(24)大人と王子の対決

 ニーナは今飾り付けられていた。

 何故かというと〖衛星電話〗を教えてからイヤーカフやイヤリングを作ったり買ったりした男性3人衆がコレを付けろだのこっちが良いだのと取っかえ引っ変えニーナに付けているからである。


「エブラフ老師、もう良いでしょう? 通常使うイヤーカフはエブラフ老師が作った物にしたではないですか。お父様もこの1つで良いでしょう? エイダ様はそんなにウサギを付けないで下さい大きすぎます!」


 ニーナはぷんぷんと3人衆に意見する。


「ニーナは欲がないのぅ、もっと一緒に儂と飾りを楽しもうではないか! この『妖精の抜け殻』を砕いて散らした物など美しいじゃろ?」


「だから、エブラフ老師! 何でそんなに高価な物をポイポイと使っちゃうんですかー(涙)」


「エブラフ老師はすぐに金にものをいわせて……価値観が破壊しているのだから! ニーナに甘すぎますよ師匠!」


「エブラフ老師は自己採取してはお蔵入りさせるから、価値が分からぬのです! 市場価格を少しは知って下さい! そして私をたてる事も覚えて下さい。でないと私の父親としての出番が減るでは無いですか」


 今日も通常運転で『ギャーギャー』言い合う大人達であった。


「ニーナお嬢様、もうヘアピンに半貴石を付けてもらった髪飾りにしたらどうですか?」


 ニルスがイヤーカフばかり作ってもと言いたげに提案してきた。


 ニルスの装備も進んできている。〖守護〗の付いた帯剣ベルト、革の腰鞄ヒップバッグ型【アイテムバック】、ジャケットの裏地にも〖守護〗とあれから覚えた〖空調〗魔法、今は着ていない〖守護〗の掛かったマントそして〖衛星電話〗のイヤーカフに、普通のロングソードだ。過保護と言われようとニーナは気にしない。ロングソードには何も付けていないのだから!


 そんな時、ガイアス王子がやって来た。


「何だ? 皆エブラフ老師の部屋に居たのか。探したのだぞ。ニーナ、誕生日おめでとう!」


「ありがとうございます、ガイアス王子様」


「王子、ニーナの誕生日は一昨日じゃぞ?」


「……本当か? ニーナ」


「え! その、はい。一昨日でした」


「カート公爵! 嘘をついたのか? 今日来れば祝う事が出来ると言っていたではないか!」


「えー……とですね。我が家に来るのは宜しくないと陛下が仰ったので(汗) 実際祝う事は出来たではありませんか」


 どうやら、陛下に口止めされて誕生日を誤魔化したらしい。ガイアス王子はお怒りである。


「ニルスだったか、そなた随分と装備が良くなったのではないか?」


『『『『あ、ソレ聞くの?』』』』


「はい、実はお嬢様が心配だと言って〖守護〗をかけた装備を下さったのです。いつも一緒におりますし護衛だからと」

 ニルスはガイアス王子を挑発するかのようにニコっと笑った。やめなさい!


「何だと! ニーナ、私の分はあるだろうか?」

 (え。考えてなかったよ……)


「王子様は沢山の護衛が付いておりますし、まだ陛下からも注文がありませんでしたので……ごめんなさい。まだ無いです」


 ガイアス王子はショックを受けたようで、顔に両手をやり天を仰いでいる……。


「ガイアス王子、あの、今お持ちの装備に〖守護〗をお掛けしましょうか?」


 ニーナは提案してみた。


「本当に付けてくれるのかい? ニーナ私はニーナが良ければ遠慮なく頼んでしまうよ?」


「(ビクッ)今お持ちの物だけでお願いしますね」


「フム。このベルトを頼むか。このジャケットにも出来ないか?」


「両方共、見栄えの事もありますから裏にインクで刻印を付けるだけの方法で良ければ出来ますが。それでよろしいですか?」


「うむ。それで頼もう」


 ニーナは【アイテムバック】からラピスラズリのインクを出し刻印して乾燥させた後魔法を掛けた。


「〘守りし印を持つ物、防汚し防御す、時の流れも忘却せよ〖守護〗〙〘〖範囲〗〙」


 ニーナは魔力で包み、掛け終わった後で王子に両方返した。


「ニーナの温もりがするようだ……!」


「「「王子様! 何て事を言うのです! ソレを言うなら返しなさい!」」」


 3人は揃って一言一句間違えずに言った。何て仲良しなのだろう。


「もう言わぬ! だから3人共許してくれ」

 ガイアス王子はションボリしている。3人だって言いそうな言葉だなとニーナは思った。


「エイダ、何故そんなにイヤーカフを作ってるのかな? しかも右耳分だけしか無いようだが?」


 ガイアス王子は不思議そうな顔で聞いている。まずいことを聞かれたぞ!


