店内改装まであと1日

 店内改装の予定日前日。

 最後の出勤日だ。


 この日も髪を明るい茶髪、制服自由の高校生が話しかけてくる。


 2人組であり、田中未来たなか みく

 田口美穂たぐち みほというようだ。

 高校生の中でも彼女たちは毎日のように来るから

 名前まで覚えてしまった。

 喫茶店にくるよりも

 ぜひ勉学に励んでほしい。


「ねぇー、マスターさん。紅茶派なの?」

「ええ、まあ」

「飲みたーい」

「私も」

 秘密のメニューだったのに簡単にバレてしまった。


「紅茶は常連さんにしか出さないことにしているんだ」

「えーケチ」

「ここ基本ブラックだし、砂糖何杯も入れないと市販の味にならないし」


 文句を垂れる高校生たち。


「市販品は誰もが美味しいと感じられるように

 甘めに作られているんだよ。

 疲れている人も多いしね。

 そうだ。カードを作ろう!」


 常連さんにしかお出ししないカード。ほかのお役様もごく少数ではあるが、なぜ特別扱いなのかとトラブルになった件が数回あるからだ。

 いい考えかもしれない。


「えーッ! また敷居が高くなるじゃん!」

「友達とアッサムのみたーいー」

「はぁ、なら足繁く通ってもらわないとね!」

「なら、めっちゃ安い価格出してよー。一品でいいからぁ」

「そうそうワンコイン以下で飲める、

 タピオカミルクティーもびっくりな美味しいやつ」


「贅沢な注文だなぁ」

 確かに引退して時間のある人たち向けに出している。

 学生にはちと高いだろう。


「考えておくよ」

 その日は引き下がってくれた。

 最近の高校生たちは聞き分けが良くて助かる。


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