(第9話)死が2人を分かつまで

 僕たちは、裸のまま、2人、ベッドの中にいた。


「シャワー、浴びなくて、大丈夫?」

 僕が聴くと、美咲は答えた。

「このままでいいです。シャワーは、明日の朝に浴びます。」


「服、着なくて、大丈夫?」


「このままがいいです。」


「風邪、引かないようにしないと。」


「風邪、引かないように、兄さんが温めてください。」


 僕は、ベッドの中で、美咲を軽く抱きしめた。

「暑過ぎない? 大丈夫?」


「ちょうどいいです。でも、お互いに風邪には注意しないとですね。私も、今年は風邪を引かないよう気をつけます。」


 美咲は、身体が弱いというわけではないのだけど、毎年のように冬には風邪を引いていた。


 美咲は、僕の顔を覗き込むようにして、言葉を続けた。

「もしも、私が風邪を引いてしまっても、私がどんなにしんどそうにしていても、セックスしてくださいね。ただし、風邪が移らないようにマスクしながらした方がいいかもですけど。」


「マスクしながら?」


「ほんとはキスもしたいけど、風邪引いちゃったら、移したらいけないので。だけど、私は、兄さんとセックスしないと死んでしまいますから。」


「そうだね。美咲が一番、大切だから。」


 すると、抱き締めた僕の腕の中で、美咲は僕を見つめながら言った。

「兄さん。まだ結婚はできないけど、結婚式みたいに誓いの言葉が欲しいです。」


「結婚式みたいに?」


 美咲は、うなずくと、微笑みながら言った。

「ねえ、兄さん。病める時も、健やかなる時も、私とセックスしてくれますか?」


 僕も、微笑みながら答えた。

「ああ、誓うよ。」


 美咲は、僕をぎゅっと抱き締めた。

「はい。兄さん。私も誓います。」



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