第37話 リセマラ勇者

「えーっと、他に条件は‥‥‥【魅力】400以上必要だって。また【魅力】か。よく出てくるな。勇者ならカリスマ性ぐらい必要という感じかな?」


「そうかもしれないね」


 ルージュちゃんが相づちをうつ。


「というか、そんなに【魅力】が重要なら、ルージュちゃんが勇者になれば良い気がしてきたよ。勇者ルージュもカッコいいと思うけど、どう?」


「えっえっえっ、私が勇者?! えっえっえっ、シンヤ君が勇者にならないとレイナス様はパーティーメンバーになってくれないんじゃないのかな?」


「やっぱりそう思うよね。俺が勇者にならないとダメか」


「そ、そうだよ。変なこと言うから驚いちゃったよ」


「パパレは勇者になりたいけどなーっ」


「おっ、勇者パパレか、それもいいね。一緒に勇者になろうか。で、まだ条件がある。年齢26歳以下。なるほど、確かにこの条件がないと長く冒険者をやっていれば、誰でも勇者になれそうだしね」


 俺はまだ若いのでセーフだが、もし高齢になってから転生していたら、この条件でアウトという事になるのか。中高年の転生者には厳しい世の中だなと思った。


「それから、勇者になると【物理攻撃力】【物理防御力】【魔法攻撃力】【魔法防御力】が+20%アップ、【魅力】【幸運】が+100%アップ。おおっ、かなりステータスが上がるな。いいね」


