第74話 王都最終決戦(中編)
空が暗くなり稲妻が光り、王都の上空に圧倒的な存在感の男が現れた。
魔王リボリボル。世界最強の魔王。真の姿、真の力を見たものは、世界中ただの1人もいないと言われている。
さらにその背後には魔王リボリボルの配下である魔物軍団が控えていた。
「情けない。お前のような者が魔王を名乗るな」
魔王リボリボルはそう言うと、撤収しようとする魔王マイマイ軍団を一瞬で殲滅した。魔王リボリボルは上空に浮かびながら、王都にいる全ての人へ話を始めた。
「俺様は今から全ての人の国、魔族の国を消滅させる。ただし俺様の臣下になるのなら生かしてやっても良い」
俺は魔王リボリボルの圧倒的な強さを間近で見てしまい、臣下になるのも仕方ないかなと考えた。
しかし、そうはいかなかった。
魔王リボリボルの脅迫めいた話を聞いた勇者ブリランテが叫ぶ。
「誰がお前ような者の臣下になどなるものか!」
勇者ブリランテの言葉を聞き、勇者軍団から鬨の声が上がる。
それを聞いたルージュちゃんがキラキラした目で、俺に話しかけてきた。
「ブリランテ様カッコいいね。ブリランテ様の言う通り、あんな魔王の臣下になんかなるわけないよね。ね、シンヤ君!」
「そ、そうだよね。なるわけないよね」
続いてパパレのお父さんが叫ぶ。
「お前が何者か知らんが、返り討ちにしてくれる。ガハハハハ」
冒険者軍団からも鬨の声が上がる。
それを聞いたパパレが話しかけてきた。
「お父さん、カッコいい。臣下ってよく分からないけど、パパレも返り討ちにしよーっと。ね、お兄ちゃん」
「そ、そうだね。返り討ちにしよう」
最後に国王が宣言する。
「お前がどれだけ強かろうと、人はお前のような魔物には靡かない」
騎士団からも鬨の声が上がる。
これは今すぐ戦うことになりそうだ。俺は『みんな頑張って』と心から応援した。
結局は俺も周りの雰囲気に流されて、魔王リボリボル軍団と戦った。
激しい攻防の末、魔物軍団は壊滅し、残るは魔王リボリボルただ一人となった。
「お前の負けだ!」
勇者ブリランテは叫びながら、剣先を魔王リボリボルへ向けてカッコよくポーズを決める。勇者ブリランテは、とにかくカッコいい。俺も同じ勇者なのに何かが違う。
ルージュちゃんは勇者ブリランテを見てうっとりしている。
魔物軍団がいくら倒されようとも静観を続けていた魔王リボリボルだったが、ついに動いた。
直後、勇者ブリランテは倒れてピクリとも動かなくなる。魔王リボリボルが勇者ブリランテに何をしたのか分かる者は誰一人としていなかった。ただ結果として勇者ブリランテは倒された。
続いて魔王リボリボルは範囲魔法を放ち、勇者軍団を一撃で殲滅した。
魔王リボリボルは、パパレのご両親率いる冒険者軍団と王都騎士団をも範囲魔法を壊滅させた。
そうして、一瞬のうちに王都で戦える人間が俺とルージュちゃんとパパレの3人だけとなった。
女神クレアは知らない間に倒れている。しかし死んでいるようには見えない。あれは死んだフリだ。俺も隙があればルージュちゃんとパパレも誘ってやろうと思っていたことなので、間違いない。
死んだフリをしている女神クレアを尻目に憧れの勇者ブリランテ様を倒されたルージュちゃんが怒りに震えている。
大好きな両親を倒されたパパレは怒りのあまり竜の形をしたオーラを発している。
真の竜騎士として覚醒し羽の生えたパパレが魔王リボリボルへ襲いかかった。今まで誰一人として攻撃を当てることすら出来なかった魔王リボリボルに対してパパレの攻撃が効いている。羽パパレ凄い。
羽の生えたパパレと魔王リボリボルが戦っている間に、ルージュちゃんが猛烈にキラキラしながら何か凄い神聖魔法を唱え始めた。隣りにいる俺が倒れそうな程のキラキラっぷりだ。
ルージュちゃんが叫ぶ。
レアスキル「ホーリー・クロス!!!」
『世界がピンチになった時』という面倒な条件があったため、今まで発動出来なかった神聖魔法。白く輝く十字架が魔王リボリボルを襲う。
竜騎士パパレと聖女ルージュちゃんの攻撃により、魔王リボリボルが消滅した。
「ルージュちゃんとパパレ、凄い。カッコイイ!」
俺の出番もなく勝っちゃったよと思ったのだが、それほど最強魔王は甘くはなかった。
消滅したかに思われた魔王リボリボルが、第2形態になって復活した。
魔王リボリボル第2形態がパパレを弾き飛ばした。
「グッヘェェェェ!!!!」
続いてルージュちゃんも弾き飛ばされた。
「キャアアアアアアア!!!」
一瞬のうちにパパレとルージュちゃんが倒され、動かなくなった。
2人は女神クレアと違って死んだフリではないだろう。
2人を倒した魔王リボリボル第2形態が俺に向かって尋ねてくる。
「貴様は歯向かってこないな。なんだ、もしかしてお前は俺様の臣下になりたいのか」
俺が臣下になりたいのかだと。こいつは何を寝ぼけた事を言っているんだ。俺のルージュちゃんに、俺のパパレに何してくれてんだ。
臣下になるのも仕方ないなと思っていた俺はもういない。
死んだフリをしようと思っていた俺はもういない。
「魔王リボリボル! お前だけは絶対に許さない!!! 勇者の俺がお前を倒す!!!」
俺は異世界に来て初めてブチ切れた。
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