弟子参上!!

大企業から弟子志願

 大企業から弟子として出向させられた田中幽玄タナカ ユウゲン


「ゆ、幽玄君というのかい。それは本名で」

「残念ながら本名です。キラキラといいますかホラーネームですね」

 はははと笑う彼になんというのが正解か悩んだ挙句にやめておく。

 その名前で大企業に入れたということはそれなりに立ち回りのうまいやつなんだろう。

「接客業は初めてですので、よろしくお願いいたします」


「こちらこそよろしく」


「さっそくで悪いんだが、大企業ならコンプライアンスも企業秘密の情報の扱い方も熟知しているよね」


「ええ。叩き込まれておりますし。出向という形にはなりますが、そんな失態を犯したら本格的にクビ候補になってしまいます。やっと勝ち取った会社なので吸収できるものはすべて吸収して成長したいんです」


(なかなかのハングリー精神を持っているようだ)

 これからの生活に安心できそうだ。



「いや、味や店内の様子を記事にされたことがあってさ。それからピリピリしているんだ。ライバル店舗も近いから一つうまくやってくれよ」


「わかっております。立地についても置かれている状況につきましてもおおよその検討を下調べをしておりますのでご安心ください」


「優秀で助かるよ」


 結論とし彼は有能だった。

 コミュニケーションもうまいというかこちらの言う前に行動してくれて的を得ている回答ばかりだ。

(きっと同期で出世頭候補なんだろうな)

 そう思わずにはいられない。

 自分とは違う優秀な人を見ながら、店長は頭の中で考える。

(うれしいと喜ぶべきなんだろうな。こんなにも優秀な部下を派遣してくれるのだから)

 ノウハウをすべて奪い取られて吸収合併にならないように最後のコツだけは秘匿しておこうと経営者の脳は警鐘を鳴らす。

 このような感覚は大切にするべきだ。

 大企業の考えることには裏がありそうだ。




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