第60話 お得にスライム狩り

「青色と赤色が現れたよ。またルージュちゃんとパパレに攻撃魔法をお願いしようかな」


 などと言っていたら、スライムも本能的に危険を感じたのか、青色と赤色のスライムが合体し始めた。

 しばらく眺めていると、完全に合体して1匹の紫色のスライムになった。


「スライムが合体した! 紫色になったよっ、カッコいい! あっははー」


 スライムの合体を見てパパレが喜んでいる。


「おお、なんかスゴイ。魔物だけど生命の神秘。でもパパレ、攻撃魔法で倒しちゃって」


 合体したスライムでも攻撃魔法一発で倒せるのだろうか。


 ノーマルスキル「火球!」


 パパレの放った〈火球〉は、またしても一発でスライムを倒した。


「おお、合体しても一発で倒した。これはたくさん合体させたらお得なんじゃない?」


「そうだね、シンヤ君。お得な気がするね」


「お兄ちゃん、それは絶対にお得だよっ」


 俺たちはお得にスライムを狩るべくガサガサとスライムを一箇所へ追いやる。オレンジ色2匹と赤色2匹の合計4匹のスライムが集まった。一箇所に集まり合体を始めた4匹のスライムたちを見守る。


「おお、俺たちにお得に狩られるために合体しているよ。可愛いヤツらだ」


「ちょっと可哀想な気もするけど、街で悪さしてるんだよね。倒さないとダメだよね」


「合体が終わったら、またパパレが倒して良い?」


「どうぞ、どうぞ。パパレが倒しちゃっていいよ」


 スライムの合体が終わり、今度は紅葉のような綺麗な色のスライムが誕生した。


「綺麗なスライムだね。でもパパレ、倒しちゃっていいよ」


 ノーマルスキル「火球!」


 パパレの放った〈火球〉は4匹が合体したスライムでも一発で仕留めた。


「おお、これはお得だ。お得度がグッとアップしたよ。もっと大量に合体させよう」


 今度は十数匹のスライムを一箇所に集めてみた。

 スライムたちが合体するのに時間がかかりそうなので、それを待つ間にお弁当を食べる事にした。


「モゴモゴ。スライムが合体したらまたパパレが倒してもいい? 一発で倒せるかなっ? ゴクン」


「モゴモゴ。どうだろうね。さすがに一発では無理かもね。一発でダメだったらルージュちゃんも魔法で攻撃してね。ゴクン」


「了解だよ、シンヤ君。えっと、それより2人ともモゴモゴしながら喋るのはお行儀が悪いよ」


「え、ルージュちゃんはお母さんなのかな。ルージュママだね。バブー」


「お姉ちゃんじゃなくて今日からお母さん。ルージュママ、バブー」


「えっえっえっ、私はお母さんじゃないよ。2人とも何を言ってるのかな」


「ルージュちゃんの作ってくれたお弁当は美味しいし、良いお母さんになるよ」


 実際、ルージュちゃんの作ってくれたお弁当は彩りも良くとても美味しかった。

 俺は1番最初、手作りサンドイッチを作ってくれたルージュちゃんのキラキラにより死にそうになったが、今は少しドキドキするだけで美味しくお弁当をいただく事が出来ている。俺も成長したものだ。


「ふぅ、お腹いっぱいだね。しっかり休憩も取ったし、午後もお得にスライムを倒そうか」


「そうだね。午後も頑張ろうね」


「パパレ、ちょっとスライム見てくるっ」


 俺たちは昼食をするために、スライムを集めた雑木林から出て、風の通りが良い涼しい原っぱに移動していた。

 スライムを集めた場所とは少し距離がある。パパレは合体したスライムを確認しに雑木林の中へ走っていった。

 遠くからパパレの声が聞こえてくる。


「お兄ちゃーん、スライムがいないよー」


 パパレの報告を聞き、俺とルージュちゃんも慌てて雑木林へ向かう。

 スライムを集めた場所へ到着するが、そこにスライムの姿はなかった。代わりに合体したスライムが草木を溶かしながら這いずって移動したと思われる跡だけが残っていた。


「ど、どこに行ったんだ。跡を追ってみよう」


 スライムが這いずって出来たと思われる跡を追って行くと、すぐにスライムは見つかった。合体したスライムは這いずりながら次々と周辺のスライムを吸収している。色々な色のスライムを吸収したようで、色が混ざり合い真っ黒で巨大なスライムが誕生していた。


「あわわわわわわ、デッカい真っ黒スライムになっているよ。た、倒せるのかな」


「えっえっえっ、す、凄く大きいよ。えっ、あれがスライムなの‥‥‥」


 ルージュちゃんもあまりの大きさに絶句している。


「凄い! こんなおっきいスライム初めて見たよっ、あっははー」


 パパレはあまりの大きさに興奮気味だ。


「あっ! このおっきいスライム、パパレの家の方に向かってるよっ」


「な、なんだって!?」


 本当だ。確かにこのまま真っ直ぐ進んで行くと、その線上には『ポメポメ』がある。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る