第56話 港町を散策していると
翌日。朝早くから3人集まって王都へ転移。王都から馬車で『コベコベ』を経由しつつ、綺麗なビーチのある街『リバリバ』へと向かう。『リバリバ』へは昼頃に到着した。
軽くランチ済ませて目的のビーチへ足を運ぶ。
「海きれーっ」
パパレは山育ちなので海が珍しいらしく大興奮だ。
馬車から窓越しに海は見えていたが、ビーチから間近で見る海はとても綺麗だ。
エメラルドグリーンの海がどこまでも広がり、初夏の日差しを浴びてキラキラと輝いている。
そして、隣にいる水着のルージュちゃんもキラキラと輝いている。
「ルージュちゃん、それ水着なの?」
「そうだよ。今年の流行りだよ」
「へぇ、洋服みたいだね」
ワンピースの水着らしいのだが、水着なのか洋服なのかよく分からないお召し物だ。
俺は前もって動悸や息切れに効く薬草を服用し、濃い目のサングラスをかけてルージュちゃんの魅了対策を万全にしている。そうなければ水着のルージュちゃんとこんなに余裕を持って喋るなどできるわけがない。
パパレは海へ入ってはしゃいでいる。楽しそうで良いのだが、何故か腰に棍棒をぶら下げている。何をする気なのだろうか。
「パパレ、もし魔物が出ても〈雷鳴の乱撃〉は使っちゃダメだよ。感電するかもよ」
「そのぐらい分かっているよ! お兄ちゃん」
周りの海水浴客に被害を出しては大変だ。念のため釘を刺しておく。
パパレは一度、焼きそばを食べに上がってきたきり、ずっと海に入っている。元気いっぱいだ。
俺とルージュちゃんは海を眺めながら砂浜で寛ぐ。
「ルージュちゃんが教えてくれたこのビーチ、良いところだね」
「うん。たくさん人がいるけど、凄く広いからのんびり出来るよね」
俺、ルージュちゃん、パパレ。海に入り水浴びをしたり、海の家でラムネ飲んだりカキ氷を食べたり、ビーチにいるセクシーなお姉さんを眺めたりと初夏の海をそれぞれ楽しんだ。
◇
その日の夜。
俺たちは『リバリバ』の高級リゾートホテルに泊まっていた。ゴブリン討伐で荒稼ぎしたので懐には余裕がある。
俺は部屋にあるテラスで夜の海を眺めながらカクテルを飲んでいた。
「ふぅ、俺は石油王なのかな」
庶民の俺はこの程度で大富豪の気分になれる。安いものだ。
俺が眺めている真っ暗い海、沖の方にぽつんと佇む小島に巨大な灯台が立っていた。その灯台が真っ暗闇の海上に強い光を放っている。この海の象徴の1つだ。
巨大な灯台は『コベコベ』に向かう客船や貿易船の目印となる役割を果たし、さらには魔王軍や魔物を警戒したりと『コベコベ』『リバリバ』2つの街の安全を守っている。
「ルージュちゃーん、パパレー。デッカい灯台があるよー。綺麗だよー」
全く返事がない。
「ルージュちゃーん、パパレー」
全く返事がないのでルージュちゃんとパパレの寝室をチラッと覗いて見ると明かりをつけたまま眠っていた。
「海ではしゃぎ過ぎて疲れちゃったのかな。2人とも何て無防備な格好で寝ているんだ」
舐め回すようにガン見したり、匂いを嗅いだり、一緒に布団に入ったりという事は妄想だけにして、俺は寝室の明かりを消してスッと扉を閉めてその場を去った。なんという紳士だ。
◇
翌日は『コベコベ』だ。
『コベコベ』は大きな港町だった。
巨大な港があり客船や貿易船が何隻も停泊している。
外国人も多いようだ。転生してきた俺から見たら全て異世界人でしかないのだが、それでも外国人だなという気がしてくる。不思議なものだ。
俺たちは昼食に新鮮な海鮮丼を食べたあと巨大な港を散策していた。
「デッカい船が泊まっているね。ルージュちゃんとパパレは船に乗って海外に行ったことある?」
「私はないよ。なかなか海外へは行けないよ」
「パパレもないなー。でもお父さんとお母さんは時々、船に乗って魔物を倒しに行くみたいだよっ」
「へぇ、パパレの両親は凄いな。まあ普通の人は海外へはあまり行かないんだね」
そんな話をしながら港を歩いていると俺たちの目の前に停泊していた大きな客船からゾロゾロとたくさんの人が降りてきた。
「観光客や帰国してきた人かな。みんな大きな荷物持っているね」
「本当だね。たくさん人が降りてきたね」
その中に一際大きな荷物を持っている大男がいる。その周囲の人々が少し騒ついていた。
それもそのはず、その大男は大きく鋭い牙がはみ出た巨大な袋を肩に担いでいた。
「牙、デカッ。え、何メートルあるの? ルージュちゃんとパパレも見える?」
「本当だ。大きい牙だね、倒した魔物から取ったのかな。凄い人だね」
「あーーー! パパレのお父さんだ!! 隣にお母さんもいるっ!! あっははー、やっと帰ってきたーー!!」
「え、あのデッカい牙を担いだ人がパパレのお父さんなの?!」
「えっえっえっ、牙を担いだ大きな人がパパレちゃんのお父さん?」
「そうだよー、あれがお父さん! カッコいい牙を担いでる! あっははー」
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