お前はゴミだとイカダで海に追放されたので、無駄スキル【リサイクル】を使ってゴミ扱いされたモノたちで海上都市を築きます ～棄てられ王子の最強イカダ国家～

大量の素材と海賊団をゲット

　敵の脱出用ボートが去って行くのを見ているノアクルと、それを追撃したくてウズウズしているムルがいた。

「ね～ね～。あれは追わなくていいの～？」

「狩猟本能でも疼くのか？　あれは追撃する価値もないゴミだ。権力者というのは財産を失い、威厳も消え去ってしまったらあとは自然と瓦解するだけだ」

「ふ～ん、そういうものなんだ～？」

「……いや、何もかも失っても、人間的に優れている奴なら慕われ続けるだろうな。アイツのように」

　ノアクルが視線を送ったのは、ゴールデン・リンクス号から降りてきたジーニャスだった。

　勝利に喜ぶ海賊たちの声援を背に、船長の風格を見せている。

「ノアクル様。此度のご助力、誠に感謝致しますにゃ」

「よせよせ、俺たちの間に堅苦しいのは無しだ。もう一緒の釜でメシを食った仲間だろう」

「はい……はい……！　ノアクル様、本当にありがとうございましたにゃ！　ここまで長く険しい人生でしたが、ようやく目的が叶いました！」

　ジーニャスは感極まって、ノアクルに抱きついてきた。

　それまでノアクルは王子としての態度を保っていたのだが、身体全身で感じる柔らかさに驚いて、動けなくなり、顔を真っ赤に染めてしまう。

　それでも驚異的な自制心を発揮して、ふんっと笑い飛ばした。

「俺はお前みたいなゴミが好きだからな。そう、使えるゴミが――」

「オロロロロロロロロロロロ」

「って、おい！　人が決めゼリフを言っているときにゲロを吐くな！！　この海賊コスプレ猫！！」

「し、失礼しましたにゃ……でも、慣れてきたのでうまくノアクル様への直撃は避けましたにゃ……！　さすが天才！」

「そんな方向の天才にはなりたくねーな……」

　とりあえず吐いたモノを片付けてから話の続きをした。

　どうにも締まらないが、らしいといえばらしい。

「それで、例の話は考えてくれたか？」

「はいですにゃ。みんなとも相談しました。ご迷惑でなければ、海上都市ノアでお世話になりたいですにゃ」

　この模擬戦に介入することによって、ノアクルが得るものは何か？

　それはジーニャスと海賊たちだった。

　ノアクルは事前に、彼らに自国民となることを持ちかけていたのだ。

　機動力に優れる海賊団が味方になってくれれば心強い。

「でも、本当にいいのか？　私掠船免許を発行したのはアルケイン王国で、その効力は消えてしまうだろう」

「いいんですにゃ。どうせ腐敗したアルケイン王国に仕えるのはまっぴら御免なので。みんなもそれを身を以て知りましたにゃ」

「そうか、それなら海賊団のみんなも住みやすいように、これからの発展を約束しよう」

　ノアクルとしては、今までは自由気ままにやっていく気分だったが、大勢の人間が乗ることによって身が引き締まる思いだ。

　多少は王子らしくなってきたのかもしれない。

「ノアクル様、そのことなんですが……。男の海賊たちはいいのですが、その家族である女性や子どもも一緒に村からついてきてしまっていて……ゴールデン・リンクスの中だけで生活するのは大変そうで……」

「ああ、場所が足りないのか。そうだな、ちょっとイカダを大きくするか」

「え？　かなりのスペースが必要ですよ？」

「問題ない。見てろ……スキル【リサイクル】」

　いつの間にか近付いていた、ウォッシャ大佐たちが乗っていた船に向けて手をかざす。

　すると大量の素材ができあがり、それを使ってイカダをどんどん拡張していく。

「こ、ここまで大きく！？」

「いやぁ、大量のゴミはありがたいな！　乗っている奴は使えなかったが、こちらは使えるゴミだ！」

　木材、金属、ガラス、杖などが数え切れないほどに入手できた。

　それを使って急ごしらえだが、海賊のための家も造っていくことに決めた。

「ほ、本当ですかい！？　オレたち、ここに住んでいいんですか！？」

「海の上に家って信じらんねぇ！」

「ノアクル様、一生付いていきやすぜ！！」

　どうやら海賊たちも気に入ってくれたらしい。

　もうここはただのイカダではない。

　ノアクル王子による、世界唯一の海上国家ノアだ。