第24話 使徒

 ヨウスケです。僕は、現在、王都近くの廃砦で闇魔法の罠に嵌って動けないでいる。まあ、女神様(英国面)の神力をお借りするまでもなく、勇者(英国面)の力を発揮すれば、簡単に脱出できるけど、面白そうなのでダークエロフな男の娘に付き♂合ってやることにした。


「お前ッ!許さん!闇の女神様ご立腹!!」


 闇の女神様平らなムネ族が何だって?言いがかりにも程がある。闇の勇者ソフィーの件なら女神様(英国面)からお許しを得ているからなッ。大体、ソフィーを騙す方が悪いだろ。闇の女神様的には、チョットだけお手伝いさせた程度の認識に違いない。女神様たちの基準ならば500年という年月は刹那かもしれないが、ソフィーはルクセンブルクの普通の少女だぜ?


 赤髪ふっさふっさのハインリッヒ国王様にもちんま可愛いロリBBAグランドマスターにも言ってないことなのだが、過剰に集められた闇の魔力によりソフィーの魂は鍛え上げられていた。彼女の魂は神族化していたんだよね。で、彼女の魂を肉体から解放するとどうなる?お察しの通り、時空を越えて神域に達することなど容易であり、それどころか地球に顕現することなども可能なわけだ。


 僕の敬愛してやまない女神様(英国面)が、ソフィーのその後について、ご機嫌な笑顔(とても貴重)で教えて下さった。


 神族化を果たしたソフィーが真っ先にしたことは、自分を捨てて、さっさと地球に転生したクロードを見つけ出して殴り倒したことだった。殴られた人は、お気の毒にとしか言いようがない。前世のことなど忘れているだろう。突然、目の前に、白い羽を生やした天使のように美しい女性が現れて、全力グーパンチですよ。特殊な性癖に目覚めないことを地球の神々に祈ろう。

 次にソフィーがやらかしたことは、このダークエロフ君——名前をノアと言う——が激おこな理由でもあるけど、闇の女神様と取っ組み合いの喧嘩で勝ちを収め、ド・ゲーザを強要したことだ。焼き土下座じゃないのは温情ではないだろうか?とも思うが、闇の女神様の腹の虫が収まらず、意趣返しに僕に神罰を叩きつけたらしい。

 然し乍ら、ここで誠に残念なお知らせです。ジョン・ブル・魂ッ!のレベルアップとカスタマイズによって、この世界の属性持ちの女神様たちからの干渉を全て無効化できるようになったんだわ。女神様(英国面)万歳!

 闇の女神様も直接手出しできないので、このダークエロフ君(使徒)を嗾けたようだ。勇者や使徒は互いに殺し合うことができるから、戦盤の駒同士で仲良く殺し合いしてね☆、ってことのようだ。


「エセ勇者に死を!」


 ノア君は、目を怒らせて、体に似合わない大きな杖を僕に向けて叫ぶ。確かに僕は、光の勇者でも闇でもなく、四原質の火・風・水・土でもない。エセと言われればエセだね。正確には調と称される存在らしいが、大聖女様レベル逸脱者じゃないと看破できないのだろう。適当に勇者(英国面)ってことでいいんじゃないかな?


 ノア君は闇魔法の詠唱を開始した。長ったらしけど大丈夫か?途中で呪文とか間違っていないかな?

 おお、闇が収束して、ノア君の体が浮かび上がってるぜ。足下の闇の魔法陣から紫色の光があふれてる。長いローブの裾も持ち上がって、まぶかに被っていたフードも外れて、煌めく長い髪がゆらめく。その美しさが闇魔法とマッチして、大魔法の迫力が増してゆく。

 ハダけたローブから、肢体が見えるけど、その服装はエロすぎませんかね?あれですか、闇の女神様の趣味ですか?出す♂とこ出して♂たわたわ(意味深)になるあれっぽいです。

 ノア君が一所懸命構築している大魔法なのだが、流石にまともに食らうと痛そうなので、そろそろ邪魔でもしようかと考えてはみたが、銃剣突撃では完全少女な貴重な男の娘が消滅しそうだし、かと言って.303ブリティッシュも最近威力増し増しなので、上半身がごっそり消し飛びそうだ。さて、どうしたものかと僕が悩んでいると意外な援軍が到着した。


「あっ」と僕。


「あっ」とノア君。


「……」

 

