第2話 よく来てくれるお客様

 それからというもの彼は金曜日、土曜日と来てくれる日が増えてきている。

カタカタとPCのキーボードを操作するときもあれば、何かを書き付けて帰るときもある。

 習慣化したのはコーヒー豆を買っていってくれること。

 コーヒーの味が良かったのか、店内の雰囲気が良かったのかはまだ謎だ。

 夏休みにはいって彼はここでバイトしたいと言い出した。

「いや、人を雇うほど忙しくないしな、別のバイトをしているんだよね? そっちでシフトを増やしてもらえばどうだい?」


 やんわりと止めたが聞かない。

「本当に平気だよ? 一人で事足りるよ」

「メニュー開発しましょう。是非っ!!」

彼の熱意に負けてしまった。

「簡単に出せるもの、材料費があまり高くないものでおねがいしよう」

けっこうな難題だと思う。

自分は飲みもののこと以外は、あまり興味もなかったから研究なんてしていない。

 これからもするつもりはなかった。

 キャベツ、レタス、キュウリ、トマトこれで女性受けするらしいが果たしてどうだろうか?

「昨今甘いものが多いんですよ。健康的に痩せたい人は多いですしね、期間限定メニューってことでいかがですか?」

「そうしよう」

意外と野菜不足な人は多い。単純に野菜不足を補おうとすると糖分が使われていることが多い。ダイエットや筋力をつけようとするとイマイチなのだそうだ。

今使っているメニューにきゅうりと、トマトを足すくらいなんとかなるか?

期間限定メニューなら辞めるときも自然だし。夏休みが終わったら

もとにもどしてしまえばいい。



数日後、完成した。

普通の平凡なサラダのはず

なんでこんなにもたくさん女子が?

「イケメン目当てもありますけど、健康的なメニューってきいたのー」

「うちの食事肉ばっかりで。なかなか偏ってるから」

「野菜高いし」

 急がしいあまり家庭が食事を提供できないという事情もあるらしい。

 更には愚痴る生徒も出てきた。

 イケメンの彼のお陰であるが、ここまで謙虚な人も珍しい、人柄だろうか。

ウンウンそうかとときにはバイト時間終了後も話し込んでいた。

勿論、時間外手当は出ない事も条件にいれてあるし、彼も重々承知しているはずだ。


 なのだが、彼は困った顔をして答えるのだ。

「相手の話を聞いてたら止まらなくなってしまって、すみません」

 何度注意しても治らなくてその点だけは困ったものだ。

 彼の狙いは後日わかることになる。





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