マスターの嘆き
悲しいかな予想はあたり、インタビュー記事の雑誌発行から一週間後。
だいぶ女子高生の姿が増えてきている。3分1くらいが女子高生になった。
「これがあの小説の」
とか
「ほんとまんまだよね」
と声がする。小声なのは助かるが、さざなみのようにアチコチで会話されれば意味はなくなる。
彼の事でテレビの取材がある電話もあった。
勿論断ったが、媒体を変えて取材要請が来る。
SNSで話題になっているそうだし、新聞、ラジオの突撃企画など。
全く、断るのに苦労する。
彼のファンに聖地巡礼とか言われて慌ただしい毎日に変わったのだ。
「ありがとうございました!」
カラァーン
扉を出ていく音がして、一息つく。
忙しいのは腰に来るのだ。
気圧のせいか忙しさのせいか、ここ2、3日はコルセットと膝のサポーターをつけての勤務だ。
ここに残ったのは長年付き合いのある
カツさんとみんなには呼ばれている。将棋が大好きな65歳だ。
「その分売上も伸びるし、マスターは生き生きしているし、いい事づくめだろう?」
カツさんに問う。
「常連さんにはどうなんですか? 過ごしにくくないですか?」
「若い太ももが見れて眼福だよ、いつお迎えが来てもいい」
このエロジジイ。
確かに胸元と太ももがよく見える制服の仕様になっている。
標準的な制服なのか、カスタマイズした制服か、はたまた指定のない学校なのか。
わかりかねる。
流行りだろうが、いただけないと思う。
世の中にはこんな色ボケジジイが多くいるのだから。
「そんなにいやかい」
「嫌だねえ。
聖地とかなんとか映えるとかどーでもよくって。静かに過ごせればいいのになぁ」
「儲かっただろ? 内装変えるまで我慢しておけや」
「ええ?」
「年代物のカップ30組手に入ったんだ。こんなの何だが」
スマホを見せられた。
マスター好みのデザインだ。
「良いねぇ。値はどれくらいだい?」
「みみかしな」
ゴショゴショ話す。
「良いねぇ。支払えるからそれらの代物予約させてくれよ、絶対だよ」
売上も一日一日が激的に伸び、譲り受けた年代物のティーカップなどなど取り替えるだけの予算は余裕で捻出出来た。店内の雰囲気も少しずつ変えなくてはならないがそこは仕方ないだろう。
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