第25話 プレゼントと小さな誤解

プレートの更新を済ますと...夜まで時間が空いた。


どうしようか考える。


もしかしたら、ルル先輩とメメ先輩にはもう会えないかも知れない。


そう考えると、送別会みたいな物だからプレゼント位買っておいた方が良いかもしれない。


街に繰り出すと、道端でアクセサリーを販売している人が居た。


可愛らしいブローチが売っていた...こんな物で良いだろう。


二人だけに渡すのもなんだから、ソフィさんとミラさんの分も買う。


こんな物で良いだろう...




夜になる...あらかじめギルドの酒場に予約を入れておいた。


料理も別料金を払って豪華な物を用意して貰った。


最初に着いた僕は、みんなが来るのを待った。


一番最初にソフィさんが来た。


見た感じ何時もの制服と違いお洒落をしていた。


お洒落をしたソフィさんはいつも以上に綺麗だった。


遅れてミラさん、メメ先輩、ルル先輩が来た。


この四人は可愛い..さっきから周りの人がチラチラこっちを見ている。


(あれっ、行き遅れのソフィとミラが男連れ? 嘘...あれ噂のルーキーじゃないの?)


(冒険者を引退するルルとメメでしょう? 落伍者が何でセレス君と食事してるの?さっさといなくなれば良いんじゃない?)


(羨ましいな...黒目、黒髪の男の子とお食事...いいなぁ)



彼らが見ていたのは...セレスだった。


「これ、全部メメの為に用意したの?...ありがとう」


「メメの為だけじゃないでしょう...みんなよ、みんな」


「そうですよ、セレスさんはみんなの為に食事会を用意したんですよ...ね」


「あの、私も良いの? ただ護衛依頼を受けただけなのに..」


「えぇ、ミラさんは碌に報酬も貰わなかったんでしょう? 凄い迷惑かけたからそのお礼です」


「そ、そういう事なら遠慮なく...ありがとう、セレス君」


ミラは素早く移動すると..セレスに抱きついた。


「「「な、何をしているんです(か)ミラさん」」」


周りの三人が引き剥がそうとした。


三人だけでなく、酒場の中の他の女冒険者が一瞬凄い目つきで睨みつけていた。


「うーん、流石、若い子の肌はすべすべだねー 親愛を込めただけだから、怖い顔しないで..ほら、もう離したから..」


「....」


女性耐性の無い僕は顔を赤くして黙る事しか出来なかった。


女性に抱きつかれた記憶は、チクショウ、母さんしかない。


「そう言えば、セレス君....今は1人なんだよね! 何だったら私とパーティ組まない?」


《あれっ、他の冒険者の..特に女性の冒険者が睨んでいる...そうか、銀級の冒険者はこのギルドじゃ数人しか居ない...多分、女冒険者の憧れなんだろうな...》


「すみません、暫くはソロで頑張ります」


「そう? パーティ組みたくなったら何時でもいってね..待っているから」


「はい」


女冒険者たち

《けっ、死ぬまで待っていろっての! 銀級だからって》

《歳考えて行動しろよ...おばさんなんかセレス君が相手にするわけ無いだろう》

《あんなに可愛いセレス君とじゃ釣り合わないよね、おばさんじゃ》



何故かミラさんは周りの冒険者を睨みつけている。


「あの、いい加減に席に着きませんか?」


「そうですよね.すいませんソフィさん」


「セレスさんは悪くないですよ! 悪いのはそこのミラさんです」


「セレスさん、今日はありがとう...メメやルルの為に送別会を開いてくれて」


「うん、ルル先輩やメメ先輩には大変お世話になったからね...この位はさせて」


「ありがとう、セレスさん...でももう私は冒険者辞めちゃったから 先輩ではなくルルって呼んで貰えるかな?」


「はい、ルルちゃん?」


「ちゃ..ちゃん..」


ルルは顔が赤くなる...


「いけなかったかな」


「いいいいいけなくないけど..ちょっと驚いただけ..本当にそれだけなんだよ」


「えールルだけずるい..メメもー」


「はい、メメちゃん...これで良いかな」


「うん」


「あの、食事が冷めてしまいますよ...セレスさん」


「すいません、ソフィさん」


《私だってせめて後少し若かったら ソフィちゃんと呼んで貰いたいわよ》




楽しい時間はあっという間に過ぎて行った。


「そうだ、皆んなにプレゼントがあるんだ」


「「「「プレゼント」」」」


「うん、これいつもお世話になっているから...はい」


「開けて良い!」


「どうぞ」


四人はプレゼントを開けると顔が驚きに変わった。


「あの、セレスさん、これ本当にメメにくれるの? 」


「はい、ありがとう...一生大切にするよ」


《ただのブローチなのに何で..》


「ルルも大切にするよ...本当にありがとう」


「あの、セレスさん、私25何ですけど..いえ何でもありません..有難うございます」


「セレス君の気持ちは解ったよ...うん、頑張って銀級まであがってきて、待っているよ」


《あれっ...どうしたんだ》


「はい、頑張ります」



セレスは知らなかった...前の世界でもプレゼントには色々な意味があるように、この世界でも同じ様にある。



この世界でブローチを渡す意味は 「君に相応しい人になりたい」


勿論、セレスはその事を知らない...だが


四人はブローチを潤んだ目で胸につけた。





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