第3章
第26話 王都へ向け出発
「ルージュちゃん、南門はあっちになるのかな?」
「そうだね。ウチから南門はちょっと遠いんだよ」
俺たちは少し早歩きで南門へ向かう。
俺は昨日、宿屋『踊るトカゲ亭』の看板娘タクトさんに王都『ライナライナ』への行き方を聞いていた。
タクトさんの話よると、この街の南門から定期的に馬車が出ているので、まずはそれに乗り、中間の街『メイメイ』へ行く。その『メイメイ』からも定期的に『ライナライナ』へ向かう馬車が出ているので、後はそれに乗るだけ良いとの事だった。
中間の街『メイメイ』で1度、乗り換えがあるだけなので間違う事はないだろうと思っている。
街を南北に縦断する広い道を進むと、この街で最も大きな門である南門が見えてくる。
南門の前は大きな広場になっていて、いくつもの馬車が待機していた。
「あっははー。馬車がたくさんあるよっ。どれに乗るのかなっ?」
たくさんの馬車を見てパパレのテンションが上がっている。
パパレだけではなく、俺もワクワクしてきている。
広場を見渡すと。
『中間の街『メイメイ』行き。王都『ライナライナ』へ行く方はこちらから』
そう書かれた案内版が掲げられている馬車がある。
「ルージュちゃん、あの馬車かな?」
「そうだね、きっと。ちょうど出発しそうだよ」
「パパレ、あれに乗るぞ。馬車の中では大人しくな」
「お兄ちゃん、わっかりましたっ」
浮かれたパパレが少し離れたところから、駆け寄ってくる。
俺たちは料金を支払い、4頭立ての大型の馬車に乗り込んだ。馬車の中にはすでに10人以上が乗っていて、俺たちが乗るとちょうど満員だ。
王都『ライナライナ』から、その先にある要塞都市『ルコルルコル』や港町『コベコベ』に向かう人たちも、この馬車を利用するようだ。
俺たちの乗った馬車が動き出す。いよいよ王都『ライナライナ』へ向けて出発だ。
この国の首都なのだから、とても大きな都市だろう。その都市にいる新たなパーティーメンバーになる人とはどんな人なんだろう。俺は胸が高鳴った。
◇
今回の王都『ライナライナ』への旅は2泊3日の予定だ。しかし、初日と最終日は馬車で移動するだけで終わってしまう。
実質、
まずは王都『ライナライナ』まで約10時間の長い馬車の旅だ。
西の街『ポメポメ』への街道と違い、馬車が余裕で通れる道幅で整備も行き届いている。
そのため馬車もかなりのスピードを出している。いや、出過ぎではないだろうか。怖い。しかし、周りを見ると他の乗り慣れていそうな人たちは、うとうと眠たそうにしている。このスピードが普通なのか。
「馬車って初めて乗ったんだけど、こんなに早いの?!」
「この馬車、早いね。王都行きは高速馬車だからかな。ちょ、ちょっと怖いよね」
馬車から外を見ると、すごい勢いで景色が流れていく。そんな中、パパレは馬車の外に顔を出して楽しそうだ。
「あっははー、この馬車、早いねっ」
「パパレ、危ないぞ。顔を引っ込めなさい」
「はーい」
パパレの世話を焼いていると、ルージュちゃんは怖いからなのか、馬車の揺れのせいなのか、俺に身体を寄せてきた。これはマズイ。
俺はまた魅了されて動悸や息切れが激しくなる前に、買っておいた薬草を使って心を落ち着けた。この時のための薬草だ。効果バツグンで助かった。
薬草のおかげもあり俺は中間の街『メイメイ』までの道中を、ルージュちゃんとパパレとおしゃべりをしながら楽しんだ。
◇
俺たちを乗せた馬車は、中間の街『メイメイ』へ到着した。
『メイメイ』は大きな森の端にある街だ。それほど大きな街ではないが、いくつかの街道が重なる場所にあるため、たくさんの馬車が行き交い活気がある。
馬車から降りたパパレが開口一番。
「お兄ちゃん、お腹が空きましたー」
パパレもルージュちゃんもぐったりしている。俺もずっと座りっぱなしでかなり疲れた。
「そうだね、何か食べよう」
この街には飲食店がたくさんあるようだ。パパレが「肉が食べたい」と言うので、肉料理屋に入りランチにした。
いつものオオトカゲではなく、何の肉だかは分からなかったが美味かった。
『メイメイ』から王都『ライナライナ』へも定期的に多くの馬車が出ているようだ。
しかし、すぐに馬車に乗る気もしないので、ゴブリン討伐クエストをこなそうと思う。食事を終えた俺は2人へ提案してみる。
「あまり時間はかけられないけど、ゴブリン討伐してみない? 1、2匹でも倒せるといいんだけど」
「うん、いいよ。私もちょっと体を動かしたいな」
「パパレも大賛成だよっ! ゴブリン倒すぞー」
3人とも旅行気分で浮かれて街の周囲にゴブリンが増えているという情報を忘れていた。
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