってきた。いかつい体格のトキオは、確かにこの世界に馴染んだ。並んだナラのすらりとした陸上選手のような体躯もしっくりきた。
「それが本当なら、納得だな。住む世界が違うと思っていたよ」
クラスメイトや家族みんな、オレの一回りも二回りも大きい奴らばかりだった。
「それは俺も感じたな。みんなお前みたいにヒョロガリなんだよ。ついでに女がやたら多い」
オレの呟きに気付いたトキオがそう返した。
「ねぇ、時央。あなたの手の甲、ひょっとして……」
「あぁ、これな。生まれつき。鱗みたいになってんの。しかも……」
「……!」
トキオが大きく瞬きをすると、ナラの尻尾がビビッと逆立った。
「瞳が……あなた、爬虫類の獣人族!?」
トキオがその瞳で俺を見た。有鱗目独特の、クリスタルを嵌め込んだように縦長の瞳だった。
「これで、納得だろ?お前らの世界では驚かれないもんな」
「それじゃぁ、オレは……」
ナラがハッとしたようにオレを見て何か言おうと口を開いたが、テオに遮られた。
「ルイは、あっちの世界に生まれるはずだった」
テオは神妙な顔をして話を続けた。
「各世界には、それぞれに必要とされる個体が送り込まれている。この世界なら爬虫類族で古龍の超貴重種トキオが、あっちの世界なら聖なる力を使いこなせるルイが俺と一緒に。今回はバグが発生し送り込まれる世界が間違ってしまったんだ。オレのボスがこれから正しい世界に転送してくれる。そうすれば、二人とも本来の力を存分に世界のために使えるだろう」
「俺はトカゲじゃなく龍だったのか……!!」
「流唯、やだよ!行かないよね!!??」
トキオの転生で明らかになったこの世界で、オレは異物だった。
ナラも親も友達も、生まれ育った街も全て、オレが知るはずのないものだった。
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