第13話 楽しい日々の終わりと僕の死(残酷な描写注意)

人間が、草を取りに来るから、この場所は我々にとっては最高の狩場だ。


だから、この草が増えるように他の動物が近づかないようにしていた。


柔らかそうな肉と遊び道具になる人間が簡単に手に入る、貴重な場所だ。


ここに来る人間は弱いから簡単に殺せる、そして我々にとって貴重なメスも多いから貴重な狩場だ。


だがここに来る獲物の数が減っている。


この前に攫ったメスも何人も子供を産ませたから、壊れてきている。


犯そうが何をしようが反応しないから面白くない...そろそろ次を見つけて食べる時期だ。


次を探さなくてはいけない...だがここ暫く、避けるようにこの辺りに人間が来ない。


今日もまた....イタゾ...オモシロイオモチャが二ヒキに、ニクが1ヒキ...ナカマをヨボウ...狩の時間だ。





ルルがセレスからようやく目を離して周辺の警戒に戻ると茂みが動いたような気がした。


持っていた剣を使い、茂みをかきわける。


《足跡がある..しかも新しい、この足跡はゴブリンだ...まずい、囲まれる前に逃げないと》


「メメ、セレスさん、まずい、この辺りにゴブリンが居る、すぐに採取を注意して逃げないと」


「ルル、それは本当なの?」


「良いから、急いで足跡からして、複数のゴブリンが居るから、早く」



だが、遅かった、に取り囲まれたあとだった。


ルルが見つけた足跡は偵察していたゴブリンの足跡では無かった。


既に取り囲み、監視していたゴブリンの物だった。


逃げようとする獲物に対してゴブリンの威嚇が始まった。


「「「「グワーッ、グエー」」」」今迄に聞いた事が無い程気持ち悪い声が聞こえた。


「嘘、もう囲まれていたの?」


ルルは顔が真っ青になっていた。


「もうおしまいだ...」


メメはは体が震えていて立っているのも辛そうだ。


二人は知っていた、ゴブリンに負けた後の運命を嫌に成るほど聞かされていた。


散々になぶり者にされた挙句、犯され、無理やり子供を産まされ最後には殺される運命を。


もし、運よく後で助けられても、その時には人間としての尊厳は全て奪われ街に帰れても、、蔑まれるだけの存在になる。


そんな運命しか無い。


セレスもそれは知っていた。


だけど、本当の怖さを知らなかった。


漫画やライトノベルでは知っていたが、それは架空の話しの事...だから恐怖に押しつぶされずに体が動いた。


囲んでいるゴブリンは10に満たない...もし自分が普通に他のクラスメイトのジョブがあったら簡単に倒せるレベルだろう。


《死ぬかも知れないのに何で冷静になれるんだろうな...僕が死んでもただ、それだけだ、だけどメメやルルは違う女の子としての全てを奪われてしまう》


セレスの頭が思った以上に冴えた。


直ぐにルルやメメに近づき顔を引っ叩く。


「ルル、メメ、しっかりして 僕が切り開くから」


鋼鉄のナイフを引き抜きゴブリンに切り込む、一匹のゴブリンを切り捨てた。


ゴブリンの恐怖はその数だ、一匹なら非力なセレスでも倒す事は出来る。


ひるんだ、ゴブリンの隙間に二人を突き飛ばすように投げた。


「ほら、ルルしっかりして、メメもいい加減にちゃんとして..」


「セレス」


「セレスさん」


「いい加減にしろ、そんなには持たない...早く逃げろ」


怖さを押さえて静かに声を掛けた。


セレスはナイフを構えて二人を守るように立ちはだかった。


幸い、お城で剣術は習った、足止め位なら出来るだろう。


「やだ、セレス、セレス」


「セレスも一緒に逃げて..」


「いい加減にしろ..もう一回殴るよ」


「「セレス....うううううわーん」」


二人はようやく走って逃げて行った。


《うん、これで、まずは大丈夫..だけど、まだ時間稼ぎはしないと 一匹殺したから警戒してくれた助かった》


「「グ、グ、ググ」」


《まだ警戒しているな、だけど此処を後にしたら直ぐにルルやメメを追っていくんだろうな、やるしかない》


僕は再び鋼鉄のナイフをで攻撃をした、さっきの様に上手くいかない。


さっきのは不意を突いたから殺せただけ...僕は普通の人間と同じこんな物だろう。


周りのゴブリンが急に吠え始めた。


警戒していた相手が雑魚だと気が付いたのだろう...そしてそんな相手に貴重な獲物を取り逃がした怒りからかその叫びは大きくなっていった。


《あれっ、これ怖いな..足が竦む、だがやってやる》


ゴブリンが錆びた剣で攻撃してきた。


躱したつもりだが、かすった。そのまま僕はナイフを突き出した。


運良く、ゴブリンのお腹に刺さりそのまま倒れた。


腕が凄く痛い、お城ではゴブリンは雑魚だと教わっていたけど強いじゃないか。


少なくともルルやメメがあそこまで怖がっていたんだ、一般人にとっては脅威なんだろう。


《後、8匹倒せる気がしない、だが一匹でも多く道連れにしてやる》


ゴブリンの槍が僕の足に刺さった。


《叫びたいほど痛い、だけど叫んだところで こいつ等が喜ぶだけだ》


僕はナイフを振り回したが、当たらなくなった。


《此奴ら、頭が良いなもうこっちのリーチを読んでいる》


他のゴブリンが僕の反対側の足を狙ってきた、上手く躱したがまた掠った。


《いて~、この野郎、此奴ら僕をいたぶって殺す気だ、そうはいかない》


僕はタックルのように一匹のゴブリンに組み付き倒した、所詮はゴブリン小学生並みの体格だ、そのままナイフを胸に突き立てた。


頭の中で何かが鳴ったような気がする。


少しだけ体が軽くなった、元よりも軽い。


だが、組み付いて馬なりになった状態を見逃す程甘くは無い。


2匹のゴブリンが僕の腹に槍を刺してきた。


さっき程簡単には刺さらなかった気がしたが、それでも内蔵にまで食い込んだだろう。


《これであと7匹...だけど、案外死なない物だな》


「さぁ、ゴブリンども、僕はもう歩けないぞ...さっさと殺しに来やがれ!」


挑発に乗ったように「グエエアエアエアエア」と叫びながら飛び込んできた。


《バーカ、相打ちなら簡単なんだよ!》


そのまま自分の体で受けると持っていたナイフを頭に振り下ろした。


うん、殺せた。だが、その代償に僕のお腹にナイフが生えていた。


本当は槍の穂先もナイフも抜いてはいけないのは解る...だがこれじゃ動けない。


痛いのを我慢してナイフを抜き取り、穂先も抜いた、勢いよく血が流れだした。


《後、6匹...後1匹で半分だ...ヤバイ意識が朦朧としてきた》


「もう、お前らの目的の女はいないぞ...今更追いかけても無駄だな...僕の勝ちだ!」


「「「「「「グワーグエーグワー」」」」」」


意味が分かったのか怒りが増したように残り全部のゴブリンが襲い掛かってきた。


錆びたナイフで僕の足が斬られた...足が宙に舞い投げ捨てられた様子が見えた。


ナイフを頭に叩き込む、1匹のゴブリンの脳みそが飛び出した。


だが、そこまでだった。


ナイフを持った僕の手を2匹のゴブリンが押さえつけ、僕の腕をナイフごと千切った。


もう片方の手でゴブリンの目を潰した。


だが、他のゴブリンに手を押さえられ僕のナイフで手が刺された。


片方の目が潰れたゴブリンが僕を滅多打ちにしていた。


抵抗できない僕をゴブリンどもはオモチャのように壊していった。


何故か僕はその様子を冷静に見ていられた。


《ルルとメメがこんな目に会わなくて良かった!》


体が寒いな、目も見えない...僕は...死ぬんだ。


そう思うと悔しかった。


《ゴブリンども次に会ったら殺してやる》


その思いと共に...目の前が暗くなった。



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