古代人型兵器クラブの修理
「ヴァンダイクお爺ちゃん……」
あのあと、ノアクルがゴミ箱を爆散させて、発生した砂ぼこりで目くらましをしてヴァンダイクの家まで撤退した。
なぜ戦わずに撤退したかというと、時間を消費してはヴァンダイクの命が危ないと感じたからだ。
撤退時はノアクルがヴァンダイクを担いだ。
見た目より筋肉の重さがあって大変だった。
「心配すんなピュグ……これくらいかすり傷だ。それより若造なんぞに背負われたのが、繊細なオレの心の傷になっちまう」
「動けないくらいの傷だが、減らず口を叩けるのならまだ平気なようだな」
相変わらずの頑固者な口調のヴァンダイクは、ベッドに横になっている。
ちなみに脚を撃ち抜かれたドワーフの技術者二人は、ピュグが背負って運んできた。
さすがドワーフ、見た目より力があるらしい。
「ど、どうしてオレたちまで助けようとしたんだ……アーマードワーフ家……」
ドワーフの技術者たちは、普段からアーマードワーフ家――ヴァンダイクとピュグへの悪口を言いふらしていた。
それなのに二人は命がけで助けようとしてくれたのだ。
さすがに良心の
「へっ、ソードワーフ家とシールドワーフ家さんよぉ。別にオレはお前さんたちが下だとは思ってねぇよ。オレたちみたいに売れなくても技術を高め続けるのも重要だが、売れる技術をやり続ける奴もいねぇと島が
「ヴァンダイク……お前……」
ソードワーフ家と、シールドワーフ家の技術者は自らの行いを恥じた。
相手の陰口を叩いていても、相手は仲間だと思っていてくれていたのだ。
「すまねぇ……」
「悪かった……」
無骨なドワーフたちは言葉少なめにしか謝罪の言葉を出せず、心底申し訳なさそうにするだけだった。
「この借りは技術で……」
「それじゃあ、ちょっと作業場の方で見て欲しいものがありますです! ささ、来て来て!」
「お、おい。オレたちは脚を怪我して……いてて! 引っ張るな! 行くから!!」
ピュグは技術者二人を連れて、外へ出て行ってしまった。
作業場の方の作品を見せたいのだろう。
家に残ったのはノアクル、アスピ、ダイギンジョー、ヴァンダイクだ。
「ふぅ、騒がしいのがいなくなったからこれでゆっくり寝られる」
「ヴァンダイク、あんた意外と良い奴だったんだな。あのドワーフ二人を助けに行こうと走ったときは驚いたぞ」
「はっ、どうも勘違いしているようだな、ノアクル。孫娘に醜い争いなんて見せたくねぇだけだ。本当はアイツらなんて大嫌いに決まっているだろ」
「……だから、爺さんのツンデレは誰も得しないぞ」
「うっせぇ! 死にそうなんだから寝かせろ!」
たぶん殺しても死なない爺さんだな、と思いつつ、しばらくすると大いびきが聞こえ始めたのであった。
***
一方、作業場にやって来ていたピュグと、技術者二人は話が盛り上がっていた。
「す、すげぇ! あの手の施しようのなかった古代機械が……修復されている!?」
「ノアクルさん様がやってくれたですます! でも、このへんの物になるとデリケートで調整をしないと動かないので……」
「この人の形をした古代機械……我がソードワーフ家の技術書にあったな……。眉唾物だと思っていたが、目の前にあるのならご先祖様は本当のことを記していたのか……」
怪我をしているドワーフの技術者だったが、目の前の機械に対してドワーフ魂が燃え上がってしまい、痛みを忘れていた。
「おい、アーマードワーフ家の孫娘。お前の知識を貸せ。コイツなら戦えそうだ」
「シールドワーフ家も協力してやる。勿体ぶるなよ、こちらも秘伝を見せてやる」
「はい! ドワーフの力をジュエリンに見せてやるますです!」
そしてドワーフの三家が協力した結果、かなりの速さで一体の古代兵器が完成した。
『ガードロボット〝クラブ〟起動』
それは浮遊都市パルプタにも配置されていた古代人型兵器クラブだった。
「機動時の音声確認。どうやら正常に調整できましたですます!」
『排除対象を指定してください』
「排除対象……? 倒したい敵ってことですます? それなら港町にいるトレジャン海賊団……かな?」
『魔力によるイメージ共有……入力完了、戦闘モードに移行します』
「えっ?」
クラブは急激に向きを変えて、扉の方へ視線を送る。
そして力強くガシャガシャと歩き出した。
「ちょ、ちょっと待つです!!」
ピュグが止めようとするも、クラブは歩き続けた。
ドワーフの力といえど、古代人型兵器には引きずられてしまう。
「と、止まらない~~!!」
「アーマードワーフの孫娘、手を離せ!」
「服が引っかかって……うわああああ!!」
「ヤバいぞ、こいつ港町へ向かう気か!?」
クラブは尋常ならざる速度で走って行ってしまった。
ピュグは引っ張るのを諦めて、背中に張り付くような形で連れて行かれてしまった。
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