船長の強さ
「俺たちも負けていられないな」
ノアクルはそう言うと、手をかざした。
「スキル【リサイクル】」
対象は海賊たちが落とした曲刀だ。
それらをリサイクルすることによって、拾って再び戦うことができなくなるのと、こちらの武器を作れて一石二鳥となる。
問題は何を作るか、ということだ。
すべてを集めて巨大な武器を作ったとしても、ノアクルは巨人でもないのでそれを振るうことができない。
変化を利用して針や槍のようにするのは、複数対人だと威力がありすぎて使いにくくもある。
「――となると、これはいけるか?」
ぶっつけ本番で鉄の手枷を作った。
それで海賊の腕を狙い、組み立てつつ拘束する。
「な、なんだこりゃあ!? ガッチリと腕にハマりやがった!?」
「いけたな、何かいつもより高い精度を出せる気がするぞ」
ディロスリヴの力に触れたからか、それともジーニャスの神気のバフがかかっているためか。
ノアクルはいつもより神経が研ぎ澄まされ、スキル【リサイクル】と自らが一体になりかけているような感覚すら得ていた。
ふと意識を海賊に向けると、〝それ〟すら対象にできそうだ。
海賊を対象にスキル【リサイクル】を――というところで、冷静に戻った。
人間をゴミと見立てて、リサイクルしてしまっては一線を越えてしまう。
人類がしていい所業ではない。
さすがのノアクルでも、それくらいはわきまえている。
「ノアクル、危ない!」
余計な事に気を取られていたのか、海賊に斬りかかられようとしていた。
そこをダイギンジョーが戦闘用包丁で受け止め、スパルタクスが海賊を殴り倒していた。
「どうしたんですかい?」
「いや、なんでもない。海賊たちを一掃しよう」
つまらない考えを振り払い、ノアクルは戦闘に集中した。
スキルを使わなくても、ある程度の体術で近接戦闘もこなせる。
海賊の曲刀を回避しながら、膝蹴りを腹に打ち込み、武器を落としたところでスキル【リサイクル】を使って拘束する。
「ノアクル、地下闘技場のときとくらべて格闘が強くなってる」
「もっと強くなってるお前に言われてもなぁ……」
スパルタクスは拳を振るうだけで数人の海賊を吹き飛ばしている。
猛牛とたとえるのすら生ぬるいパワーだ。
「あっしもお忘れなく」
ダイギンジョーの方は器用に相手の曲刀をはじき飛ばし、ノアクルのスキルと連携をしてくれている。
厨房外でも、何でも料理する立ち回りはダイギンジョーらしい。
「よぉし、やっと見えない拘束が解けたわよぉ!」
「ボクたちトレジャン海賊団は負けるわけにはいかない」
ジュエリンとコイコンが、スペードの拘束を抜け出したようだ。
どうやら魔力的な問題でそこまで長く止められてはいられないらしい。
「ノアクル様、お気を付けを!」
ジーニャスが古代兵器を使ってフォローしようとしているが、さすがに二人は強いらしく蹴散らされている。
次々と破壊されていく古代兵器を見て、ノアクルは思いついた。
「ジーニャス、少し借りるぞ」
「にゃにゃ?」
「スキル【リサイクル】」
それを見たジュエリンとコイコンは笑った。
「あらぁ、アタイたちに使おうとしても無駄よ」
「うん。コインや宝石を手放さなければスキル干渉できない……。もう原理はわかってる。だから手放さない」
「残念、対象はお前たちが破壊した古代兵器だ!」
リサイクルされた古代兵器は、それぞれのパーツが一ヶ所に集まって合体していく。
見方によってはロマン的なものを感じるが、実際はジャンク品を強引に集めて作られた廃品ロボットのようになっている。
「ぎにゃああああ!! ノアクル様、私は古代兵器と感覚が繋がったままですにゃああああああああ!! なんか腕と足が十本以上ありますにゃあああああ!!」
「あ、悪い悪い。操作がんばれ」
まったく悪びれていないノアクルだった。
ジーニャスはというと、自分の身体が魔改造されたようなものなのでたまったものではない。
それでもギリギリ操作はできるので、巨大ごちゃ混ぜ古代兵器と必死に意識をリンクさせる。
「うにゃあああ!! 巨大な力こそビッグパワーにゃ! 潰れろにゃあああ!!」
「ちょっとちょっとぉ……常識外れすぎぃ!?」
「さすがにこれは……無理」
ジュエリンとコイコンは、ノアクルによって一部行動が封じられているあげく、見た事もないような巨大兵器によって倒されたのであった。
トレジャン海賊団の主要メンバーも倒し、これで勝利かと思われたが――
「ジーニャス、オモチャ遊びが上手くなったじゃねぇか……?」
「にゃ!?」
「沈め、
トレジャンによる魔力の輝きが、巨大古代兵器を撃ち抜いていた。
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