「シンヤ君、【魅力】+100%アップって凄いよね。勇者になったブリランテ様も素敵になっていたし」


「へぇ、そうなんだ。じゃあ俺が勇者になったら3人でライブでもする? 俺、チヤホヤされたいし」


「えっえっえっ、私たちがライブ?! き、気が早いよ。それに私はそういうの苦手だよ」


「パパレはライブやりたいなーっ! パパレもチヤホヤされたいっ」


「そうか、パパレとは気が合うな」


「お兄ちゃんとパパレのコンビでデビューだね。あっははー」


「えっえっえっ、私も反対しているわけではないけど‥‥」


「そっか。じゃあ俺がプロデューサーでルージュちゃんとパパレにアイドルになってもらおうかな」


「えっえっえっ、それだとシンヤ君が勇者になった意味が全然ないんじゃ‥‥」


「まあ、そんな有り得ない話はおいといて‥‥‥」


「えっえっえっ、有り得ない話って。じょ、冗談だったのかな」


「パパレは有り得る話だと思うけどなーっ」


「それで、何の話をしていたんだっけ?」


「シンヤ君が勇者になると【魅力】が上がるねって話だよ」


「そうだったね、ルージュちゃん。そうだ、勇者以外にもステータスが大幅にアップする上級クラスとかないのかな?」


 そう思って、探してみたところ。


「あった! 【魅力】+150%アップだって、凄い。‥‥‥聖女か。条件はまず、女性と‥‥‥」


 聖女にはどう頑張ってもなる事はできない。むしろルージュちゃんが目指すべきではないだろうか。


「ルージュちゃんは聖女を目指してみたらどうかな?」


「えっ、聖女?! 私も何か上級クラス目指した方がいいのかな? そ、そうだね。聖女なら勇者よりはいいかな」


「聖女でもアイドルになれそうだね。ルージュちゃんなら人気でるよ」


「シンヤ君、私、アイドルを目指していないよ‥‥‥」


「お兄ちゃん、パパレには何かないのかなーっ?」


「パパレはどんなのがいいの?」


「うーん、強そうなのがいいかなーっ」


「色々あるけど、狂戦士は? パパレっぽい気がするけど」


「えええっ! それは違うと思いますよーっ、パパレはちゃんとしてるしっ」


「そう? じゃあ竜騎士は?」


「竜騎士! そっちの方がいいねっ! パパレは竜騎士になろうかなーっ、でもお兄ちゃんと一緒に勇者もいいなーっ」


「パパレはパパレの好きな上級クラスを目指すとして、俺は頑張って勇者になるよ」


「うん、シンヤ君、みんなで頑張ろうね」


「パパレも頑張るよっ!」


「よし、これからの目標も見えてきたし、そろそろ戻ろうか」



 ◇



 その後、まだ時間があったので俺たちは王都見物をした。3人で巡った王都見物はとても楽しかった。

 王都見物を堪能した後、ドタバタとしつつも楽しく宿屋『踊るトカゲ亭 王都店』で一晩を過ごした。


 そして翌朝。


「2人ともおはよう。今日が最終日。馬車で『ヨイヨイ』に戻るよ。時間がかかるから、早めに行こうか」


「うん、すぐに準備するね。シンヤ君、ちょっとだけ待ってね」


「パパレも急いで準備しまーっす」


 俺たちは宿屋『踊るトカゲ亭 王都店』を後にし、馬車へ乗り込んだ。『ヨイヨイ』まで10時間の馬車の旅となる。

 出発の時間になり俺たちを乗せた馬車は、始まりの街『ヨイヨイ』へ向けて走り出した。


 帰りは途中の街『メイメイ』でも長居はせず、俺たちは何事も無く『ヨイヨイ』へと進む。馬車の中ではおしゃべりをしたり、昼寝をしたり、好き好きに過ごした。

 10時間の長い馬車の旅も終わりに近づき、俺たちを乗せた馬車は『ヨイヨイ』まであと少しの所まで近づいていた。


「あと少しで『ヨイヨイ』に到着か‥‥‥」


 俺はこの馬車の旅が終わって欲しくないなと思っていた。

 なぜなら俺は『ヨイヨイ』へ戻り、2人と別れた所で〈存在削除リセット〉すると決めているからだ。

 すっかり忘れそうになっていたが、俺はいま、リセマラ中だ。


 ルージュちゃんとパパレに応援されて〈存在削除リセット〉を止めてこのまま冒険を続けようかと迷ったが、上級クラスになるためのガイド本を3人で見ている時に、俺は当初の考え通り〈存在削除リセット〉すると決断した。しんみりして2人を心配させてしまったら決断が鈍ってしまいそうだったので、しょうもない話をして気を紛らわせていた。


 色々あった王都への旅。2人と一緒で楽しかったなと俺は振り返っていた。様々な思いが頭を巡っているうちに、馬車が『ヨイヨイ』へと到着する。

 いよいよお別れの時だ。


「シンヤ君、やっと着いたね。やっぱり王都は遠かったね」


「ホント遠いよね、ルージュちゃん。今日は家に帰ってゆっくり休んでね」


「ありがとう、シンヤ君。早く勇者になれるように、またみんなで頑張ろうね! 私も頑張るよ!」


「お兄ちゃん、パパレ、疲れちゃったよー」


「パパレは宿屋『踊るトカゲ亭』に泊まって、明日はちゃんと自分の家に帰るんだよ」


「わかりましたーっ! パパレもお兄ちゃんが勇者になれるように頑張るよっ! パパレもお兄ちゃんと一緒に勇者になろうかなーっ、それとも竜騎士の方がいいかなーっ」


「パパレは宿屋『踊るトカゲ亭』へ先に行っていて。俺はがあるから、ここで一旦解散にしよう」


 俺は今の俺をこんなに応援してくれているルージュちゃんとパパレと別れたくはない。今いる俺として、この2人の期待に応えたいと思う。

 それに再び、この世界に戻ってきて一緒にパーティーを組めるとはいえ、今ある共通の思い出は無くなってしまう。それは、とても淋しい事だ。


 しかし、俺はリセマラをする。最適なスキルを取得して勇者になり、レイナス様をパーティーに加える。ルージュちゃんもパパレも、きっとその判断を応援してくれるに違いない。俺はそう思っている。


 俺はリセマラをする事が、ルージュちゃんとパパレの期待に応え、魔王を倒し称号を得て世界を救う近道だと信じている。




 そう、俺はリセマラをして勇者になる! リセマラ勇者だ!!




「ルージュちゃん、パパレ。ごめん。戻って来たら、また仲良くしてね」


 そう言って、俺は〈存在削除リセット〉をした。





 第1部完






〜あとがき〜

 これで第1部が完結になります。続く第2部も宜しくお願いします!

 ここまでお読みいただきありがとうございました。続きを読んでもいいかなと思いましたらフォローを貰えると嬉しいです。またハートやお星様を貰えると執筆の励みになりますので、どうぞ宜しくお願い致します。


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