第11話コスプレ_客室係
腰まわりは痺れたまま。
ベッドの縁に腰掛ける。
あらためて、自分の状態を確認する。
キャミソールにはロープの跡。
白いスリムパンツには、ロープの埃と跡が残っている。
鼠径部は、汗ばんだようになっている。
落ちたロープから、両足を抜く。
片脚ずつベッドに持ち上げる。
そのままベッドに転がる。
転がる勢いのまま、大の字になる。
そこかしこに痺れ感が残る。
が、全身が徐々にリラックスするのが分かる。
ようやく、縛めと仕掛けから解放された身体。
このまま寝てしまいたくなる。
が、ここからが本番。
とその時、ドアの錠を解く音がする。
咄嗟に、ベッドサイドのロープの端を掴む。
ドアに背中を向けて横たわる。
その体勢で身構える。
「あらあら…」
意に反して、女性の声。
それも年配らしい。
油断しないで様子を伺っていると、更に彼女が言う。
「心配しないで、あなたの世話係よ」
「…」
驚いて、痺れの残る身体で寝返りをうつ。
彼女が視界に入る。
いくらか膨よかな女性。
彼女が、客室係の制服らしき姿で、ワタシを見下ろしている。
「ロープを、一旦緩めるよう言われたけど、必要ないわね」
「…」
混乱して黙っていると、彼女が続ける。
「食事を持ってきたわ、もうお昼よ」
「何日のお昼?」
思わず口にしている。
彼女が、部屋を見回し、何かを確認して言う。
「そうね、金曜日の12時まえ」
彼と別れて2日以上経過している。
彼、どうしているかしら?
益々、こうしてはいられないという思いが強くなる。
そんなことを考える間に、彼女がランチを用意する。
食事をトレイに載せて、ベッドの端に置く。
薬の影響を考えてか、軽いものにしてある。
そういう気を遣う余裕は、あるらしい。
とても食べられるとは思わない。
が、スープだけは摂ることにする。
何とか、小さなスープを飲み干す。
ワタシの様子に、彼女が促すように聞く。
「他は食べないの?」
「今は、要らないわ、ありがとう」
思わず応えている。
彼女が、食事のトレイを片付け、ルームサービス用のワゴンにしまう。
背中を見せる彼女に、背後から近づく。
「ごめんなさい」
そう呟くワタシ。
彼女が、きょとんとして振り返る。
ワタシと正対するタイミングを見計らって、当身を当てる。
びっくり顔の彼女が頽れる。
ワタシより小柄だが、いくらか重そうな彼女を抱きかかえるように、ベッドに横たえる。
「ごめんなさいね」
もう一度呟いて、とりかかる。
まず、彼女が着ているベストのボタンを外す。
ベストを開けて、その下のシャツブラウスのボタンも外す。
片腕ずつ、シャツブラウスとベストを一緒に抜き取る。
豊かな胸と実用的なブラが現れる。
ワタシのカーディガンを脱いで、下着姿の彼女の上半身にかける。
代わりに、キャミソールの上から身に着ける。
彼女のシャツブラウスとベストを。
次に、彼女の腰を両手で探る。
ウェストのフックを外して、ファスナーを開ける。
膝丈のタイトなスカートの両裾を引く。
スカートを引き下ろして脱がせる。
ワタシの腰にあててみる。
やはり、幅には余裕がある。
が、丈は短い。
客室係にしては、ワタシにはミニ過ぎる。
が、仕方ない。
贅沢は言ってられない。
パンプスを脱いで、素足で立つ。
白いスリムパンツのボタンを外す。
感覚の戻った指先で、ファスナーを下ろす。
両手でウェストを掴んで、スリムパンツを脱ぐ。
涼しい季節に入っている。
手にしたスリムパンツを、綺麗に広げる。
それを、彼女の下半身を覆うようにかける。
幅は足りないが、何もないよりはマシ。
ワタシは、いつもスポーティなショーツを身に着けている。
それが、ひどく汗ばんでいる。
鼠径部には、ロープで締めつけられたアトが、まだ新しい。
徐に、彼女のスカートに、片脚ずつ通す。
余裕のあるウェストを、引き上げる。
腰を抑えないと、ずり落ちてしまうサイズ。
ウエストを摘まないと…。
スカートを押さえたまま、ルームサービスのワゴンを確認する。
ワゴンの下段に、裁縫道具とクリップの類がある。
大きめのクリップを二つ取る。
腰の両脇を摘んで、二箇所を挟む。
ウェストが程よく詰まる。
スカートの丈は、太腿の中ほどまでしかない。
やはり、客室係にしては短さが際立つ。
が、この格好で脱出するしかない。
部屋の入口に近い鏡に、映してみる。
上半身は、ベストもシャツブラウスも、ゆったりしている。
袖が多少短いくらい。
下半身は、客室係にしては、太腿出し過ぎな印象。
それ以外は違和感なさそう。
ふと思う。
コスプレみたい。
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