「それはですね、えーと……。これに魔法を掛けて使うんですよ」


「どうやって使うのかな? エブラフ老師これは何だろうか、聞いた事のない物のようだけど?」


「それがのぅ、魔法を掛けると離れた所でも話せる様になる道具になるんじゃ」


「どうやってかな?(ニッコリ)私も是非欲しいなぁ。父上は何も言っていなかったぞ。知っているのだろうか? ニルス! お前は持っているのか?」


「……はい。持っています王子様」


「誰が作れるんだ?」


「「「「『エイダ』『エブラフ老師』『ジルフォード』です!」」」」


「「「言うな!!」」」


「ほー、3人共仲が良いな。ではエイダが作ってくれ。もちろんニーナも持っているのだろう? 作ってもらえれば私は毎日でもニーナと話せるな!」


「ダメです王子様! 父親として許す事は出来ません! ニーナにもやらなければならない事があるのです。王子様からの通話では無視出来ないではないですか!」


(ジルパパ、本当にありがとう!)


「そうですぞ、遊びで使うものではありません! 必要連絡事項を伝える為に作ったのですから! ニーナが【次元の狭間】に居る時の対応策なのですぞ!」


「そうじゃ!【次元の狭間】を他人が1人で行き来する事も〖呼び掛け〗や〖念話〗が使えない事もありつくられたのじゃからな!」


 エイダとエブラフ老師の顔は『お主(王子)にはやらぬ』という顔だ。ありがとう! ニーナはとっても感謝していた。


 実はまだ陛下にさえ〖衛星電話〗の開発は伝えていないのだ。先に王子様に持たせたら大変なことになる。【衛星電話】によって陛下から直ぐにと呼び出される頻度が高いのはジルパパである。ジルパパはそれを避けたい為にまだ秘密にしていたのだ。


「そうだ! 私は陛下の所へ革のバックを【アイテムバック化】するのに便利なインクと刻印を作ったと言わなければ!」


「そうじゃな! インクも出来たからニーナは【家】を貰えるのぅ。楽しみだの!」


「そうでした!【家】の話をしましょう! 設計図を描き、必要な物を書き出しましょう」


「まずは、1階建てか2階建てかを決めないとですね! ニーナどうしたいですか〜?」


「エイダよ、ニーナはまだ4歳になったばかりじゃぞ? 1人で階段を使って落ちたりしたら大変ではないか!【次元の狭間】に建てる家は平屋でなければダメじゃ!」


「師匠、それでは部屋数は増やしても良いですよね? 調合室や薬草の乾燥室、本を収める場所や薬草や物質などの保管棚、キッチンに風呂……いや溺れたら危ないな。シャワーにしようトイレや洗面も魔法で汚水を消すシステムで作ろう! ニーナあとは注文としてどうかな? ベットルームや居間も必要だし、私達が行った時の部屋も欲しいなぁ」



「エイダ様、私の【次元の狭間】に居座る気ですか?」


 ニーナはジト目でエイダを見る。


「ニーナ、よく考えてくれ。皆で【ニーナの狭間】に避難するとするだろう? この間のようにカミナリが鳴ったら行くかもしれないだろう? そしたら客室が必要ではないか!」


「エイダ様、カミナリの度に来るつもりだったのですか? しかも【狭間】には天気も関係無ければ今なんて家はなくソファやテーブルだけですよ? 外に居れば良いじゃないですか」


「「ニーナは酷いな! 儂(私)を締め出す気か!」」



「エイダ、カミナリがどうしたというの?」


 あ。ガイアス王子がツッコミ入れてきたー

 エイダ様、どうする〜? と表情で促す。


「王子様、何でもありませんよ! 調合の時にカミナリに邪魔をされただけですよ!」


 ……エイダ様、鼻息荒いよ?


「まあ、それなら良いが。ニーナ私も【次元の狭間】に招待してくれないか!?」


「王子様、それは陛下が許可されてないのです! ニーナは最初違う場所に出てしまいましたから行方不明にでもなったらイカンと言ってらっしゃいました」

 ジルパパは何とか止めようとしている。

(ジルパパ、頑張れー! 王子様を嫌いではないけど独りの時間も必要よ!)


「そうじゃ、その辺は陛下と相談なされ! 儂らじゃ対応出来ませんからのぉ」


「陛下は難しいと思いますが、説得なさってからにして下さいね! さあ、王子様行きましょう! 私も報告がありますから!」


 ジルパパは上手く先導して王子様を連れ出そうとしていた。


「そうだ! 私はニーナに誕生日プレゼントをもってきたのだった! 忘れるところだったよ。ニーナこれを受け取って欲しい」


 プレゼントの箱の中にはガラス細工の猫が踊るオルゴールが入っていた。


 その踊る猫は日本にあった耳にリボンの猫『こんにちはケイティ』というキャラクターにソックリだった。レインブーツ履いてたけど。


神様!! 絶対に他にも転生者居るよね?! 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る