常連昇格2

小説家の彼に影響されたわけではないが、新規のお客様を開拓するのも必要なことだ。

若い女性には悩み事がたくさんある。最近思い詰めてスマホを見ている女性もその一人だ。

「何か悩み事でも」

「ええ。少し困っています。ってああ、すみませんつい心の声が」

ここに来る人は少々生きることが不器用なのだ。


優しすぎたりもそうだし、押しの強い人に負けてしまう。

いわゆるメンタルが弱い人にも通じる雰囲気を持っている。

優しいのは良いことだし、柔らかい雰囲気も大切なことだとは思うのだ。

しかし現代社会においては致命的にもなりかねる。

悪い男に騙されたり、金目当ての女性にブランドものを買わされたり。


「本当にありがとうございました」

彼女には案の定、借金があった。返済し終えて、今の彼氏を紹介してもらった。

牧石マキイシです」

「どんなビジネスを?」

「メガバングの総合職です。今は総務にいます。経理になりたいんですけど、文系だから計算遅くて」

「ちょっと頼りいないけれどいい人を見つけたようだね」

「これで女性2人目だね。これからもよろしく」

「あと内装やマスターのことは口外しないように。目立つのが好きではないんですって」


「はぁい」


世の中にはいろいろな考え方の人がいる。

不器用なりにあがいて生きていくしかないのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る