第8話縛め_仕掛け
○縛め_仕掛け
夢?
というより、幻覚に近い。
覚めては、薬を打つことを繰り返されている。
既に、急性の中毒になりかけているのかもしれない。
ふと気付く。
身体が、硬くないものの上に横たわっている。
が、目隠しも口元のテープらしきものもそのまま。
当然、妙な仕掛けの縛めもそのまま。
鼻腔から、空気を感じる。
此処が、最初の場所よりマシなことが分かる。
口元が濡れている。
薬のせい?
テープらしきものの中で、涎を垂らしているらしい。
ずっと縛られていて、分かることもある。
朧げに、妙な縛めの仕組みを理解する。
首のロープは、手より足を動かすときに、きつく締まる。
手を動かす分には、多少締まるが、息ができなくなる程ではない。
代わりに、鼠径部のロープが、これでもかと締めつけられる。
初体験並みかしら?
ワタシは未経験。
雑誌や人の話から、推察するくらいしかできない。
まさかとは思うが、大事な場所が傷ついたらどうしようと思う。
彼にも触れられていないのに。
しかし、このままジッとしてはいられない。
何を間違えられたのか?
アルバイトアシスタントを務める彼への人質。
ただ、奴等は”彼氏”と言っていた。
彼氏彼女の仲、と思われたのかしら?
目隠しと口輪の下で、知らずに顔がほころぶ。
が、一刻も早く抜け出したい状態は変わらない。
思わぬ昂りに、背中を押される。
まず、今の居場所を確認する。
手足をあまり曲げ伸ばししないようにしながら、五感と身体全体で探る。
適度なクッション性と広さがある。
ワタシは其処に横たわっている。
普通に、ベッドの上に感じる。
ただ、生活臭?はしない気がする。
色々考えを巡らせていると、ある種の芳香が漂っていることに気付く。
そう、生活臭がない芳香の空間。
そして、心地いいベッド?
そうか!
此処は、どこかのホテル?
そう考えると、匂いが、ホテルの部屋のように思えてくる。
部屋の配置を想定する。
手足を動かさずに、横たわった身体ごと転がる。
パンプスの爪先で探る。
ベッドらしいモノの端を感じる。
意を決して、両脚を一気にベッドから下ろす。
ベッドサイドに座る形。
その瞬間、首のロープが締まる。
「ぐふっ…」
分かっていても、反射的に噎せる。
すぐに立ち上がる。
と同時に、軽く咳き込む。
鼻だけで呼吸を整える。
落ち着くと、パンプスのソールに感じる。
カーペットか、毛足の短い絨毯のような感触。
場所の想定に、益々確信を深めるワタシ。
パンプスを擦るように、小さく交互に動かす。
全ては縛めの仕掛けの所為。
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