 援護兵さんがノア君の近くに顕現すると、銃剣を器用に操って、ノア君の魔法の大杖を振り払い、床に転がした。ノア君の闇の大魔法の詠唱が途絶える。呆気に取られているノア君の鳩尾あたりに援護兵さんは銃床を無慈悲にも叩き込む。


「ぅぐぅ……」


 ノア君は、No.4 Mk Iの衝撃を受けて気を失い、その場に崩れ落ちた。大丈夫だろうか?それにしても援護兵さんってば容赦ないぜ。

 援護兵さんは親指を立てる。僕もそれに応えて親指を立てる。嬉しそうな援護兵さんは、ロープを取り出すとノア君を梱包した。剥ぎ取ってあったノア君のローブを丁寧に畳んで、気を失っているノア君の枕にする。優しいぜ。だがその縛り方は優しくないだろうという僕のツッコミを気に留めることもなく、2回ジャンプを決めて、虚空へと消えた。

 作業中の援護兵ガスマスクさんを観察していたのだが、よく見るまでもなく、腰つきが女性のそれであった。ガスマスクで顔がよく見えないのだが、BFは女性キャラも使えた筈なので、多分、援護兵(女性)だったのだろう。まあ、これ以上詮索するのはやめておこう、女神様(英国面)のお考えは計り知れない。


 とりあえず亀甲縛りされたダークエロフな男の娘をこのまま放置するのはいろいろな意味で拙い。冒険者組合の本部にでも届ければ付随するさまざまな問題は解決してくれるだろう。そう考えた僕はノア君を持ち上げてお米様抱っこした。彼の杖とローブはマジックバックに収納済みだ。


 なるほどなるほど。これは良いモノだ。フフッ。此奴め良い尻をしている。


 廃砦から外に出た時にノア君が気がついた。もそもそと動きながら何とかして、僕のお米様抱っこから逃れようとする。だが、無駄だッ!

 

「はーなーせーッ!」


「暴れるなら、尻を撫で回すぞッ!」


「へ、変態ッ」


「ハハッ!変態ではない。紳士ぞッ?」


「あ、あ、ッ、な、撫でるなぁーッ!!」


 ほらほら此処がええのか?ええのんかぁ〜?フリーダさんが何故僕をお米様抱っこしたがるのかなんとなくわかった。愉悦。愉悦。確かにフリーダさんも僕の尻を良い尻だといって、お米様抱っこ中に撫でたりしていたな。


「うぅぅ…や、やめてぇ、暴れないから……」


「うむ。最初から大人しくしておれば良いのだ」


 悪いおっさんに捕まったダークエロフな男の娘の運命など決まっておるのだ。覚悟いたせぃ。


 王都の道を梱包済みのノア君をお米様抱っこしながら練り歩きつつ、冒険者組合本部にたどり着くと、受付嬢が大慌てで、デルミーラさんに繋いでくれた。


「ユウスケ。何てことをしてくれたのじゃ」


 あ、ヨウスケです。まあユウスケでも良いですけどね。


「殺されかけましたからね(嘘)。拘束しました」


「……」


 ノア君は亀甲縛りから解放されているが、デルミーラさんの側で携ようにして、ぷるぷると震えている。ロリとショタの絵面が可愛い。うん。kawaii!!


「此奴は闇の女神様の使徒様だぞ」


「知ってますよ」


「今は蝕の時代。常に光と闇が競っているのだ。四原質の女神様たちは中立なのだぞ」


「あー。闇の使徒様を逮捕したのはまずかったですか?」


「まずいと言えばまずいのだが、お主はただ身を守っただけで、闇の使徒様をどうこうするつもりはないのであろう?」


 僕は勇者微笑(英国面)マジキチスマイルで答える。


「まあ、好きにせよ。だが無体なことをはたらくでないぞ」


「了解デス」


 ご無体なこと(意味深)はしないけど、何か罰は必要かな?そうだ猫耳の刑に処すことにしよう。ああ、そうしよう。


『……』


 ——お褒めいただき光栄にございます。女神様ッ!


 なるほどなるほど。女神様(英国面)はショタ猫耳がお好きでしたか。なるほどー。なるほどー。なるほどー。(エコーチェンバー)。


『貴方は新たなハーレム要員パーティーメンバーを手に入れました』


 ——なんだろう。かかり気味ですね。


 これでますます、イロモノ系勇者パーティー(笑)の完成度が高まったぜッ!……って、ハーレム要員なのかッ!?世界の声シスログさん、ひょっとして、く、腐ってやがるぜ、ってやつですかい?


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