(16)ここにも居た愛玩動物!
ニーナが自重しないで作ってしまった貨幣袋は、陛下の物になるかと思いきや、【塔】の物となった。
保存出来る量が多過ぎて、資料扱いになってしまったのである。
そして、ニーナは今悲しい気分だった。
「ニーナこの『魔力量計測グラス』も〖修復〗出来るんじゃないか? その魔力量だしな」
そう言って、エイダはニーナの壊した『魔力量計測グラス』を持ってきたのである。
目の前には、箱に『魔力量計測グラス』の砂粒かと思う様な小さな破片まで入っている。誰がここまで拾ったのだろうか……。
「エイダ様、エブラフ老師。これに〖修復〗の魔法を掛けるのですか?」
「面白そうだと思ってのぅ。〖修復〗の魔法もニーナのものを見たいしな!」
エブラフ老師は楽しそうな顔をしている。
「ニーナの魔力量で壊れたなら、計測グラスも直るとではと思いましてね!」
エイダは目を輝せ早くやって見てくれと言いたいようだ。
「分かりました……。やるだけですからね? 直らなくても知りませんよ?」
ニーナは仕方ないと、始める事にする。
「〘時を超え元に戻りて現在にあり〖修復〗〙魔力量計測グラス直ってね!」
ニーナが魔力で計測グラスを包んでいく。
ボンヤリと欠片達が光ったかと思うと欠片は積み上がっていき、最後の一欠片がくっついた時、記憶にある魔力量計測グラスより5センチ程高さが伸び大きくなった。
すると頭に浮かんでくる図陣と魔法文字列が。〘魔力を使いし
五重の八角形の中には八芒星。外二本の八角形の間には魔法文字が並んでいる。
「エイダ様! エブラフ老師! 〖古代物生成〗という魔法を覚えました! これはどういった魔法なんでしょうか。古代種人の作った物を生成出来ると言うことでしょうか?」
「「図陣と魔法文字は!?」」
「覚えてます! 紙を下さい。上手く書けないけど説明に必要です!」
「コレに描いてくれ!」
エイダはガラスペンと紙を3セット持ってきて、ニーナとエブラフ老師にも渡し自分も席に着いてニーナの手元を覗き込む。
「今回は八角形の五重です。そして、ここに文字が入るのです。八角形の中には八芒星で一本中に『魔力を使いし
「「
「これは、古代種人の遺物を再生出来る魔法かも知れません!!」
エイダは興奮気味だ。
「ニーナ、『魔力量計測グラス』は更新されたんじゃないか? 魔力を流してみたらどうだ?」
エブラフ老師は使えるか気になるらしい。
「分かりました。また壊れても知りませんからね」
ニーナは『再生された魔力量計測グラス』へと魔力を流す。
表示されたのは魔力量【99999999】【光・火・水・風・土・独】となり測りきれないのか魔力は光として溢れて流れている状態であった。今度は割れてはいない!
「【独】って何だろう?」
ニーナは検討もつかない。
「何であろうな? 独自魔法という事であろうか?」
エイダはそれらしく言う。
「独自魔法となると、ニーナ以外は使えぬのかのぅ? この『魔力量計測グラス』ば大幅に計測可能になっとるし、是非とも覚えたいのだがなぁ」
エブラフ老師も顎をスリスリ考え込んでいる。
「エイダよ、アレを試してみたらどうじゃ? ほれ、古代種人の作った“守りのローブ”にされていたという刺繍の
「エブラフ老師、あれは大変貴重な物ですよ! それを使うのですか!?」
「もう、判明もつかぬ。今回再生出来れば研究も進むだろう?」
「分かりました。ニーナ、持ってきますからそちらにも〖古代物生成〗の魔法を掛けてみて下さい」
「はい、分かりました」
ニーナの返事を隣で聞いていたニルスは片眉を上げ
「ニーナお嬢様、一気に魔力を流さないよう気をつけて下さいよ」
などと、ボソリといった。
持ってこられた古びた布は15センチ四方の
「この布に魔法を掛けるんですね?」
「「そうだ」」
「では……。〘魔力を使いし
意に反して魔力は吸い込まれるように取られていく。光で包むだけではなく魔力は貪欲に引き出されていった。
「「!!見ろ!」」
そこに現れたのは草木染めの様な黄緑色の布。鹿を中心にし、その周りを動物達が手を繋いで踊っている図案なのだが……。
ここにも居たのだ、ウサギが……。
(古代種人もウサギ柄好きなのですか?! 神様もウサギ好きですかーー?!)
「ウサギがおるな」
「ウサギ柄ですね、ニーナの影響でしょうかね?」
「違います!!(涙)」
ニーナは精一杯否定したが隣でニルスが『ウサギ柄の呪いですね!』とニヤニヤしていた……。
「再生は出来たんでしょうかね? これは“守りのローブ”の一部、何か試してみましょう。魔法の水で濡れるか試してみますか?」
「そうだな、それが無難だろうな」
「〘水よ、いでてこれを与えよ!〙!!」
エブラフ老師の手に持たれた
「どうやら、【守り】はあるように思えますが……。どの程度か分かりませんね」
エイダは覗き込みながらエブラフ老師に話しかけた。
「うむ。この図案も針子部屋へ送って刺繍してもらい再度確認が必要そうじゃの!」
その図案を横から見ていたニルスは
「その中心に居る鹿、頭の上に何か有りますね」
「ん? どこだ?」
「これですよ。これは花冠か?」
ニルスが指を刺して指摘する。
「花冠の鹿といえば、カート公爵家の領地にある遺跡にレリーフがあったな!」
「そうじゃ、あのガラム遺跡から最初の『魔力量計測グラス』が出たんじゃ! その後儂が研究して作ったものが、1つ南の地域に今はある」
「この花冠をしている鹿さんのレリーフは、私のお父様の領地にまだあるのですか?」
ニーナは見てみたかった。
「あるにはあるが、崩れ落ちないように人の出入りを厳しくしている」
それを聞いたニーナは名残惜しそうに図案を見ていて気がついた。一匹だけおかしいのである。動物の中に傘を差している猫が居るのだ。
(何故、古代種人の遺物に傘の刺繍があるの?)
しかも猫。あの有名な『レインブーツを愛する猫』みたいな猫である。傘差してるけど!
古代種人は『仁衣菜』の居た世界から来たのだろうか? 気になる所だ。
「その図案の写しを、描き終わったら私にもくれますか?」
「何か気になる事でもあったか?」
エイダは探るような目でニーナを見ている。
「そこに居る、猫の柄が気になるのです!」
「あぁ、これか。何を持っているのだろうな? 水害避けの祭事に使う物にも似ているな」
「そのような物があるのですか!」
「陛下だけが入る事を許されている、被り物だ。もっと三角錐のようなものだが」
(もしかして【傘】が神聖な物になってる?? 地球と物の行き来があったのかな……?)
「〖古代物生成〗の魔法はまた明日検討するとして、この図案を今日のうちにどうにかしましょう! ニーナ、ニルスお疲れ様。こちらはもう良いから引き続き【アイテムバック】制作をしてくれ。ニーナは空間の大きさを揃える事! 他の者との差が大き過ぎる。この部屋一部屋分で良いそうだ。やり過ぎるなよ」
ニーナは“自重しろ!”と注意されつつ、帰宅まで頑張ったのだった。
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