第47話 勇者散る
魔王の森に調査に行った。
入口近くにそいつは居た。
金属で出来ていて一番近い物で言えばSF映画にでてくるロボットだ。
多分、此奴も魔物なんだろう。
「どいて、1発で仕留めるわ! ヘルファイヤーバースト」
大魔道の平城さんが魔法を放った。
ヘルファイヤーバーストとはその名前の通り、地獄の様な業火を相手にぶっつけて更に爆発させる炎系の最強呪文だ、この呪文を受けて生きていた魔物は居ない。
だが、そいつには効かなかった。
というより、傷一つついて無かった。
「なぁ、人間よ何故、私に攻撃を仕掛けた!」
「それは魔物だからよ!」塔子が怒鳴るように答えた。
「ああ、確かに私は魔族だ! だが、言葉を話すしそれなりに知能もある...何故会話をしようと思わないのだ、今とて邪魔なら、「どいてくれないか?」その一言で話がすんだかも知れないのだぞ!」
「魔物は人間を襲う...だから攻撃した、それだけだ!」
「だったら聞こう! ここは魔王の森だぞ、他国の領地に無断で入り、あまつさえそこの国民を殺し物資を奪っていく、そんな人間がいたらその国の国王はそういった輩を討伐するように命令を下す。当たり前の事だと思うが違うのか?」
「だが、森に入らなければ人間は生活が出来ない」
「それも違うぞ! 人間と魔族の土地の大きさの差は2対1で魔族の土地の方が狭い、さらに我々の土地は火山や砂漠も含むから実際には4対1かも知れぬ、それなのに何故、こちらの森にくるのだ」
「だが、人間の土地には森など無いから仕方ないでしょう?」
「それは自分達が悪いとは考えられないのか! 自分たちの森を切り開き街を作った、その結果緑が少なくなるのは自分たちのせいだとは思わぬのか?」
「だが、魔族は邪悪な者だ倒さなければならない..」
この魔物の話を聞いた時に頭の中で戸惑いが生じた。
確かにそうだ、自分たちの世界でどうだったか考えた。
国境を越えて魚を取った人達が捕まったニュースを見た時がある。
いっている事は同じだ..言い返す事も出来ない。
だが、勇者である以上それを受け入れる事は出来ない。
「そうか、我々は随分我慢をしたしさせた、森の外の人間も襲わなかったし、魔族領から外に出て襲う事はさせなかったが...どうやら違ったようだ...邪悪な者..それで済まされるなら..我々も同じにしよう、人間は邪悪だから滅ぼせ..そう言えば良かったのだな..今、解った..私は甘かったのだと..これ以上の対話は要らぬ..さぁ戦いをはじめよう!」
「こんな奴は俺で充分だ、シャイニングブレード!」
聖騎士の最大の技、それを国宝の一つミスリルで出来た剣「始祖の剣」に載せて斬りつけた。
始祖の剣とはこの国の初代の王が持っていた剣で名剣中の名剣だ。
「腕が未熟..」
その魔物はけだるそうに細い腕を軽くふるった、その手にしているのはどう見ても鋼鉄の剣にしか見えない。
「なっ..」言葉を発する間もなく、その一振りは簡単に聖騎士である、大河の足を切り落とした。
五大ジョブの中で聖騎士は一番弱く、他の4つと違い複数人存在する..だからといってこんな簡単に斬られる物ではない..まして彼の装備はミスリルだ。
「こんな物なのか勇者パーティーとは..」
大河の足を拾いに行こうとする塔子を見つけると、その魔物は素早く近づき腕を切り落とした。
「残念、それを私が許すとでも..」
「貴様、よくも塔子を..獄炎の炎よ! 極寒の氷よ! バーストアタック!」
これは賢者が操る魔法の中でも最強と言われる呪文だ、右手に獄炎を宿し、左手にマイナス迄高めた冷気をを作り、交差させて爆発させる。
「うむ、効かないな..それじゃこっちの番だ..それ」
「かは..」
「喉を少し切らせて貰った、これで呪文は使えないな..」
「綾子...援護を頼む..」
「解ったわ、ファイヤートルネード」
「行くぞ、これが勇者の最強技、光の翼だ」
聖剣と大樹を大きな光が包む、そしてやがてその光は一つの塊となり鳥の姿になった。
「切り裂け―」
「うむ、これは当たる痛いな..ならばこうだ」
その魔物は、大河を拾うと光の翼めがけて投げつけた
「大河ーっ」
大河はチリとなって燃やし尽くされた。
その光景を見た瞬間、心が折れた。
一番最初に心が折れたのは大賢者の聖人だった。
「だずけてくれ」
斬られた喉で命乞いしながら逃げようとした。
だが、簡単につかまり連れ戻された。
放心状態の勇者大樹はあっさりと気絶させられた。
「さて、お楽しみの素材回収だ..」
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