3-6 弟が重要人物になりそうです
「ともかくも、設定だろうと真実だろうと、この話は近々、大臣達以外にも
そう息をつくデューイに、ようやく心理的動揺から立ち直ったキャロルが、小首を傾げた。
「お父様……逆じゃないですか?」
「逆?」
「今、ディレクトアのスフェノス公爵家が、どんな立場にあるのか分かりませんけど……もし〝
「――――」
ルフトヴェーク公国内の事にばかり目を向けていたデューイは、思いがけない事を言われ、目を
「あと、真実を知らせるか
恐らくその頃には、
何も知らせない
何も知らないが故に、誤った情報を真実と思い込んでしまう危険がある。
この期に及んで、それは致命的だ。
立ち上がったキャロルは、目を
「私は、一両日中にはワイアード辺境伯領に発たなければならないので、この件に関して、後はお父様に一任せざるを得ません。最後どのような決断を下されようと、私はお父様を支持します。どうか2人の事、宜しくお願いします」
「キャロル……」
「キャロル様……」
「ふふっ……私の帰国が遅れたら、全てを投げ打って、家族で侯爵領に戻るって言う選択肢が取りにくくなりましたね」
やや茶化すようにキャロルが
「ああ、まったくだ。
「そこは
「呼びたくもないし、
「……ですねぇ」
「確かにそう言う意味では、カレルにあらぬ事を吹き込む
「お父様。真実にしろ設定にしろ、情報の
「⁉︎」
ギョッとなったのはデューイ一人で、隣に立つ
「……気を付けよう」
デューイは若干不本意そうだが、自業自得なのは自覚がある為か、それ以上は抗弁をしなかった。
「キャロル。どうせ〝
「御輿?……あ⁉︎」
「デュシェル、一夜にして
遠くには、ディレクトアの王位継承権や、スフェノス公爵家の継承権、更に現在、極端に皇族が少ない、ルフトヴェーク公国の皇位継承権まで、デュシェルは一気に背負う事になる。
もちろん実父であるデューイは、余程の問題がなければ元々の予定のままにレアール侯爵家を継がせるつもりでいるのだろうし、実際にそれを明言してはいるが。
では、エイダルは……?
キャロルの不安を見透かすように、デューイが
「自分の目が黒いうちに本気で復讐したいと願うなら、まだ5歳で器量の分からんデュシェルを
中年太りとは無縁で、エーレが年齢を重ねたかのような、ロマンスグレーの
誰よりも反発してきたが故に、恐らくデューイは、誰よりもエイダルの実力を理解している。
そのデューイから見れば、レアール領の邸宅で、
当主以上の器にはなり得ないのではないか――そう思えて仕方がないのだが、むしろそれは、デューイには本望だとも言えた。
「そう……でしたね、お父様」
「キャロル。お前には、他国とは言え宮廷近衛の経験があり、いざとなってもこの先
はアルバート陛下がお前を守るだろう。まあ、そうでないと私も困る訳だが」
後半、やや忌々しそうに聞こえたのは、気のせいではないだろう。
「デュシェルも、いずれ侯爵家を継ぐ者として、この先はある程度、自分であしらう事を覚えて貰わねばならん」
「ああ、はい、そうですね。そこは私も出来る限り手を貸します。姉弟不仲説が流れでもしたら、火に油ですし」
「ああ。それで……だな。私自身はカレルを守る事に、この先は注力したいと思っていて……いや決して、お前やデュシェルを
突然歯切れが悪くなったデューイに、キャロルがふと飲みかけの紅茶から顔を上げると、デューイは珍しく、バツが悪そうに明後日の方向に顔を逸らしていた。
――本当に、この
「大丈夫ですお父様。むしろ安心して、この後出発出来ます」
「キャロル……」
「私も、15年会っていなかったからと言って、お父様に含むところがあるとか、そう言う事はありませんし……母を大切にして下さる
「………そうか」
もう一度何かを噛みしめるように「そうか」……と、デューイは呟いた。
「キャロル。私はカレルには『設定』として、お前の後ろ盾を強化する為の措置として、今回の事は話す。
「ああ……デュシェル連れて『せめてこの先少しの間だけでも、デュシェルのお
「………っ」
確かに……と真顔でロータスも呟き、デューイが思わず頭を抱えた。
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