(4)ニーナへのお客様
今日はポカポカいい天気。ニーナはご機嫌な様子で屋敷内を侍女と図書室へ向い歩いていた。
そこへ、来客の知らせを伝えられたニーナは急いでジルパパの執務室へとやって来た。
「お父様! お客様はどちらですか?」
「ニーナ! 今日も可愛いね! 客だなんて放っておこう。
このクッキー、ニーナの為に買ってきたのだ食べてみないか?」
ジルパパは、甘い物を買ってはニーナに渡し食べている所を観察したがる。
その為、イリスママはジルパパに『虫歯になる』と注意しているのだが……
どうやら、ジルパパはお客様が気に入らないようでクッキーで気を反らしたいらしい。
「お父様、お客様は宮廷魔法使いの方なのでは無いのですか?
ミルク調合士修練希望の方なのでは?」
ニーナはいつの間にか、『ミルク調合士マスター講師』として国王から扱われていた。
報酬としては、貴重な古代魔法を記した本の閲覧許可や希少な魔法素材を国から提供する事などだ。
ニーナは満足し閲覧許可にホクホクしているのだが、ジルパパは避けたい様なのだ。
閲覧するには、王宮へ行かなければならない。持ち出し厳禁の書物である。
閲覧許可はあるのだが、ジルパパから外出許可が出ない為に実際には閲覧出来ていないのが現状だ。
どうにか、進展したいニーナ。
ニーナは思い出した。赤ちゃんの時勝手に使ってしまっていた魔法現象を。
(神様は、イメージが大事! と言ってたよね……。赤ちゃんの時は魔法文字も魔法陣も知らなかったのに使っていたし……)
魔法文字は唱える物ではなく、脳に文字を焼き付け理解し使えるようになるものと考えられている。
ニーナは神様から言語翻訳機能をギフトとしてもらっている為、簡単に魔法文字を読む事が出来る。
だが、ニーナは納得出来ていなかった。
(どうして、魔法文字が先なの……?新しい魔法を作った人はどうしていたのかな?)
ニーナは手に持ったままの、図書室へ返すはずであった古びた魔法の本を見た。
(これは、古くて破れそうな所があったな。直す場所は……)と思い出しながら本の表紙を眺めた。
その時、ニーナは意図せず本へ魔力を注いでしまった。
「あ!」
それは一瞬の出来事。真新しい同じ題名の魔法の本がニーナの手の中にあった。
ニーナは本を『修復』してしまったようだ。
「お父様! ごめんなさい。私こんなつもりじゃ無かったのに」
ジルパパは何も言わず、その瞬間を見たようだった。
「貴方がニーナ様ですね。今した事はどうやったのですか?」
ドアの方向から声が掛けられた。
お客様が見てしまったようである。
彼等2人は、宮廷魔法使いで今日のミルク調合士の手解き相手であったのだが調合士講座は出来そうにない流れになってしまった。
「その魔法の本を見せていただけますか?」と彼等は言った。
ジルパパはニーナから『修復してしまった魔法の本』を受け取り確認する。
中身も確認し、破れていた表の箇所もじっくりと注視している。
「ニーナ、これは何処で知った魔法かな? パパは知らない魔法なんだ。教えてくれるかな?」
「お父様、私も知っている魔法ではないのです。ただ、『直す場所』を考えていたら魔力を注いでしまったの。そうしたら、〖修復〗されてたの」
ニーナは困った顔をしながら話した。
それを聞いた宮廷魔法使い達は大きな声で驚きを口にする。
「新しい魔法か?それとも古代種人の魔法だろうか?」1人が言った。
「ニーナ様は、御屋敷から出られていないと聞いている! ジルフォード様の御屋敷でも流石に古代種人の魔法の書は無いだろう」
古代種人とは、この世界のヒト属の一つで大きな魔法文明を開花させた種族である。
絶滅の危機に合い、ヒト属の一つ人間族と通常呼ばれていた種族との交わりで魔法を継承しようとした事から人間族の中で魔力を持ったものが現れ力の一番強い者が王家の始まりだと言われている。
また、貴族も古代種人の血を引いている。
魔力のあるヒト属は、何処かで古代種人の血が混ざっていると言われており、平民にも時々に魔力保持者が現れている。
古代種人達は、数千年前に絶滅したと考えられており文明の遺跡は研究対象である。
遺跡や書などが残っているのは、保存魔法が掛けられているという所までは解っているが歴史に耐えられず残っているのは少ない。
その希少な書を、今迄にこの3歳時が読める環境にあっただろうか?
否である
「これは、いち早く塔の長に知らせなければ!」
2人は『本を借りる!』と残して、その場の転移陣で転移してしまった。
ニーナは思った。
(待って、まだその本観察したかったのに!)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます