第14話 元神様との邂逅

暗い中僕は声を聴いた。


暗い世界がいきなり明るくなった。


「おお勇者よ死んでしまうとは何てこった!」


《なっなんだ》



「ようやく目が覚めたようですな」


「貴方は一体誰ですか?」


「わ、私? 私は元神様です」


幾ら何でも怪しすぎる、だってこの神様と名乗る男、頭にチューリップハットを被っていて、右手にゲームソフトを持っているんだもの...


「本当に神様なんですか?」


「本当に元神様です!」


《怪しい、前に会った女神様は、何となく神様に思えたけど、この人はそうは思えない》


「あの、これでも元神なので考えている事は解るぞ」


「すいません、所でその神様が何で僕の前に来たんですか? もしかして死んでしまったからまた転移か転生するとかですか?」


「それは無い...何故なら君は死なないからね...私は君に喜びとお詫びに来たのさ」


「死なない? 喜び? お詫び? 何ですかそれ?」


「まぁ長い話になるが聞いてくれ」


「まぁいいですけど」


「まず、君達が出会った女神リリスだが私の後を継いでまだ20年位だ」


「そうなのですか?」


「うむ、話を戻すぞ? 最近、私は疲れてしまって引退したのだがその原因は、最近の若者にあるんじゃ」


「....それで」


「いや、地元の者を勇者にしても異世界から勇者を呼んでも、最初からみんなが強力な力を欲しがる、実に嘆かわしいと思わないか?」


「普通そうだと思いますが...」


「馬鹿者が! ロマンが無いじゃないか! 弱い者が努力をして強い者を倒すから感動を呼び物語となるんじゃ」


「そうですかね」


「うむ、そうじゃろう? 熊が暴れているから助けて下さい、そんな依頼があったとしよう」


「何ですかそれ」


「まぁ良いから、聞け」


「はい」


「熊が暴れているから助けて下さい。 その代わりマシンガンをあげます」


「はい?」


「マシンガンを貰った人物がそのマシンガンで熊を撃ち殺しました...ほら感動など何処にも無いだろう?」


「いや、だけど住民からしたら、危険な熊を倒して貰うなら早い方が良いですよね? 負けるかも知れない武器や時間が掛かる方法よりよっぽどWINWINな関係ですよね」


「セレス、君までそんなこと言うのか、まぁ今の子じゃ仕方ないのかの」


「その方が犠牲も無く幸せな世界が作れますよね?」


「まぁ 良い、だが儂は力なきものが努力や研鑚をして強い者を倒すのが好きなのじゃ!」


《この神様、若いのかじじいなのか言っている事が解らないな、どっちだ》


「そうですか、それで僕になんの用でしょうか?」


「まずは喜びから...私の作ったスキルやジョブを使ってくれてありがとう!」


「もしかして、このジョブやスキルを作ったのって...もしかして」


「うむ、儂じゃ」


《私、儂 何だこの神様は》


「それで?」


「その能力は女神リリスが作った物に比べると劣るようだが優れた力もある」


「そうは思えませんが...本当ですか!」


「うむ、まずそのジョブとスキルの最大の能力は...死ななくなる事じゃな」


「死ななくなるんですか?」


「うむ、弱いうちに死んでしまったら困るからその様にしたんじゃ、すごいじゃろ?」


「確かに」


「これは、女神リリスのジョブには無い物じゃ...強力な力が使える代わりに命の保証が無くなっておるのじゃ...死なない、これは凄い事じゃないかな?」


「確かにそうですね...もしかしてこれが喜びですか...それじゃお詫びは?」


「君だけは元の世界に帰れない」


「はい?」


「君だけは元の世界に帰れない」


「そうですか? 聞いても構いませんか」


「うむ、君が死なないのはこの世界にそのジョブが括りつけられているからじゃ...死なないようにする為にはそれしか無かったのじゃ」


「そうですか...解りました」


「本当にスマン..」


「貴方がピンポイントで僕を狙った訳じゃないですし、このジョブが無かったら何もない状態でもっと苦労したかも知れません...気にしないで下さい...元の世界に親も居ないし、しいて言うなら世話になった祖父と祖母の事だけが気になります」


「そうか、帰れない君の為じゃ元神として君の祖父と祖母には幸せな人生を約束しよう」


「有難うございます」


「良いんじゃよ! 元の世界に帰るぬ君への特典じゃ」


「所で神様...は老人なんですか? それとも若いんですか?」


「神は皆んな年寄じゃ、リリスも同じじゃ、引退するまで若い喋り方してたから、所々可笑しいのも知れぬが..まぁ仕方ないのじゃ」



「そうですか...」


「あっ間違ってリリスに歳の事は言っちゃいかんぞ...ではもう会う事もないじゃろうが...頑張って君の物語を見せてくれ...儂はずうっと君を見守っているぞ..」


再び僕は暗い世界に落ちていった。



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