きのことたけのこ

芝ッフル

第1話

 きのことたけのこ、どちらが好きか、これは人類史上最大の問題だろう。


 俺は知ってる。第一次世界大戦のきっかけがたけのこ派によるきのこへの襲撃であったことを。

 俺は知っている。織田信長はきのこ派であり、たけのこ派であった明智に本能寺で討たれたことを。

 俺は知ってる。聖徳太子が無礼な手紙を送ったにもかかわらず、隋の皇帝に許されたのは、同じきのこ派の人間であったからだということを。


 そう、人類の全ての争いは、結局はこの話題から始まっているのだ。



「きのこの山かたけのこの里か」



 これは、人類にとって、永遠にわかり会えない話題なのだ。そして、これは俺、山野 茸が人類史上最大の話題へとメスを入れる物語だ。


「さて、佐藤、今日も学校にいくか」


 ストイックなきのこ派の人間として、いささか顔が青い親友、佐藤と共に学校へ歩き出す。


 さて、今日はどうやってたけのこ派の連中をいたぶろうか。そんなことを考えていると、顔が青い佐藤が頭を下げながら言ってきた。


「すまん。山野、俺、好きな子ができちゃってさ。それで、その子がたけのこ派で・・・俺も、た、たけのこ派にーーーー」


 気がつけば、俺は佐藤を殴っていた。これは俺の意思ではない。きのこの意思なのだ。


「てめえ!きのこ派を裏切ってただですむと思ってんのかああ!?」


 そう、許されることではないのだ。こいつはきのこを裏切りたけのこを選んだのだから。


 確かにたけのこの良さも分かる。だが、それを加味してもなお上回るのがきのこだ。

 きのこを裏切るなどあってはならないこと。よって佐藤、お前は死刑だ。


 俺が再び拳を振り下ろそうとしたとき、何者かによって腕が捕まれた。


「誰だ!たけのこへの制裁を下そうとした俺を止める奴は!」


 そこにいたのは、果たしてクラスメイトの里山さんだった。


「やれやれ、今時きのこかたけのこか?そんなことで争っているなんて時代遅れさ」


 ため息を吐きつつ首をふる里山さん。だが、俺にはその姿が異様に映った。


「今の時代は、これさ」


 里山さんがポケットから取り出したものは異質であるとしか言い様がなかった。


「なん・・・だと!?」


 そう、里山さんが取り出したものとは・・・たきのこの山里だった。


「くっ、何故だ!何故その様なものが!ゆ、許されることではない!そんなものあってはならない!」


必死に自身のアイデンティティーを守ろうとする俺。それに対し、不敵に笑う里山さん。


「今の時代は、男女の権利が平等に保証された時代だ。それならばきのことたけのこの平等だって、保証されたっていいじゃない?」


「ぐ、ぐはぁぁぁぁ!!!」


 俺には、それに対して返せる言葉がなかった。

 完全なる、敗北だった。





 なお、俺達は三人揃って遅刻となった。

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