再カイ

 薄暗い部屋に連れてこられた。


 サガミはすぐ後ろで俺に無言の圧力をかけている。大きく分厚い体に行けと言われているようで、ジリジリとイズモと呼ばれた声に向かって進んだ。


「流唯……!」

 

 暗闇の奥から聞こえたのは、ナラの声だった。


「……ナラ!」

 オレが咄嗟に声のする方に駆け寄ろうとすると、サガミはオレのリュックを鷲掴んだが、腕を抜いてリュック(とテオ)を捨てた。


「クソガキ……!」

 

 ナラは椅子に縛り付けられていた。手は背もたれに、足は椅子に括り付けられている。キツく締められ、結び目はびくともしなかった。


「流唯、来てくれたの……」

「当たり前だろ、あんな電話寄越して」

「……ごめん、巻き込んで……」

 指先に集中したオレは、ナラと会話することもままならなかった。


「これはこれは、感動の再会だな」


 イズモの声だった。

 暗い部屋のさらに奥にいるようで、姿は見えない。


「……さっさとナラを放せ!」

 なかなか解けないロープは、特別硬かったのではない。オレの指先は震えていた。


「そうはいかない。このネコは、いやサーベルタイガーの貴重種はね、我々の研究に必要なんだよ。そしてこの研究は、全獣・人類ひいてはあらゆる生物にとって最重要課題なんだ。分かるかな、少年」

 知るか、と思った。

 恐怖や緊張の震えが次第に怒りに変わっていくのを感じだ。


「そんなこと知らないわよ!さっさと離してよ、なんで誘拐なんてされなきゃいけないの!?」

 ナラが声を上げると、ロープが軋んだ。

「勇敢なネコだな。そこまで説明する必要はないさ。佐賀美、サルは捕らえて、に使え」

「承知しました」

 リュックを持ったままだったサガミはそれを放り投げると、重量感のある体が向かってきた。


「ルイ、捕まるのはまずい。これを使え!」

 放り投げられたリュックから、テオがもぞもぞと出てきて叫ぶようにそう言った。


 それ、と呼ばれたものをテオが投げると、磁石でもついているかのようにオレの手にすっぽりと納まった。


 は、オレのシャーペンだった。

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