古代兵器リサイクル計画

 餅は餅屋、食堂の問題はダイギンジョーに任せることにして、ノアクルはとある実験をすることにした。

 格納庫に集まっているノアクル、ローズ、アスピ、それと武闘派の面々。


「殿下、久々に来たら格納庫がゴミの山になってますわ……」

「まだ格納する物もないんだから、有効利用だ」


 本来なら大きな物資などを置いておく場所だ。

 しかし、食糧などを置いておく倉庫は別にあるし、海賊たちが好みそうな武器庫も別にある。

 念のために作っておいた方が良い区画として格納庫が用意されたのだが、今のところはノアクルのゴミ置き場として使っていることが多いのだ。


「では、事前に予定しておいた実験を開始する」


 ノアクルが近付いたのは、所狭しと並べられたガラクタ――に見えるが、それはパルプタで戦った古代機械たちだった。


 古代人型兵器クラブ、ジーニャスと戦い、ほぼ無傷の状態で停止中。

 古代超硬兵器ダイヤ、獣人闘士たちと戦い、中身が破損している状態。

 古代再生兵器ハート、ムルと戦い、飴細工のように細かくねじ切られている。

 古代時間兵器スペード、アスピと戦い、本体の箱と投影装置のようなものが落ちている。


 まともな形として残っているのはクラブだけだ。


「兄弟、本当にやるってのか……?」

「ああ。トラキアは直接戦ったんだよな? それなら、こいつらが仲間になったら頼もしいとは思わないか?」

「そりゃそうだけどよぉ……」


 ノアクル以外は誰も良い顔をしていない。

 煮え湯を飲まされたスパルタクスとレティアリウスは明らかに嫌そうな表情をしているし、海賊たちは恐れおののき、ムルはアクビをして興味が無さそうだ。

 頭に乗っていたアスピが反論をしてくる。


「もし、以前のように襲ってきたらどうするのじゃ?」

「そのためのお前たちだ。なんとかなるだろ」

「軽いのぉ……」


 アスピとしては本心からそう言っているわけでもない。

 最大戦力のノアクルさえいれば、対処することも容易いだろう。

 しかし、それでも実際に戦った者からしたら、冷酷無比な古代兵器を復活させるのはあまり良い気はしない。

 と言っても、ノアクルのゴミに対する好奇心は消せないだろうと諦めている。


「では、スキル【リサイクル】だ! ふはは! 蘇れ、再生メカよ!」


 ノアクルのスキル【リサイクル】によって、古代兵器が多少形を変えながらも明らかな破損が修復されていく。

 機嫌が良さそうなノアクル以外の周囲の面々は、警戒していつでも攻撃できるようにしていたのだが――


「ん? どうした、動かないぞ?」


 修復された古代兵器たちは起動しなかった。

 以前のようには動かず、ただのオブジェのようになっている。


「古代技術に詳しいアスピ、どうしてかわかるか?」

「いや、ワシもそこまで昔のことを覚えとらんしのぉ……。うーむ、たぶん――」


 アスピが、同じ古代技術の産物である魔大砲を例に説明してくれた。


 魔大砲もノアクルがスキル【リサイクル】で修復して、その場合はすぐ使えるようになった。

 ゴーレムを利用して作った魔導エンジンもそうだ。


 しかし、それらはスキル【リサイクル】の補正が効いて完成したに過ぎない。

 使っていてわかったことなのだが、ある程度普及した品物などには補正がかかって、綺麗に作り上げてくれる。

 それが特注品に近い物に対しては、そこまで補正がかからないのだ。


 あとは単純に今回の古代兵器は複雑な作りとなっているのもある。

 たとえれば、ただの木の箱を修理するのと、精緻な音を要求されるバイオリンを修理する差みたいなものだ。


「ふむ……なるほど……。なら、なんとかなるかもしれないな」

「こやつ、本当にわかっておるのか……」

「フンッ、つまりお前以上に古代技術に詳しい奴を連れてくればいいんだろう」

「普通の魔大砲でさえ常人が、スキル【リサイクル】を使わずに直し、運用するのは大変じゃからのぉ……。一部のドワーフたちならそれくらいできるかもじゃが、パルプタの古代兵器とまでなると……」

「それなら、いつものように使えるゴミを探し出せばいいだけのことだな! ついでに古代技術が使われている他の物の調整とかもやってくれそうだ! ふはは!」


 そんな人材、砂漠の中から一粒の砂金を探すようなものだ。

 前向きすぎるノアクルに対して、一同は溜め息を吐き出すのであった。

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