第3話 悩みと最近の若者


 彼が女子高生の悩みを聞いてみたのは理由があった。

 彼はバイト先で遭遇した恋愛話、友達との喧嘩話、彼氏と親友との三角関係など確かに小説のネタには事欠かないかも知れない。

 

 だがしかし、バイトしている以上は守秘義務が発生するし、それらを書き起こし、世の中に発表だなんてとんでもない。

 

 青筋立てて説教したものの、彼はどこ吹く風だ。

 

 彼は悩みも2、3種類繋げたり織り交ぜたりして個人の特定のつかない形で小説にするそうだ。

 

 やはり最近の若者は歪んできているのかもしれない。


「個人の特定は絶対にしないように、させないように。嘘も多少は織り交ぜなさい」

「はぁい。性別はかならず変えますし、ぼかしますし、安心してくださいっ」


 今、流行のハートポーズで返された。格好よくサマになっている。


 これは女子がほうっておくわけがない。

 

 ヒヤヒヤした夏休みが終わり、バイト雇う生活も終わりを告げて、彼はまたただの客に戻った。

 

 10月13日

 

 嫌な情報が飛び込んできた。


 彼が文芸作品として応募したものが佳作を受賞したというのだ。

「ありがとうございました! これもマスターのおかげです。是非また雇って戴ければと」


「おめでとう、ただもう雇うことはないかな? 守秘義務が理解できるまでね!」

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る