ライバル店主に休憩を


 店内改装が終わった。

 新しく設けた開店日。

 皆、花束をもって来店してきてくれて大忙し。


 カラーン


 皆がわいわい盛り上がってくれた後、16時半を過ぎてチラホラと帰っていく。

 17時には

 ライバル店主が来店した。

 幸いにもほかに残っている来客はいなくなっていた。


「いらっしゃいませ」


「おすすめをいただけるかな」

「かしこまりました」

 しばらくした後に出すコーヒー。


「さすがにおいしいですな」


 近場のライバル店の店主。

 最近、ウチのメニューに近いものを出していると噂になっている人物。

 買い付けの時にもちょくちょくと顔を合わせる機会がある。

 先日は小説家の彼を連れていることもあり、警戒はしていた。


「小説家の彼とはどういう関係なんですか?」

「雇い主とアルバイトの関係だね。彼はよくシフトに入ってくれていて助かっているよ」

「……そうですか」


 きっとライバル店の店主のほうが自己顕示欲が高い。

 彼ならば店内の様子を書いたところでトラブルにはならないはずだが。


「彼はウチの内装だけは気に食わないらしくてね」

「だからうちに来ていたのですね」

「ああ、つい彼が言う味付けになってしまっているようで申し訳ないね」

「商売ですから」

「そう。善悪が判らない若造にいろいろ施しをしたから、次からは気を付けた方がいい」

 ずるがしこいところも嫌な店主だ。

「おしゃべりが過ぎました。ゆっくりしていってください」

「ああ、そうさせてもらうよ」


 ライバル店主はとても優越感に浸っている様子だった。

 悔しい思いもあるが、仕方ない。

 自分のみる目がなかったとも言えるし、

 そこまで営利目的にやっていないとも言える。


 確かに戦略的にはまずかったと思っている。

 しかしお客様には恵まれている。

 爆発的な人気ではないが、一定のファン層がいるというのが強みだ。

 ライバル店主にはそれがまた気に食わないのだろう。





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