第7話幻覚_目隠しのまま


彼がブロンドを靡かせる。


ワタシに向かって駆けてくる。

笑顔になるワタシ。


が、直ぐに表情を失くす。


ワタシの格好はというと。

ボロボロの髪とメイク。

服装もあちこち破れて半裸状態。


隠れようとするが、身体が動かない。


彼が近づいてくる。


諦めて立ちすくむワタシ。


目の前にきた彼の顔が、鬼の顔に変わる。


ワタシは、声にならない悲鳴をあげる。


ふと気づく。


何度か、夢か幻覚かを見たらしい。


気怠さの残る身体を感じる。

身動きは、できないらしい。


今度は、きつく縛られているのかしら。

目隠しは、幅広のテープ?が頭を一周しているらしい。

口元も、同じようなテープが顎から首筋までまわっている。


両手は、やはり後ろ手に縛られている。

またかと思う。

両手に下肢を潜らせ、前にまわすことから始める。


両手を動かそうとした瞬間、小さく呻く。


どうなっているの?

首と下腹部に痛みが走る。


恐る恐る、ゆっくりと動かしてみる。


両手のロープが、身体中のロープと連動している。

不用意に動かすと、アチコチ締まるらしい。


鼻だけで呼吸を整える。

もう一度、身体のロープを確認する。

といっても、目隠し状態なので、感じ取るしかない。


目隠しのまま、頭の天辺から感じ取る。


頭は、目と口元にテープだけ。

首にロープらしきものを感じる。


上腕部にも、胸の辺りを通って一周するロープがある。

肩から肘までに、何回か通っている。

気のせいか、キャミソールのカップを、挟むようにしている気がする。


腰のあたりも、体幹を何周かしているらしい。

あと、鼠径部にもロープが通っている。

どこをどうまわっているかは分からない。


その下は、両膝上を一周。

そして踝で両足首が縛られている。


恐らく、身体の前面と背中側とで何箇所か結び目らしいもの、を感じる。


ロープが、縦にも結ばれているのかしら?

手足を動かすと、首と鼠径部が締まる仕掛け。


なんてこと。

怒りと何かで、身体の芯から顔まで熱くなる。


一呼吸吐いて縛めを解く方法を考えてみる。

が、この状態から道具もなしに、自力で脱出することは難しいことに気付くのみ。


諦めて、襲われる睡魔に身を任せる。


どのくらい眠っただろう。


目覚めると、いくらか頭がすっきりしている。

と言っても目隠しの下の瞼は、持ち上げられない。


薬の効果は薄くなっているらしい。

少し肌寒さを感じる。

この時期、夜明け前は少し涼しいくらいになる。


自分がキャミソールと薄いカーディガンに、生地の薄いスリムパンツしか身に着けていないことを思い出す。


肌寒さを堪えていると、離れたところで物音がする。


耳をすますと、微かに話し声がしている。

日本語?英語?母国語ではないらしい話し方。


悪態をつくような聞き取れない言葉が混じる。

ご近所の国か?


ドサッと、大きなバッグでも床に抛るような音が二つ。

静かになる。


暫くして、人が近づいてくる気配。

話している言葉は理解できない。

が、近隣の国か?


寝たふりで様子を伺う。


すぐ近くまできて、かけられる男の声。


「もう、薬はさめてるだろ?」

「…」


「どちらでもいいが、少し移動する」

「ワタシを、どうする気?」


「おとなしくしていれば、悪いようにはしない」

「目的は何?」


それには答えず、徐にワタシに近づく気配。

自然と身体を固くする。


次の瞬間、身体が浮く。

大柄な男の肩に抱え上げられたと気付く。


同時に、首と鼠径部が締まる。


文句を言おうとすると、男が言う。


「少し痛むが、死にはしない」


首の痛みより、鼠径部が締め付けられることに羞恥が走る。


これでもまだヴァージンなのに。

傷ついたらただじゃおかない。

自分に言い聞かせながら、痛みを堪える。


どうやらエレヴェーターに乗るらしい。


「少し寝てもらう」


そう言われ、またと思う間もなく、右腕がチクッとする。

エレヴェーターが下りはじめる。


ワタシの意識も深くおりていく。

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