ある常連さんとの会話②

「大学生のあの彼すごいねぇ

 マスターが出ているじゃないか?」

「すごいねぇ」

 こんな声が多く聞く。

 すごくはない。

 無断盗用だ。

「マスター、顔、般若になってるよ。怖いって」

「そんなにいやなのかい?」

「もちろん」

 こちらのお客様にはレモンティーだ。

「仕事量が倍になって、正直きついのさ」

「なるほどねぇ」

「いつもおいしい品をありがとうね。どうせなら正規メニューにすればいいのに。もったいない」


「需要ありますかね?」

「どうだろうね。私は好きだが、需要となるとコーヒー関係じゃないのかい?」

「そのとおりです」

 売り上げがまぁまぁなのはコーヒーだからなのだろう。

 メニューを切り替えたら黒字になるかどうか。

 それにメニューも大きく出してある。

 

 今からこの配分を変えるとなると地味だが、大変だ。

 コーヒーメイカーと紅茶の器具の配分を変えるのは非常に面倒だ。

 できないことはないだろうが、導線もコレで決定してしまっているし。

 

 メニューの改定も地味ではあるが、大変な作業であることには変わりない。

「まぁ、昔は需要を教えるところに勤めていたんだ」


 年老いたといえど、まだその時の数字と経験は時代に違わないはずだ。

「これでやってみるさ」

 近くにはライバルとなる喫茶店もあるが、客層が被っていないからまだ楽ではある。



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