店内改装

 店内改装の日がやってきた。

 カウンターの色。

 相席のソファ。

 それぞれを変える。


 耐震性と防火性、

 それに騒音対策もしてもらうので、

 1か月近い大工事だ。



 高すぎる費用だとは思わなくもないが、

 これからも安心して調理をしたいから

 多少の無理はした。


「これでのんびりできそうだ」

「え? 改装するんですか?」

 私の経営状況を一変させた彼が立っていた。

「ああ、そうだ」

「いい内装だったのに。これからが楽しみですね」

「書かない約束なら入店してもいいよ」

「そんなに嫌ですか?」

「ああ」


 迷惑そうに答える。

 接客は苦手な人へ態度を変えるのはご法度であることはわかっている。

 それでもこの事態を引き起こした人だから好意的な態度はとれない。


「おーい。買出しにいつまでかかっている」

「あ、すみませんね」

 彼を探しに来たのはここらで有名なお店の店主。

 なぜだかカフェとランチを提供する競合他社に当たるからかな。

 ぜかウチを目の敵というかライバル視してくるのだ。

 実にめんどくさい。こちらにはこちらのペースがあり、客層もかぶっていないはずなのに。


「ああ、あなたでしたか。おや、店内変えるんですか?」

「ええ。いろいろありましてね」


「そうでしたか。改装したらぜひごちそうになりたいものです」

「そんな暇ないでしょうに」


「時間、作っていきますよ」

 話をしていたらバイトの彼はいなくなっていた。

「ではまた近いうちに」

 面倒なことにならないといいが。

 不安な気持ちを押し殺し、他店の店主へと会釈を返した。

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