第11話 女神様

 ヨウスケです。やらかしました。女神様は大変大変ご立腹です。神域に呼び出され、僕は正座状態で説教されています。


 だがちょっと待ってほしい。これは果たして僕の罪なのだろうか?この異世界いや辺境の城塞都市が悪いのではないだろうか?何処に行っても珈琲しか出さないこの街に罪があるのではないか?そもそもこの国が紅茶を輸入禁止にしているというのが、諸悪の根元と言えるのではないだろうか?


『……』


 ——問題はそこでは無いと?珈琲などという泥水を旨いと思うことが罪?


 なるほどなるほど。全宇宙の珈琲好きを敵に回すような発言をなさいますね。流石、女神様です。理不尽です。

 そう言えば、紅茶大好きな某有名提督さんも泥水発言されてますかね。おそらく全宇宙の半分は女神様の味方ですよ。ああ、反省してます。していますとも。

 だいたい僕は日本人ですよ?お茶好きに決まってるじゃないですかッ!えっ?現在の日本では、珈琲の消費量がお茶を抑えて1位なんですか!?し、知りませんでした。日本人も堕落しちゃいましたね。


『……』


 ——反省が足りないから一週間マーマイトの刑ですか。そうですか。


 そこで目が覚めた。宿屋のベットの上だ。先ほどまで、アントンさんのお店の応接室にいて、アントンさん自慢の珈琲をご馳走になっていた筈。枕元のサイドテーブルの上には、金貨がぎっしり詰まっていそうな皮袋が置かれている。これは、大猪の素材の売上の一部、僕の取り分とのことだ。

 残念ながら魔石は未だ売れていない。領主様が欲しがっていて、権力を使って無理やり、お手頃価格で売らせようとしているらしい。権力者は何処にいっても理不尽だ。


 そして僕の女神様も理不尽である。僕の手にはマーマイトの瓶が握られていた。ジッとマーマイトのラベルを眺めていると世界の声シスログさんが告げてきた。


『貴方のジョン・ブル・魂ッ!ブレーブ・ハートに派生技能のイギリス料理が追加されました』


 ——いやいや。イギリス料理が技能って何なの?


 大体、イギリス料理には、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド、それにインドの料理とかいろいろありますぜ?


「とりあえず、フィッシュ&チップスで試してみるかな。久しぶりに食べたいぜ」


 僕は、SMLEを召喚した時の感覚を思い出し、フィッシュ&チップスのイメージを浮かべた。具体的なイメージが大切。匂いや味や食感や暖かさなどなど。本場のフィッシュ&チップスは食べたことないけど、東京イチなら蒲田駅で食べたことがある。悪くなかった。


『貴方は初めてのイギリス料理を召喚しました』


『貴方はフィッシュ&チップス(一人前)マーマイト7個を手に入れました』


 ——あ、はい。


 ルビで上書きするとは新しい。僕の女神様は創造神だけのことはある。世界の声シスログさんも一瞬戸惑っていた。その後、何や彼やあったが、女神様に謝り倒して、罰を軽くしてもらった。朝食毎にパンにマーマイトを塗り食すること、それを一週間続けるだけで許してもらえるそうだ。


 ついでにと言っては何だが、この城塞都市では紅茶が手に入らないことを掌握された女神様は、ご自身で嗜んでおられる銘柄を下賜してくださった。有り難や有り難や。

 紅茶の瓶には女神様印パンジャンドラムのイラストのラベルが貼られていて、今にも爆発しそうな不穏な気配が漂っているが、気にしたら負けだ。

 毎日欠かさず飲むことで、神力(英国面)を摂取できるそうです。飲めば飲むほどに神力(英国面)が強化されるらしい。ところで神力(英国面)って何?

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