第61話 悟り! vs巨大スライム
「ダメだ、こいつ、早く何とかしないと! ルージュちゃん、パパレ。魔法で攻撃してみて」
見た目は超級の魔物だが所詮はスライム。意外に攻撃魔法一発で倒せるかもしれない。
ノーマルスキル「氷弾!」
ノーマルスキル「火球!」
しかし、ダメだった。世の中、そんなに甘くはなかった。ルージュちゃんとパパレの攻撃魔法はスライムに命中したのだが、ドロっとスライムの一部を削っただけだ。
巨大な真っ黒スライムの進撃は止まらない。一直線に『ポメポメ』を目指している。
「あわわわわわ、このままだと俺たちのせいで『ポメポメ』が大惨事に。パパレの故郷が溶けてしまう」
早く何とかして巨大な真っ黒スライムを止めなくては。
ノーマルスキル「烈風斬!」
俺は苦し紛れに物理攻撃スキルを発動したが、スライムの表面がビチャっと少し削れただけだ。
この程度のダメージでは〈烈風斬〉を連射したところで巨大な真っ黒スライムを倒す前にスキルポイントが尽きる。これは確定的に明らかだ。
俺は今までスライムが気持ち悪くて直接攻撃をした事がなかったが、背に腹はかえられない。思い切って直接、剣で攻撃してみた。ビチャっとスライムが削れる。
「キモッ」
ヌチャっとした感触がとても気持ち悪かった。
しかし、巨大な真っ黒スライムは俺の攻撃に対して反撃してくる様子はない。ひたすら『ポメポメ』を目指して進んでいる。
とにかく巨大な真っ黒スライムの目的が『ポメポメ』のみで、反撃してこないのであればコツコツと削って倒せるのではないだろうか。
「ルージュちゃん、パパレ。気持ち悪いとは思うけど、一緒に削ってくれるかな。もちろんスキルポイントがあるうちは魔法を使ってくれていいから」
「う、うん。ピクニック気分でのんびりお昼を食べてたせいだよね。ごめんね」
「はーい、お兄ちゃん。パパレも合体が楽しみでスライムたくさん集め過ぎちゃったよ。ごめんなさい」
「いやいや、どう考えてもリーダーの俺の責任だよ。お得に気を取られ過ぎていたよ。ごめんなさい」
俺たちは自己責任という事で気持ち悪いのを我慢して巨大な真っ黒スライムを削り始めた。
◇
「ゼェ、ゼェ。半分くらいにはなったかな。この調子なら『ポメポメ』までに間に合いそうだね。俺たち頑張ってるよ」
疲労の色が見えてきたルージュちゃんとパパレへ声をかける。
するとルージュちゃんが肩で大きく息をしながら返事をする。
「ハァ、ハァ。そうだね。私たち、頑張ってるよね。あ、シンヤ君。今、またそこにいたスライムを吸収してちょっと大きくなっちゃったよ」
「またか、通り道にいるスライムを吸収するからキリがないね」
せっかくコツコツと小さくしても、新たなスライムを吸収すると大きくなってしまう。その度に心が折れそうになる。
「フゥ、フゥ。パパレは今が人生で一番辛いよ‥‥‥」
「おおぅ、パパレも人生を悟ってしまったか。人生は時に辛い事もある。でも楽しい事もあるから頑張るんだよ」
俺たちは互いに励まし合いながら、巨大な真っ黒スライムを削り続けた。日が傾き、『ポメポメ』が目前まで近づいてきた頃。
「ゼェ、ゼェ。やっと普通サイズになったね。あと一息だ。パパレ、攻撃魔法いける?」
「フゥ、フゥ。いけるよ、お兄ちゃん。パパレは早く辛い人生を終わらせたいよ‥‥‥」
「ヨシ、トドメはパパレにお願いするよ」
俺たちは普通サイズになったスライムから少し距離をとる。
パパレが最後の力を振り絞りスキルを発動する。
ノーマルスキル「火球!」
パパレから放たれた炎の塊が普通サイズになったスライムを消滅させた。パパレが人生を語る程の難敵、巨大な真っ黒スライムをついに倒した。
「もうスライムは見たくないね‥‥‥」
「「うん」」
◇
スライムは見たくないと言ったものの、俺たちはしばらくの間、雑木林でスライムを倒し続けた。
パパレの住む『ポメポメ』にスライムが出没しなくなるまで奮闘した。
最初は大量に発生したスライムがそこら中にいて気持ち悪い雑木林だったが、今はスライムはどこにも見当たらずスッキリ爽やかな雑木林に生まれ変わった。
「ふぅ、雑木林のスライムは粗方、倒したかな。これなら『ポメポメ』も安心安全かな」
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、『ポメポメ』のためにありがとう。真っ黒スライム、もう誕生しないよね? パパレはもう真っ黒スライムを見たくないよ」
「パパレちゃん、大丈夫だよ。この辺にいるスライムを全部集めても、あんな大きなスライムにはならないよ」
「そうそう、最初はあんなにいたスライムが全然、見当たらなくなったし。ここは終わりにして明日からは違う場所に行こう」
スライムを片付けた俺たちは、クエストの有効期限が切れる前に一番冒険者ギルドへ顔を出して、最新の『ポメポメ山』情報を取集する事にした。
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