新たな仲間たち
「ノアクル、無事じゃったか」
「お、二人とも。やっと来たのか」
戦いを終えたノアクルとピュグの下に、アスピとダイギンジョーがやってきた。
「ノアクル、お前さんが早すぎるんですよ……。って、すごい戦闘の痕跡がありやすが、何があったんで?」
「いや、何がって……そこに倒したジュエリンがいるだろ? ……って、いないな」
そこに白目を剥いて倒れていたはずのジュエリンの影も形もすっかりとなくなっていた。
ついでにトレジャン海賊団もいない……というか港から海賊船が撤退していっているのが見える。
それに関して呆れ顔でピュグが言ってきた。
「ノアクルさん様……、気絶したジュエリンはトレジャン海賊団の下っ端たちが運んで、港からも撤退しましたですます……」
「なに!? いつの間に……」
「ノアクルさん様が考えごとに夢中で、呼びかけても反応がなかったですます……」
「ふはは! 悪い悪い!」
まったく悪いと思っていない表情のノアクルに対して、アスピとダイギンジョーは慣れてきたのか呆れ顔を向けただけだった。
ノアクルは気にせず話を続ける。
「だがしかし、奴らは大型の魔導エンジンまでは持っていく暇はなかったようだな! この島での目的は達成した! 何も問題はあるまい!」
倉庫の中には大型の魔導エンジンが放置されていた。
元々、ジュエリンが宝石を採掘するために利用しようとしていたもので、トレジャン海賊団全体としては重要性が低かったのだろう。
もしくは――
「ふむ、トレジャンの奴が誘っているのかもな」
「誘っている?」
「死者の島への
どんなことが待ち受けていようと、ノアクルは不敵に笑うだけだった。
それからスキル【リサイクル】で大型の魔導エンジンを直し、ピュグが時間をかければ調整可能だと判断してくれた。
「それじゃあ、しばらくこの島に滞在してピュグが調整してくれるのを待つか」
「いえ、ノアクルさん様……それに関してお話がありますです」
「ん?」
「海上都市ノアに、私ちゃんも乗りたいですます!」
ノアクルは、いきなりピュグがそう言い出してくるとは思わなかった。
今までの者たちと違ってピュグは帰る場所もあるし、そこに大切な家族であるヴァンダイクもいるのだ。
たしかに島のドワーフとは関係良好ではなかったのだが、このトレジャン海賊団襲撃を乗り越えて改善もしたはずだ。
「なぜ乗りたいんだ?」
「それは……新しい物を見てみたいですます!」
「好奇心……か」
ノアクルも好奇心が強いので気持ちがわかってしまう。
しかし、ピュグはまだ子どもだ。
まだ未成年である幼女の判断で、海上都市ノアへ移住させるのはさすがにノアクルでも常識的に考えてダメだろうと思ってしまう。
(ローズの場合は父親である、アルヴァさんの公認みたいなものだしなぁ……)
ノアクルはコホンと咳払い一つ。
「ピュグよ、さすがにもう少し大きくなってから判断しても――」
「私ちゃん、これでも大人ですます!」
「なん……だと……?」
その予想外の言葉に驚いてしまう。
どうやら大人ぶっているのではなく、本当に年齢的な意味で言っているようなのだ。
ピュグは背が低く童顔で子どもにしか見えない。
「たぶん歳はノアクルさん様よりも上……あ、いえ、きっと……えーっと、同じくらいですます?」
「そうか、そういえばドワーフは年齢が上がっても背が伸びないから、外見では判断しにくいのか……。しかし、ヴァンダイクはどうする?」
孫娘を大事に思っているであろうヴァンダイクが悲しむだろう。
それとも孫の今後を考えて、涙を呑んで別れを決断するのだろうか。
「あ、ヴァンダイクお爺ちゃんも『珍しいから移住してもいいな』と言ってましたですます」
「軽いな! というか、それだけ二人とも好奇心が優先されるということか……? 血は争えんな……」
さすがのノアクルもドワーフの好奇心には負けてしまう。
まぁいいか、と思い始めたところに、遅れてソードワーフ家とシールドワーフ家もやってきた。
「話は聞かせてもらった!」
「どうやら面白そうなことになってるじゃねーか!」
「おいおい、まさか……」
次の言葉をハモられる前に、ノアクルは何となく察してしまった。
「「オレたちも乗せろ!」」
「機械に強いドワーフたちが来てくれるというのは助かるが……いいのか?」
むさ苦しい髭モジャの顔をダブルアップで押しつけられながら、ノアクルはそれを押しのけようとしていた。
「ふんっ、今回のことでドワーフ魂に火が付いちまった。アーマードワーフ家の奴らだけに楽しい思いはさせないぜ!」
「右に同じ!」
「お前ら、仲良すぎだろ……」
最初の険悪なムードは、ただの同族嫌悪だったのかもしれない。
ドワーフはどいつもこいつもツンデレらしい。
「よーし、さっそく海上都市ノアとやらを空いた港につけろ! ありったけの鉱石を積み込んでやる!」
「それこそ沈むレベルでな! がはは!」
「……またローズに何か言われそうだな」
こうしてドワーフたちが仲間になったのであった。
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