5-15 辺境伯領の現状(後)
「それとキャロル様」
「えっ、えっ⁉︎」
「一応お伺いしますが、カーヴィアル帝国内でクラッシィ公爵家が
隣のエーレを気にしたのか、あからさまに媚薬を
「ええと……結局
「キャロル?」
「待ってエーレ、ちょっと整理させて?
頭を抱えてしまったキャロルに、エイダルが「やはりな」と、唸った。
「そもそものエーレの以前の資料にあったジャガイモ以外に、裏で薬の取引もあったんだろう。もしかすると、アデリシア皇太子殿下との既成事実に持ち込もうとした、そのクラッシィ家の令嬢、マルメラーデのイエッタ公爵家と縁戚関係にあるかも知れん」
「……国内にはいられなくなりましたから、他国の親類を頼って、カーヴィアルを離れたらしいとは、後日耳にしました。すみません、どこに行ったかまでは聞いていなくて……」
「当時のおまえの立場で、本当に令嬢が国を離れたかどうか、どこに行ったのか、そう言った事を確かめるのは、無理だろうからな。だがまあ、その感じだと間違いなくマルメラーデに亡命しているだろうな」
「多分……」
「おまえはクラッシィ公爵家には
「……はい。私ちょっと不思議に思っていた事があったんです」
「不思議だと?」
「ルフトヴェーク側の話なんですけど、フェアラート、ルッセ両公爵領、ミュールディヒ侯爵家。この派閥に属していた内の誰が、ユリウス第二皇子を
「――――」
キャロルの言葉に、ゆっくりとエイダルの目が見開かれていく。
「いや……私ですら、先帝の病が
「あの……コレ、多分ですよ? 証拠のない、仮のお話ですけど――多分、イエッタ公爵家か、ファールバウティ公爵家か、どちらかの中に5ヶ国全てを支配下に置きたい、なんて言う大それた野望を持つ人間が、恐らくはいるんじゃないかと……」
口元に手をやって、言葉を選びながら呟くキャロルに、エイダル以外面々の目も、キャロルへと向けられた。
一方のエイダルは表情が険しくなり、キャロルに話の続きを促した。
「そもそも、私が
リウス
「死にかける……」
詳しい事情を知らないストライドが眉を
キャロルも、聞かなかった事にするように話を続ける。
「イエッタ公爵家には、ユリウス皇子にも、アデリシア殿下にも、年齢の合う姫君がいないと前にルスランから聞きました。と言っても、縁戚関係にあるミュールディヒ侯爵家出身の姫が、側室とは言え、皇帝の妻の地位に収まっている以上は、ルフトヴェークは意のままにしやすいと踏んだ。だからカーヴィアルの方に、こちらも縁戚関係にあるクラッシィ公爵家から、皇妃を出そうと目論んだ。カーヴィアルとディレクトアは、元々、軍を相互に常駐させる程の友好関係があるから、急いで手を打たなくても良いと思った」
一つずつ、確認を取るように口を開くキャロルに、エイダルも頷いて見せる。
「……筋は通っているな、今のところ」
「ありがとうございます。ただ、クラッシィ公爵家は基本的に迂闊な人が多いですから、案の定アデリシア殿下を籠絡する事は出来なかった。挙句、中央にすら寄り付けなくなった」
迂闊……と、エーレが呟き、エイダルは、ここは返事の代わりに顔を
二人とも、クラッシィ公爵家主導だと、心のどこかで思っていたからだろう。
「そもそも私なら
「二年?――ちょうど、今か」
「正確には半年程前からですけど」
と言うか、キャロルがその可能性に気が付いたのは、たった今だ。
恐らくアデリシアは、証拠がなかったとは言え、とうの昔に察していた筈なのだ。
――ため息と共に、キャロルはその事実を、居並ぶ面々に告げる。
「アデリシア殿下への縁談です。――マルメラーデ王家、ご正妃様筋からの」
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